『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part2
(『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part1)
◇
◇
◇
<第1試合:4ウェイマッチ 20分一本勝負>
〈アポロン高崎〉(?)
VS
〈高橋 加奈子〉(東京女子プロレス)
VS
〈上原 凪〉(WARS)
VS
〈ブレイヴ・レイ〉(激闘龍)
四者四様、睨み合う。
(っ、思った以上に、やり辛い……っ)
われらがアポロン高崎、マスクの下で顔をしかめる。
視界は広めのマスクであるが、それでも違和感はぬぐえない。
そのうえ、不慣れな4WAY戦、それも馴染みのない連中との対戦ときている。
高橋や凪とはTCGやEXTASで顔は合わせたが、手合わせはしていない。
ブレイヴ・レイにいたっては初見である。
もとより、日向にとってこの大会への参戦は、
――今日子さんに、自分のファイトを見せたい。
と、いう思いのみであり、勝ち負けは問題ではない。
最近になってようやく意識を取り戻したブレード上原だが、いまだ復帰は遠いという。
だからといって、ふがいない闘いをする気はさらさらなかった。
いちおう、正体不明のマスクウーマンとなっているとはいえ。
「――正々堂々とやりましょう」
「……っ?」
レイが、覆面のよしみで(?)日向に握手を求めてくる。
これに応じた日向だったが、
「……っ!?」
不意打ちのエルボースマッシュを食らう。
たまらず倒れた日向に、レイと高橋がストンピング。
この小ずるいテクに怒った凪が日向を救出。
おのずと、日向・凪がリンピオ(善玉)、レイ・高橋がルード(悪役)的なポジションにおさまる。
かくして高橋と「新旧激闘龍同盟」を組んだレイ、派手な空中殺法で観客から歓声を引き出す。
日向も負けじと食い下がるが、マスクの違和感はぬぐえず、4WAY戦への不慣れさから決定打に欠いた。
つまるところ……
最後は同盟決裂からのウラカン・ラナでレイが高橋を沈め、勝利をもぎ取ったのである。
×高橋 VS レイ○
(11分9秒:ウラカン・ラナ)
「……っ、ハァ、ハァ……ッ」
不完全燃焼に終わった日向であったが、これも経験のうち、といえようか。
もっとも。
この試合は、文字通りの「前座」の一つでしかなかったのだ……
◇
興行はつつがなく進み、メインイベント――
J1K軍12人に対し、太平洋勢わずか6人。
数の上では絶対的に不利な状況。
だが、彼女たちは――孤独ではなかった。
◇
「っ、これは……」
バックステージのモニターでこの様子を見ていた日向は、思わぬ成り行きに困惑していた。
こんな展開が待っているとは予想だにしていなかったのだが、それも当然であろう。
堀とは旧知だし、イレス神威とも手を合わせたことはある。
上原の興した太平洋女子の存亡の危機、日向とて微力ながらに一肌脱ぎたいところであったが、
(……っ、でも……)
いくらマスクを被っているとはいえ、新女の一員である自分が、こういった闘いにかかわるのは、問題ではあるまいか?
(…………っ)
◇
人数の上で劣勢に立たされていた太平洋女子軍であったが、次々と助っ人が名乗りを上げた。
「……上原さんは私の目標。微々たる力でも、ないよりは!」
太平洋女子から分裂した激闘龍所属のマスクウーマン、〈ブレイヴ・レイ〉。
「今日子ねぇねぇの団体を、潰させるもんかっ!」
上原の従妹、WARSの〈上原 凪〉。
「――ウエハラと再び闘う舞台は、太平洋女子のリングをおいて他にはない」
AACの《ジョーカー・レディ》。
「友がすべてを懸けて闘うのなら、四の五の言わずに手を貸すのみ!」
同じくAAC、《ミレーヌ・シウパ》。
「――今日子に、いいところを見せておかないとね」
上原の無二の盟友にして、“リングの女王”《パンサー理沙子》――
……そして。
「今日子さ…ブレード上原とは昔馴染み。及ばずながら助太刀します!」
謎の覆面ファイター、〈アポロン高崎〉。
かくして、団体の垣根を越えた“鳥人血盟軍”とでも称すべきチームが結成されたのである。
「意外だったわ。いいのかしら? 会社に迷惑がかかっても」
「っ、な、何のことでしょう……っ」
理沙子にささやかれても、知らぬ存ぜぬのテイ。
◇
<太平洋女子プロレス・負けたら即消滅マッチ>
【ジャッジメント・サウザンド】
《寿 千歌》
《ライラ神威》
《氷室 紫月》
《マスクド・ミステリィ》
《ジャイアント・カムイ》
《ナイトメア神威》
《サタン神威》
《スパイダー神威》
〈アトラス・カムイ〉
《栗浜 亜魅》
《ダークフレイム真田》
《ブラックペガサス》
VS
【鳥人血盟軍】
《パンサー理沙子》
〈アポロン高崎〉
〈上原 凪〉
〈ブレイヴ・レイ〉
《ジョーカー・レディ》
《ミレーヌ・シウパ》
《大高 はるみ》
《テディキャット堀》
《アルコ・イリス》
《優香》
《橘 みずき》
〈イレス神威〉
協議の末、試合形式はイリミネーション式4人タッグ戦と決まった。
すなわち、フォールかタップで敗れた選手が脱落し、残りのメンバーと交代していく。
最後の一人が敗れた時点で、決着というわけである。
「――お膳立てはしたけれど」
パンサー理沙子は、太平洋女子残党たちに告げる。
「この後のことは、すべて、リングの上で決まるわ」
「……心得ています」
うなずくイレス神威。
舞台は整った。
後は、白黒つけるのみだ。
彼女が踏み出そうとするや、
「おっと、イレスちゃんの出番はまだまだ」
「……っ?」
橘や優香たちに止められた。
「あっちの大将と闘いたいんでしょう? だったら……」
今はまだ、動くときではない。
「任せて。私たちが、あの覆面、引きずり出してあげる!」
「ううっ……な、何だか、悪寒が止まらないけど……やるっきゃないね!」
「……っ、皆さん……」
かくして、太平洋女子の命運を懸けた一戦の火蓋が切って落とされたのである――
<1>
《ブラックペガサス》
&
《ダークフレイム真田》
VS
《橘 みずき》
&
《優香》
「藤原さんっ……闇に飲まれた貴方の正義、私の正義で浄化してみせる!」
「黙れ――力なき正義こそが悪! 正義とは、力そのものに他ならない――」
橘と、藤原和美こと暗黒天馬聖戦士が火花を散らし、
「うおおおーーっ!! 闇の炎ですべてを焼き尽くしてやるッス!! バーニング・ラブッ!!」
「な、なんか悪いアレが憑いてるよこの人~~っ」
優香は、闇炎使いと対峙する。
初戦は優香が上原直伝のミサイルキックでペガサスから3カウント。
×ペガサス VS 優香○
(7分:ミサイルキック)
<2>J:11人/鳥:12人
《ジャイアント・カムイ》
《ダークフレイム真田》
VS
《橘 みずき》
《優香》
*Bペガサスに代わって登場は、2メートル近くの巨体をほこる危険な大巨人・Gカムイ。
しかしここでは橘と優香のコンビネーションが上回り、真田を沈めて幸先良く2連勝となった。
×真田 VS 橘○
(11分:フライングニールキック)
<3>J:10人/鳥:12人
《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉
VS
《橘 みずき》
《優香》
*真田退場で登場したのは、Gカムイの妹・Aカムイ。
姉妹のパワーで圧倒し、橘をたちどころに粉砕。
○Gカムイ VS 橘×
(13分:超高層ボディスラム)
<4>J:10人/鳥:11人
《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉
VS
〈ブレイヴ・レイ〉
《優香》
*橘に代わって登場は激闘龍の新鋭・Bレイ。
意気軒昂で突貫したレイであったが、Gカムイの圧力に何もさせて貰えない。
サッカーボールキック一発でグロッギー状態に陥り、かろうじてタッチした優香にタッチ。
その後は優香がなぶり殺しにされ、最後はギロチンフィールで処刑台の露と消えるのを見殺しにするしかなかった。
○Gカムイ VS 優香×
(16分:ギロチンフォール)
◇
「……っ」
血まみれになって担架で運ばれる優香を横目に、日向の出番が回ってきた。
「無理はしない方がいいんじゃない?」
「っ、そんなこと……!」
理沙子の言葉を振り切り、リングへ向かう。
<5>J:10人/鳥:10人
《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉
VS
〈ブレイヴ・レイ〉
〈アポロン高崎〉
「高崎さん……っ、やってやりましょう!」
「も、もちろん……っ」
と士気は高い2人だが、Gカムイの圧力を押し返せるほどの力はない。
「…破壊…シ尽クス…ッッ!!」
「……っ!!」
Gカムイのダブルラリアットで、2人まとめてぶっ飛ばされ、レイはあえなく3カウント。
もはやプロレスの体をなしていない、それは一方的な闘いであった。
○Gカムイ VS レイ×
(20分:ラリアット)
<6>J:10人/鳥:9人
《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉
VS
〈上原 凪〉
〈アポロン高崎〉
「ゲホッ、ゴホッ…」
「~~っ、好きにさせるもんかーーっ!」
日向がラリアットのダメージから立ち直れない間に、凪もあっさり叩き潰される。
まさにブレーキの壊れた重戦車、止めようがない。
○Gカムイ VS 凪×
(24分:デスバレーボム)
<7>J:10人/鳥:8人
《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉
VS
《大高 はるみ》
〈アポロン高崎〉
辛うじて戦線復帰した日向であったが、
「偽の、新人王っ…ぶち壊れちゃえ…っ!!」
「~~~~~~っ!?」
日向には連敗しているアトラス(大空ひだり)、激しい当たりで追い込む。
アトラスのサポートもまじえた合体パワーボムで、一本も取れぬまま、リング上に撃沈――
○Gカムイ VS 高崎×
(26分:ダブルパワーボム)
◇
その後の展開は、記憶が定かでない。
気がつくと控え室に寝かされていて、モニターには、凄惨な光景が映し出されていた。
「ぐ……ぁ……」
「ヒャーーーッハッハッハッ! 他愛ねぇなぁ。えぇ?」
リング上は、血みどろの修羅場と化していた。
返り血に染まって哄笑しているのは、《ライラ神威》。
マスクを引き裂かれ、血の海に沈んでいるのは〈イレス神威〉。
その腕は異様な角度に折れ曲がっており、もはや闘える状態でないのは明白であった。
「これが、我々【ジャッジメント・サウザンド】に逆らった者の惨めな末路ですわ――」
呵呵大笑し、戦闘不能のイレスを足蹴にする寿千歌。
その凄惨な光景に、会場のファンは声もない……
そこで、太平洋女子の解散を宣言せんとする千歌。
が、そこに疾風のごとくリングインした集団が、千歌をボコボコにした。
『弱い者いじめで偉そうにしないことね――』
マイクで主張したのは、【柳生衆】の下っ端ヒール、〈MOMOKA〉。
『あなたたちの相手は、わたしたち【スーパー柳生衆】よ!!』
かくして年の瀬の番外戦は、乱入によってウヤムヤなままに終わったのである。
▲ライラ VS イレス▲
(1時間22分:ノーコンテスト)
◇
とどのつまり。
太平洋女子の解散は棚上げとなった……が、あれほどの惨敗を喫しては、もはや再起は不可能であろう。
堀たちの行く末は日向にとっても気になるところであったが、
――心配しなくて大丈夫よ。
という理沙子の言葉を、信じるしかなかった。
日向自身、それどころではなかったというのもある。
何せ、わずか4日後には、ドーム大会が控えているのだから。
◇
新日本女子プロレス 1・4新日本ドーム大会 ~Labyrinth of Judgment~
◇
「ヒナタ、Enjoy Wrestling!!」
「い、イエーース……」
コリィと日向が入場するや、大きな歓声が上がった。
<EXトライエンジェル・サバイバー>では十六夜を破るなどの結果を出した日向に、オーディエンスも期待していたとみえる。
しかし、コリィがいかにジュニアの強豪とはいえ、一度手を合わせただけのルーキーがパートナーでは、ベルト奪取は難易度が高すぎた。
大晦日のダメージも残る日向は精彩を欠き、技の失敗、カット遅れ、長らくリング外でゴロゴロと休んでいるだけ、やっと交代したと思ったら見せ場もないままギブアップ……
といった具合で、またもドーム中からのブーイングを浴びる羽目になったのである。
○ミステリィ VS 日向×
(13分39秒:ドラゴンスリーパー)
――“へなたん”卒業かと思ったけど、やっぱりへなたんはへなたんだな。
――新人王なんか貰って、調子に乗ってんじゃねーの?
――親父を見習えってんだ。
興行後、水道橋近辺の居酒屋でそんな会話が交わされたことは想像に難くない。
そう、父親といえば。
大晦日でチャンピオン相手に初の異種格闘技戦に挑んだオリオン高崎は、大流血に見舞われるも不屈の精神で闘い抜き、ついに時間切れ引き分けに持ち込んでいた。
その諦めない気持ちの強さと全力ファイトに、プロレスファンはもとより格闘技ファンからも大きな評価を受けていたのである。
それだけになおさら、娘のふがいなさが際立った……というのは、いささか酷であろうけれど。
◇
新年早々赤っ恥をかかされた日向であったが、落ち込んでいる暇もなく、気が重いイベントが待っていた。
▼日本 東京都千代田区 『ホテル・ニューイチガヤ』飛龍の間
この日、昨年度のプロレス大賞の受賞式が華やかに開催された。
なお、今年の各賞受賞者は以下の如し――
・最優秀選手賞(MVP):
《マイティ祐希子》(新日本女子プロレス)
・最優秀試合賞(ベストバウト):
《サンダー龍子》(WARS)
VS
《フレイア鏡》(フリー=当時)
(WARS福岡大会:龍子(31分45秒:両者ノックダウン)鏡)
・最優秀タッグ賞:
“災凶タッグプラスワン”
《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
《十六夜 美響》(VT-X)
〈紫乃宮 こころ〉(JWI)
・殊勲賞:
《南 利美》(ジャッジメント・サウザンド)
・敢闘賞:
《ソニックキャット》(東京女子プロレス)
・技能賞:
《内田 希》(ジャッジメント・サウザンド)
・新人賞:
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
(……っ、場違いにも、程がある……)
大物ぞろいの中にあって、何でアンタがいるの? と皆から思われているような、針のムシロ状態。
辛うじて同程度のキャリアの選手として紫乃宮がいるが、あちらはEXTAS制覇という明確な結果を出しているので、また違うであろう。
「ろくに試合にも出ていない半病人がMVPとは、どういうことですのっ?」
「頑丈なのだけが取りえの誰かさんとは違うのよね~」
「何ですって――」
市ヶ谷と祐希子は一触即発、
「やれやれ。バカが2人そろうと、やっかいそのものだな」
「その点は同感ね。あぁでも、バカは3人でしょう? 貴方もふくめて」
「ほお……?」
龍子と南が視殺戦を展開したり。
かくのごとく対立関係にある面々も少なくない緊迫した会場であったが、ひとまず無難に進行、最後の集合写真撮影も終え、さてこれにてお開き――という段になって。
それは、起こった。
「!」
突然、照明が落ちる。
ほんの数秒で明かりは戻ったが、
「あっ!」
誰もが、目を剥いた。
見知らぬ派手な女が、日向を痛めつけていたのだ。
「何の結果も出してないくせに、新人王? ちゃんちゃらおかしいなァ――」
と冷笑したこの乱入者は、日向の顔面に黒い毒霧をぶちまけて悶絶させるや、
「うちの名はΣリア! 通りすがりの美人レスラーや! あんたらの首も、いずれ頂戴いたしますんで、よろしゅうに――」
呵呵大笑するや、風を食らって撤収するΣリア。
「あははっ、面白いな~、あの子!」
「さ、さすがクイーン・サドンデス! びっくりさせられたお~」
と大ウケだったのは祐希子とソニックで、
「やれやれ、品がありませんわね。まるでどこかの誰かのよう」
「うふふ。楽しそうな子ね」
と鼻で笑ったのは市ヶ谷であり、微笑したのは十六夜である。
「アレが例の“クイーン”か。少しは骨がありそうだ」
「フフ。そうでしょう?」
これは、龍子と鏡の言。
「おやおや。海外でおとなしくしていれば、五体無事でいられたのにね」
「……気の毒に」
そんな物騒なことをつぶやいたのは、南と内田。
「麗華さまより目立つなんて……許せません!」
と怒りを露にしたのはこころで、
「あの……女っ!」
怒りを剥き出しにしたのは、被害者の日向であった。
◇
この一件を受けて。
さっそく、リアと日向の試合が組まれることになった。
その舞台は、【Panther Gym】の後楽園大会。
「……PGって、新女とは別団体なんですよね?」
「フフッ、もちろんそうよ」
日向の疑いのまなざしを、にっこり微笑んでかわす理沙子。
そのわりには、ズブズブのように思えるのは気のせいだろうか。
日本 東京都文京区 後楽園プラザ
<(0)15分一本勝負>
〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)
*新女のルーキー木村が曲者と対決。
<(1)15分一本勝負>
《ハルク本郷》(Panther Gym)
VS
〈ブラッディ・マリー〉(プロレスリング・ネオ)
*デビュー戦の本郷に不覚を取ったBマリーの雪辱戦。
<(2)30分一本勝負>
《奥村 美里》(Panther Gym)
&
《小松 香奈子》(Panther Gym)
VS
《YUKI》(フリー)
&
〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。
<(3)30分一本勝負>
《後野 まつり》(Panther Gym)
&
《庄司 由美》(Panther Gym)
VS
《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
&
《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。
<(4)30分一本勝負>
《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《テディキャット堀》(フリー)
&
《アルコ・イリス》(フリー)
&
《優香》(フリー)
&
《橘 みずき》(フリー)
*太平洋女子の残党がJ1Kに挑戦する。
<(5)休憩明け 30分一本勝負>
《沢登 真美》(Panther Gym)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
VS
《村上 千春》(Panther Gym)
&
〈Σリア〉(フリー)
*関西でマニアックな人気をはくしていた、元・ワールド女子のΣなにがしがPantherGym初参戦。
メジャーのリングで存在感を示せるか?
<(6)セミ前 45分一本勝負>
《マスクド・ミステリィ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《森嶋 亜里沙》(プロレスリング・ネオ)
&
《ドルフィン早瀬》(プロレスリング・ネオ)
*ネオコンビがJ1Kの刺客と対峙する。
<(7)セミファイナル 45分一本勝負>
《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《大高 はるみ》(フリー)
&
《ジャニス・クレア》(GWA)
*J1Kの個性派チームが友情タッグと対決。
<(8)メインイベント 60分一本勝負>
《パンサー理沙子》(Panther Gym)
&
《武藤 めぐみ》(NJWP-USA)
VS
《ヴァルキリー千種》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《越後 しのぶ》(ジャッジメント・サウザンド)
*決別した武藤と結城がPGリング上で激突。
◇
<(5)休憩明け 30分一本勝負>
《沢登 真美》(Panther Gym)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
VS
《村上 千春》(Panther Gym)
&
〈Σリア〉(フリー)
休憩前の試合で起こった〈イレス神威〉の乱入事件でいまだざわつく中、試合が開始。
ゴングが鳴るや、千春が日向をいたぶる展開。
タッチを求めるリアだが、千春、見向きもしないありさま。
どうやら、チームワークはよろしくないようだ。
千春が青コーナーに押し返されてきたタイミングで、強引にタッチするリア。
「さ~て、なんちゃって新人王サンに、本物のプロレスっちゅうのを教えて――」
「この……おっ!」
「ンッグッ!?」
日向、ショルダータックルから、高速フロントスープレックス!
「つっう……!?」
立ち上がるのもまたず、ぶっこ抜き投げっぱなしジャーマン!
「~~~~っ!!」
脳天からグサリとマットに突き刺さり、たまらず頭を抱えて悶絶するリア。
「おおっと……こういうのも……あるっ!」
「うぐっ!?」
指を掴んでねじりあげられる反則でペースを乱される。
そこをキックで乱れ打つ、容赦なしのラフ殺法。
ここは、Σリアの場数の豊富さが生きたか。
とはいえ、圧倒するには至らぬまま決着はつかず――
○沢登 VS 千春×
(11分:ノーザンライトボム)
「てめえっ! 何で助けに来ねぇっ!」
「いやぁ……あんなに簡単にピン取られるって思わなくて」
「何をっ!!」
千春を適当にあしらい、マイクを握ったリア、
『なかなかやるわね、“次代の大物”さん! でも、このリア様ほどでは――』
とアピールしようとした、矢先。
「……あぐっ!?」
突然、背後からイスで殴り倒されていた。
「修行してきたってわりには、甘いな~。また国外逃亡したほうがええんちゃう?」
「ぐ……っ、う……!」
J1Kの成瀬唯の人を食った笑み、更には――
「うっふふふ……っ♪ さよ~なら……リ~ア……ちゃんっ!」
「! アンタは……ッ!」
〈大空 ひだり〉――否、〈アトラス・カムイ〉の、ブルーボックスでの一撃!
このとき、日向もまた、J1Kの輩に袋叩きにされていた。
「う、ふ、ふ、ふ、ふ…………」
場外では、〈大空 みぎり〉……いや〈ジャイアント・カムイ〉がラダーを両手に持って大暴れ。
「な~に、うちらも鬼と違うからな。ちゃんと詫びいれて筋通すなら、堪忍したってもええんやで?」
「……っ、だ、誰……がっ!」
「せやろな。じゃ、腕の一本くらいは、貰っとくわ」
「…………!」
マスク越しにもわかるほど嬉々として、アトラスがスレッジハンマーを振り上げる――
「――はあっ!」
「!?」
「な、何やっ?」
突然飛来した影が、アトラスをかっ飛ばす。
いやアトラスのみならず、成瀬や、日向を襲っていた連中も、リングから追い出された。
誰の仕業かと見れば、
《ウィッチ美沙》
《YUKI》
《小縞 聡美》
〈フランケン鏑木〉
《木村 華鳥》
といった、新女の若手グループであった。
『貴方たちの相手は美沙たちがしてあげるのです!
そう、美沙たち――
【レッスルエンジェルス・ドリーム】がっ!』
美沙のマイクアピールに、大きなどよめきが起こる。
レッスルエンジェルス――
それはかつて、《マイティ祐希子》たちが立ち上げた伝説的革命軍団。
その名を襲い、新たな革命の炎を上げようとするのか。
『アンタらみたいなひよっこがレッスルエンジェルスぅ? そんなん、身の程知らずにもホドがあるやろ!』
『いかにもさよう――』
と、ここで鏑木がバトンタッチ、
『確かにこちとら、クチバシの黄色いひよっこぞろい。
身の程知らず、いかにもいかにも。
されどでっかい組織に属し、ガン首並べて弱いものいじめ。
そんなチンケな輩の所業、なんで黙って見ておれましょうや。
なに、諸先輩方が出るまでもない。
かるく飲み干せるものならば、どうぞ飲み尽くしてごらんなれ。
たんと悪酔い、二日酔い、ただじゃあ呑まれぬ、干し上がらぬ。
天使と名乗るは面映いが、お見せしやしょう、ひよっこの意気地――』
と、さんざん口上述べて、
『お手前方の思い通りにはさせやせん――絶対にっっ!!』
最後は、感情を剥き出しにしての咆哮。
場内大いにどよめき、騒然となったのである。
「…………っ」
彼女たちの姿を、日向はまぶしげに仰ぎ見ることしかできなかった……
◇
▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場
レッスルエンジェルス・ドリーム――
伝説の軍団の名を襲ったこのユニットへの反響は、多大であった。
もとより、好意的なものばかりではなかったが、
――マイティ祐希子がお墨付きを与えたらしい。
との噂も広がり、その期待感は少なくなかった。
そして……
「美沙先輩、私もユニットに入れてくださいっ」
「はぁ? 何を言ってるのです」
日向の申し出に、ウィッチ美沙は、白けた顔で応じた。
「しょっぱい試合してもひいきされて使ってもらえるスーパースター候補生さんは、美沙なんかに頼まなくても、会社に泣き付けばいいのです。きっと、頼もし~いお仲間を用意してくれるに決まってるのです」
「……っ」
それでも必死に頼む日向に、美沙は条件を出す。
今度の関西興行でJ1Kと対戦するので、そこで結果を出してみろ、と。
◇
「そこまで言うなら――」
と、美沙は条件を出した。
今度、J1Kが京都で自主興行を行なう。
「そこにブッキングして貰いますから、結果を出してください」
「……っ、わかりましたっ」
そのやりとりを、かがりは複雑な思いで聞いていた。
もちろん、戦力は多いにこしたことはないが、正直、面白くはない。
(……せいぜい、お手並み拝見といきやしょうか)
◇
<I・W・J 関西大会>
▼日本 京都府京都市 寿総合文化ホール
<(1)15分一本勝負>
〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)
<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>
《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
【レッスルエンジェルス・ドリーム】
《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
&
《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
&
〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
<(3)ブレード上原復帰戦 30分一本勝負>
《ブレード上原》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《芝田 美紀》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《中森 あずみ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈高倉 ケイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
<(4:休憩前) -KAMUI FINAL- 時間無制限一本勝負>
《ライラ神威》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
〈イレス神威〉(フリー)
<(5:休憩明け)スペシャルシングルマッチ カラテvsジークンドー 30分一本勝負>
《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
〈Σリア〉(フリー)
<(6)ノールールマッチ 30分一本勝負>
《六角 葉月》(新日本女子プロレス)
VS
〈ランダ八重樫〉(ジャッジメント・サウザンド)
<(7)J1Kvsスーパー柳生衆・1 30分一本勝負>
《サタン神威》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《スパイダー神威》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《ダイナマイト・リン》(スーパー柳生衆)
&
〈MOMOKA〉(スーパー柳生衆)
<(8)J1Kvsスーパー柳生衆・2 45分一本勝負>
《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《栗浜 亜魅》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《保科 優希》(スーパー柳生衆)
&
《近藤 真琴》(スーパー柳生衆)
<(9)メインイベント J1Kvsスーパー柳生衆・3 60分一本勝負>
《寿 千歌》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《柳生 美冬》(スーパー柳生衆)
&
《寿 零》(スーパー柳生衆)
&
《オーガ朝比奈》(スーパー柳生衆)
◇
「景気いいみたいだねぇ。あたしもあやかりたいよ」
「……っ、とんでもない」
バックステージでは、シングルマッチに出場する六角や、
「よっ。調子いいみたいじゃん。悪夢にならないようにね~」
「わ、わかっているのです……っ」
試合のない祐希子もなぜか――その理由は第4試合で判明した――顔を出した。
いわば“御前試合”であるからして、不覚は許されぬ。
まして、準構成員にすぎぬ日向にとってはなおさら。
「……せいぜい、足を引っ張らないようにお願いいたしやす」
「っ、もちろんですっ!」
共闘する以上、鏑木ともうまくやらねばならないだろう。
◇
そして、J1Kとの正面衝突。
<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>
《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
【レッスルエンジェルス・ドリーム】
《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
&
《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
&
〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
「な~にがレッスルエンジェルスや、名前負けにもほどがあるっちゅうねん」
「今はまだ天使の卵でも、ここから大きく成長するのです!」
「いつまで夢(ドリーム)見てんねん!」
日向が先発を買って出て、J1Kのアトラスと対峙。
「この前のようにはいかない……っ!」
「うっふふっ……偽者の……くせに……!!」
日向、がむしゃらなファイトで突貫し、神田や村上の打撃、成瀬の拷問技やアトラスのパワーに痛めつけられながらも、必死に食い下がる。
いつになく感情を剥き出しにしたファイトに美沙たちも触発され、激しくぶつかり合う。
「――鏑木さん!!」
「……承知!!」
鏑木が抱えあげたアトラスに、日向がトップロープから一撃――
日向と鏑木、初めてのツープラトン攻撃・ハイジャック式パイルドライバーを成功させる。
「う、ぐ、ぐ……っ!」
アトラスもたまらず場外へエスケープ。
そして、最終局面では、
「――みしるし頂戴っ!」
「!?」
鏑木が神田をクルリと丸めて破る殊勲を上げ、レッスルエンジェルス・ドリームの初陣を飾った――
×神田 VS 鏑木○
(9分:高速小包固め)
「フン……まぁまぁなのです。とりあえず、端っこに入れておいてあげてもいいのです」
「……っ、ありがとう、ございますっ」
かくして、シャイニー日向は、新たな一歩を踏み出したのである。
もっともこの日の興行では、第4試合で謎の覆面戦士《マイティ・カレーコ》が乱入したり、復帰したブレード上原が独立を表明したり、第5試合の終了後に例のΣリアとJ1Kを裏切ったアークデーモンが結託したり、といったトピックが多々あったため、そこまで大きく取り上げられることはなかったのだけれど。
◇
▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場
「こうしてメンバーが集まった以上――まずは、コレなのです!」
バーン、と美沙がテーブルに置いたのは、真新しいポスターである。
「<アルティメット・エンジェル・クラウン>……?」
新女が開催する、若手レスラーの登龍門的イベント。
今回は他団体のルーキーにも大々的に門戸を開くのだという。
「ここできっちり結果を出して……っ」
その先にある、真の“大勝負”……
「<ジャッジメント・ショウダウン>を制するのです!」
今はまだ噂段階でしかない、J1Kと新女(+α)の全面対抗戦。
果たして【レッスルエンジェルス・ドリーム】は、その舞台に立つことができるのであろうか。