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2012年06月24日

『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション05 Part1

この宇宙(そら)に、いったいいくつの星々が生まれ、散っていったのだろう?

この惑星(ほし)に、いったいいくつの生命が生まれ、そして地に空に還っていったのだろう?

それを知るすべは、誰にもありはしない。

西暦20X1年、秋……

天と地の理(ことわり)と同じく、人の作り出した存在にも、いずれ終わりは訪れる。

プロレス団体も、その摂理から逃れることは出来ない。

されどその終わりは、あるいは始まりに過ぎないのかも知れないのだ……

◇◆◇ 1 ◇◆◇

◆リアクション05共通内容:新日本女子プロレス編(1)
◆リアクション05共通内容:新日本女子プロレス編(2)

◇◆◇ 2 ◇◆◇

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

タッグで香澄に勝ったとはいえ、〈高崎 日向〉にとってはまだまだ一歩に過ぎない。

「っ、今度は負けないから!」

と必死に平静を装う香澄を気遣いつつも、

「香澄に勝ったぐらいで、調子に乗らないようにねっ!」

と《菊池 理宇》との激しいスパーで追い込まれる日々。
そんなある日、日向に呼び出しがかかった……

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明

【Panther Gym】のオフィスを訪れた日向。
呼び出したのはもちろん、

「北海道じゃ、お手柄だったみたいね?」
「……っ、偶然ですよ」

理沙子に香澄を破った件を振られて、当惑する日向。
あれはまだまだ僥倖で、香澄を超えた……などと言えるものでは、到底ない。

「ふぅん、偶然で勝てるほど、簡単な相手だと言うことかしら?」
「そっ、そうじゃないですけどっ」
「そうでしょう? 卑下するのは良くないわね」
「…………」

それはさておき、と理沙子は咳払いし、

「どうする気なの?」

と、単刀直入に尋ねてきた。

「…………」

何のことかは、言わずとも分かる。
【Panther Gym】に移籍する気があるのか、と言うことなのであろう。
どうも、周囲は彼女が理沙子の所に移るのは“規定事項”と見なしているフシがある。

「……私からも、聞いていいですか」
「あら、何かしら?」

そこで日向は、理沙子の真意を問いただした。
本当に、新女から独立するつもりなのか? と。

「ふふっ、信用ないのね。何度も言っているでしょう?」

元々、こうした形で、若手を育てたいという気持ちがあった。

「でも、これまでは――」

彼女の眼鏡にかなう若手がいなかったこともあり、踏み切れずにいた。

「だったら、どうして今……」
「今は、違うから」
「…………?」

一瞬、意味が分からなかった。
が、理沙子のまなざしから、じきにその意を悟る。

「! ひょっと、して……」
「そう――高崎日向。貴方を」

手塩にかけて鍛えてみたくなったの、とパンサー理沙子は微笑んだ。

「そ、それって……っ」

つまるところ、この一連のドタバタは。
ただ、日向を鍛えたかった一心――
と、いうのだろうか。
それが本当だとして、

「っ、でも、それなら……」

新女の中にいても、可能だったのでは?

「ちょっとは感じてるでしょう? ……いろいろと、ややこしいのよ。“新女さん”は」
「…………っ」

大所帯ゆえに、さまざまな人間の利害が錯綜する新女。
それを避けるためには、しがらみのない“城”を作るしかない……

「すぐに決断して――とは、言わないわ」

言われずとも、とても、即答出来る話ではなかった。

「さてと、せっかく来たんだし、汗、流していくでしょ?」
「え……っ、え、え……」

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

ひとまず保留したとはいえ、理沙子の言葉は日向の頭から離れずにいた。

(……っ、ひとまず、忘れないとっ)

もっと、身近な問題がある。
それは、辻香澄の懊悩であった。

中堅レスラーとしてある程度の実績は残しているものの、新女の中での立ち位置は微妙。
折しも同期の幸音鈴が【ジャッジメント・セブン】に加入、菊池のジュニアタイトルへの挑戦が決定するなど、自分のレスラーとしての在り方に悩んでいる。
日向がそんな香澄の様子に気づいたのは、デビューを果たし、ようやくレスラーとしての毎日に慣れつつあったためであろうか。
とはいえ、後輩である自分から励まされたり、忠告されたりするのは、いくら友人であっても辛いことであろう。

そんなおり、小耳に入ったのは、GPWWAジュニアタッグリーグ戦――正式名“Top of the Cruiser Girls”――TCGの件であった。
GPWWA(国際女子プロレス連合)は、【東京女子プロレス】が音頭をとって立ち上げた女子プロレス統一コミッション。
独自のコミッションを持つ新女とは相容れない存在と言えるが、以前開催された“ニューフェイスカップトーナメント”には新女からも選手が出場、優勝を果たしていることから、出られないものでもあるまい。

「ねえ、香澄ちゃん。出てみようよ。新女の外に出てみて、わかることもあるかも知れないし」

現状の打破のため、一緒に参戦することを提案する日向。

「う~ん……でも、さおさおたちが出るみたいなんだよね……」
「……え」

どうやら既に、佐尾山たちJ7軍が出場を決めているらしい。
となると流石に、新女から2チームと言うのは厳しいかも知れない……

しかし、拾う神もあるというわけで、話を聞きつけてきたのが

「なんならウチが口聞いてやってもええよ~?」

アイドルレスラー《藤島 瞳》。

「っ、ホントですか?」
「モチのロン。そのかわり、ちょ~っと条件があるんやけど~」
「え……?」

▼日本 東京都渋谷区 B.B.アップルホール

 藤島 瞳ファン感謝イベント ~ 可愛い方が勝つって決まっとるんよ・3 ~ 

国内屈指の人気アイドルレスラー・藤島瞳(新日本女子プロレス)。
彼女のファン感謝イベント、いわゆる“カワカツ”第3弾。
トークショーや歌のコーナーなどでファンとの交流を図る催しである。

この場にて、藤島がリーダーをつとめるアイドルユニット【HONEY★TRIP】(いわゆるハニー・トラップ=色仕掛けのもじり)のメンバー紹介がおこなわれた。
そのメンバーは、新日本女子から

《辻 香澄》
《サキュバス真鍋》
〈高崎 日向〉

の3人である。
同時に、辻は《ストロベリー香澄》、高崎は〈シャイニー日向〉へのリングネーム変更も発表された……

はや自明であろう。
藤島の出した条件――それは【HONEY★TRIP】への参加だったのである。

「新女からやなくて、【HONEY★TRIP】からの参戦……てことなら、会社も目くじらたてんやろ」

との、お達し。
正統派レスリングスタイルの二人はアイドルレスラーになることに難色を示したが――日向は母親のこともあるのでなおさら――

「何事も経験じゃない?」

という菊池のアドバイスもあり、参加することを決意するのだった。

「それはそうと、なんでつかさまで入るのさ?」
「にひひ。いーじゃん。ほら、この辺でぇ、誰がかすみんの正妻かってことわからせておかなきゃだしぃ~」
「…………」

ひそかに、正妻戦争も勃発していた。

「……それにしても、このコスチューム、どうにかならないんですかね」

これまでとは段違いの、アイドルっぽさ全開のフリフリ衣装。
ちなみに、高崎という名字はアイドルにしては固すぎるということで、シャイニー日向というリングネームとあいなった。
日向本人も気に入り、このリングネームを使い続けることになるのだった。

「なんなら、お母はんにちなんで《SUN》とかでもええよ」
「謹んで固辞します!」

「あ、それから入場曲も変えんとね~~」
「そ、そうなんですか……?」
「……そら、アレはアイドルとしてはあかんやろ」

Burning Through The Night”(Roxanne)では、ダメらしい。

ちなみに、【HONEY★TRIP】には新女以外のメンバーとして、

《渡辺 智美》(激闘龍)
〈南奈 るい〉(東京女子プロレス)

の名前も挙がった。
この中でも、南奈の名前は意外なものだったといえる。
ほぼ全面外交な激闘龍と異なり、新日本女子と東京女子はライバル関係にある。

「まぁ、ええんちゃう? 可愛いは正義やし~」

という藤島のざっくり感のおかげであろうか。

「この子、日向。同じ新人やし、仲良うしたってね~」
「……っ、どうも」

藤島に紹介され、南奈に挨拶。

「は~い、よろしくね、ヒナちゃん!」
「は、はい……」

にっこり明るい笑顔で握手してくる南奈。
どうも、こちらの方がずっとアイドル向きのようだった。

▼日本 東京都新宿区 新宿FATE

新日本女子の若手中心の興行、“Angel Pit”。
小規模会場ながら、未来のスター候補を見ようと客席の熱気はただならないものがある。
そのメインイベントは、

<メインイベント 30分一本勝負>

 《ウィッチ美沙》 & 〈シャイニー日向〉 with《藤島 瞳》
 VS
 《小縞 聡美》 & 《榎本 綾》 with《キューティ金井》

藤島と金井がそれぞれセコンドについての一戦。
《天神 美沙》あらためウィッチ美沙は日向のルームメイトだが、おせじにも折り合いがいいとは言えぬ。

「フ~ン、期待のチョ~新星さんは、リングに上がるにも付き添いが必要なのですか~?」
「……っ」
「ま、そういうことやんね。なんなら、美沙っぺの面倒も見てあげるけど?」
「願い下げなのです。美沙は“自分の力”だけで上に行くのです。プッシュされまくりの誰かさんとは違うのですっ」
「く……っ」

返す言葉もない日向であるが、いざゴングが鳴れば、雑念は失せる。

「でやぁっ!!」

先輩たち相手にも物怖じしない、バチバチしたファイトを見せていく。
いわゆるストロングスタイル志向の戦法。
が、藤島からはさっそく容赦ないダメ出しが入る。

「あかんわ。全然美しくないな~~」
「その格好でそんなプロレスやってもしゃ~ないやん?」
「ガチガチいくのもええけど、もっとお客さんの目を気にせんといかんよ」

(……っ、そんなこと、言われてもっ)

「余所見してないで、試合に集中するのですっ」
「っ、は、はいっ!」

そっけない美沙であるが、意外とスムーズに連携をこなしてみせる。
小縞に決めた、日向のDDTからの美沙のノーザンライトスープレックスへの流れるような攻めが最大の勝機だったか。

「へ~、やるやん美沙っぺ。悪いこと言わんから、うちらと組んだら~?」
「ハァ、ハァ、そんな、口車には……あいった!?」

油断テキメン、小縞のラリアットからの脇固めに、あえなく屈した。

 ×美沙 vs 小縞○(12分25秒:脇固め)

「まだまだあかんね~。道場で絞り直しやね」
「……っ、よろしく、お願いします」

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明 “Panther Gym”道場

いっぽう、日向は有明道場にもたまに顔を出している。
といっても、正直、敷居が高いのだったが。

「あら、日向。今日もサボりに来たわけ~?」
「そんなわけないじゃないっ」

彼女の母、《高崎 月美》。
かつて新女において、《LUNA》というリングネームで活躍した彼女だが、現在は引退して専業主婦。
後輩で遠縁でもある理沙子の要請で、ちょっとしたコーチ役を買って出ているというわけ。

「ふふ、こちらの稽古の方がキツいんじゃありませんか?」

これは《ミミ吉原》。新女の鬼コーチだが、最近はこちらに足を運んでいることも多い。
やはり理沙子の手伝い、ということだったが……
何かキナ臭い気がするのは、新日本女子ならではであろうか。

そんなある日のこと……

「日向! ちょっと来て頂戴」
「えっ? あっ、はい」

練習中、ふいに理沙子に呼ばれた。
行ってみると、見知らぬ覆面姿の女、そして、

「あ、日向ちゃん?」
「あっ……咲恵さん!」

堀咲恵――《テディキャット堀》。
もと新女のレスラーで、理沙子の後輩にあたる。
日向とは以前から面識があった。
現在は、《ブレード上原》すなわち、上原今日子の下で活動しているはずだったが……

「あのっ……今日子さんは?」
「……っ、うん、大丈夫。すぐ、退院出来るから」
「そう……ですか」

上原が、練習中に負傷、入院を余儀なくされたと言う話は、聞いていた。
今日子とは子供の頃、よく遊んで貰ったりしたものだけど……

「高崎日向。私の――そうね、後継者候補って所かしら」

覆面の女に、ざっくりとした紹介をする理沙子。

「ちょっ!? 理沙子さんっ!!」

日向の抗議にかまわず、

「この子と、手合わせして貰おうかしら」
「…………」
「え? ええっ?」

良く分からぬままに、日向は、謎の怪覆面〈イレス神威〉とスパーリングする羽目になった。

 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
 VS
 〈イレス神威〉(太平洋女子プロレス)

「でやああああっ!!」
「ウッグ……ッ!?」

イレスの豪快なダイビングショルダーが決まり、日向がのけぞった。

「――そこまで」

理沙子の冷静な声に、イレスは追撃を踏み止まった。

「もういいわ、日向。お疲れさま」
「く…………っ」

その場では、彼女の正体は定かでなかったが……
じきに、いやがうえにも明らかになったのである。

その舞台は、【Panther Gym】、旗揚げ戦!

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明

 ― Panther Gym 旗揚げ戦 “Law of the Jungle”―

(第0試合)<ダークマッチ:ハルク本郷プレデビュー戦>:15分一本勝負

 《ハルク本郷》(Panther Gym)
 VS
 〈ブラッディ・マリー〉(プロレスリング・ネオ)

※入場曲、選手紹介などもないダークマッチ。
 本郷はこれが実質的なデビュー戦。
 Panther Gymの理念を見せ付けての勝利が義務だ。

(第1試合)<オープニングマッチ:30分一本勝負>

 《佐久間 理沙子》(Panther Gym)&〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
 VS
 〈イレス神威〉(太平洋女子プロレス)&〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)

※理沙子、本名で登場。初心を思い出す一戦。
 パートナーには“次代の大物”日向を抜擢した。
 対するは、《ブレード上原》を血祭りに上げた“地獄仮面”イレス神威と、村上姉妹らを追放し、ヒールユニット【夜叉紅蓮】をわがものにした極悪レスラー・鏑木からなる外道コンビ。
 理沙子&日向は怪人チームを退治して、団体の船出を飾ることが出来るであろうか?

(第2試合)
 《奥村 美里》&《小松 香奈子》(Panther Gym)
 VS
 《霧島 レイラ》&《楠木 悠里》(プロレスリング・ネオ)

※若手コンビが外敵を迎え撃つ。

(第3試合)
 《Judgment-ONE》&《Judgment-ZERO》(ジャッジメント・セブン)
 VS
 《ドルフィン早瀬》&《森嶋 亜里沙》(プロレスリング・ネオ)

※J7軍が外敵に胸を貸す一戦。

(第4試合)
 《後野 まつり》&《庄司 由美》&《村上 千春》(Panther Gym)
 VS
 《神田 幸子》&《Judgment-NARU》&《村上 千秋》(ジャッジメント・セブン)

※若手トリオがJ7軍と対峙する。

(第5試合)
 《キューティ金井》&《小縞 聡美》&《榎本 綾》(新日本女子プロレス)
 VS
 《藤島 瞳》&《ストロベリー香澄》&《サキュバス真鍋》(新日本女子プロレス)

※アイドルユニット【HONEY★TRIP】が【みるきぃ☆れもん】と対決。

(第6試合)
 《沢登 真美》(Panther Gym)
 VS
 《菊池 理宇》(新日本女子プロレス)

※ジュニア王者・菊池が沢登の挑戦を受ける。

(第7試合)
 《佐尾山 幸音鈴》&《マスクド・ミステリィ》(ジャッジメント・セブン)
 VS
 《テディキャット堀》(太平洋女子プロレス)&《永原 ちづる》(新日本女子プロレス)

(第8試合)
 《南 利美》(JWI)&《山田 遙》(フリー)
 VS
 《マッキー上戸》&《ラッキー内田》(新日本女子プロレス)

※アジアタッグ王者に挑むのは、南&山田の危険な狼コンビ。

(第9試合)
 《パンサー理沙子》(Panther Gym)&《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 VS
 《越後 しのぶ》&《斉藤 彰子》(ジャッジメント・セブン)

※新旧アジアヘビー王者が、J7のツートップと対峙する。

上原を負傷させたのは、他ならぬイレスであった。

(今日子さんの、仇……!)

もとより、そのパートナーとも因縁浅からぬものがある。

「アイドルレスラー転向たァお利巧なことで――弱くったってご声援を頂戴出来るんですからなァ」
「わ、私だって……好きでこんな格好してるわけじゃッ!!」

意地のぶつけ合いで、見せ場は作った日向とかがりだったが……
若手時代のコスチュームや入場曲で登場した理沙子、勝ちにこだわり気迫を見せ付けたイレスに引っ張られた試合だったのはいなめない。

試合は、イレスが日向をフォール。
リベンジとはならなかった。

 ×日向 vs イレス○(19分41秒:ダイビングショルダー)

この因縁が、点に終らず線となってつながっていくのかどうか……
それは誰にも分からない。

そして、新女九州巡業。
大分では、日向に取ってきわめてハードなカードが組まれた。
すなわち、

▼日本 大分県 別府ビーコンホール

<セミファイナル 45分一本勝負>

《マイティ祐希子》 & 《菊池 理宇》 & 〈シャイニー日向〉
 VS
《大空 みぎり》 & 《近藤 真琴》 & 《大空 ひだり》

シリーズ最終戦の九州ドーム大会における、祐希子vsみぎりの“ダブル・クラウン”王座戦の前哨戦。
何と言っても、日向にとっては、ジュニア王者・菊池と組むのだけでも十分にプレッシャーなのに、

(祐希子さんと、なんて……っ)

先日、新女の道場に現れた際は、スパー相手を買って出た鏑木をドロップキック一発で失神させたと聞く。

(……っ、あの人も、頑丈さだけは凄いのに)

祐希子の力、もって思うべしと言うほかない。

「お手並み見せて貰うわよ、理沙子さんの愛弟子サン?」
「……っ、はい……っ」

もっとも、この試合のメインは、なんといっても祐希子vsみぎり。
とりわけ、大空姉妹はそろって祐希子を狙い撃ちにしてきた。
ことに祐希子の命とも言うべきスピードを殺すべく、下半身を主に攻め、足腰にダメージを与えていったのである。
ひだりの怪力、みぎりの暴虐っぷり、加えて近藤のキレのある打撃で集中攻撃されては、さしものチャンピオンもただではすまぬ。

「好き勝手には……やらせないっ!」
「うふふ~、まだまだ……って、あれええぇ~~~?」

 ○日向 vs ひだり×(26分29秒:ジャーマンスープレックス)

最後は日向の人間橋にひだりが沈んだが、試合後、祐希子は一人で帰れず、菊池たちに肩を借りるありさま。
誰もが、王座防衛に黄信号――と確信した一幕であった。

そして、シリーズ最終戦のドーム大会。
ここでは、【HONEY★TRIP】と【みるきぃ☆れもん】の全面対決が行われた。

▼日本 福岡県福岡市中央区 九州ドーム

<6人タッグマッチ 60分三本勝負>

【HONEY★TRIP】
 《藤島 瞳》&《ストロベリー香澄》&〈シャイニー日向〉
 VS
【みるきぃ☆れもん】
 《キューティ金井》&《小縞 聡美》&《榎本 綾》

*一本目はダンス、ニ本目は歌、三本目はプロレスで決着がつけられる。
*なお、三本目を取ったチームが勝ちとなり、CDデビューが認められる。

「……って、一本目とニ本目、意味なくないですか」
「ええやん。そういうもんなんよ」

ちなみに、真鍋はアンダーカードに出場している。

<夜叉紅蓮残党・共食い4WAYマッチ 30分一本勝負>

 《村上 千春》vs《村上 千秋》vs《サキュバス真鍋》vs〈フランケン鏑木〉

*敗者は新女を追放される

「って、なんであたしはこんなカードなのー!」

と真鍋がブツクサ言い出すのも道理であろう。

(鏑木、かがり――)

ヒールユニット【夜叉紅蓮】が、リーダー・《八島 静香》の欠場以来、バラバラになっていったのは知っていたが……
こんなエゲつないカードと、アイドル対決が同じ興行に組み込まれているのは、天下広しと言えども新女のみであろう。

このサバイバル戦のゆくえがどうなったかは、鏑木かがりの物語に譲るとして……

日向たちの試合の行方はと言えば。

まず一本目の歌対決。
これは、歌唱力に定評のある金井と榎本を要する【みるきぃ☆れもん】が圧勝した。

続くダンス対決。
これはぶっちゃけどちらもどっこいな出来であったが、榎本がミスを連発したので、消去法で【HONEY★TRIP】。

結局は、三本目のプロレス対決で決着をつけることになった。
ここでは、ダンス対決のミスを取り返さんものと榎本が大ハッスル、遂には日向からギブアップを奪ったのである。

 ○榎本 vs 日向×(15分5秒:コブラツイスト)

かくして、アイドルユニット対決第一ラウンドは、みるきぃ軍に軍配が上がった。
どっこいしかし、HONEY軍も黙って引き下がりはしない。

『こうなったら、うちらの実力見せたるわ! T・C・G! “Top of the Cruiser Girls”!
 うちらが出場して、賞金500万円、バッチリいただいてきます~~!!』

藤島の宣言により、香澄&日向のTCG挑戦が始まったのである。

その後のメインイベントにも、触れておく必要があるであろう。

<メインイベント NJWP・IWWF認定無差別級タイトルマッチ 60分一本勝負>

 〔王者〕
 《マイティ祐希子》(新日本女子プロレス)
 VS
 〔挑戦者〕
 《大空 みぎり》(寿千歌軍団)

前哨戦において、祐希子はみぎりやその妹〈大空 ひだり〉の集中砲火を浴び、大きなダメージを負っていた。
痛々しいテーピング姿で入場してきた祐希子の姿を見た観客のみならず、日向ら新女勢の脳裏にも、V12ならず、王座陥落――そんな可能性がよぎった。
だが、この祐希子vsみぎり戦は、予想外の結末となったのである。

「ごめ~ん。……長くは持たないから、“早食い”で行くわ」
「……!?」

ゴング早々、手負いのはずの祐希子が“翔んだ”。
その場飛びの“超高層”ドロップキックが、みぎりの顔面に炸裂――

「~~~~~ッッ!!」

思わぬ奇襲に、思わずうずくまったみぎりに、祐希子の容赦ないサッカーボールキックが追い討ちをかける。
そのまま手をゆるめず、殴る、蹴るの一方的な猛ラッシュ。
それはもはや、プロレスの“範疇”を超えた、暴力、そのものであったかも知れない。

普段ならば、一流の“受け”を披露し、風車の理論で一進一退の攻防を魅せ、その上で勝利する祐希子。
が、怪我の影響で、それは難しい――ゆえに、非情の速攻ケンカマッチを仕掛けたのだ。

「ひぃ……ひぃぃ、ひいぃぃぃぃ……」

悲痛に泣き叫ぶみぎりをギリギリと絞り上げ、最後は片逆エビで非情のギブアップ勝利。
勝ち名乗りを受けた祐希子に笑顔がなかったのは、およそ納得のいかぬ内容であったためであろうか。

 ○祐希子 vs みぎり×(9分30秒:片逆エビ固め)

(……っ、こんな……非情な……)

思わず、怖気が走るような、凄絶な試合。
これもまた、新女ならではの風景となるのであろうか……

なお、この大会後、祐希子は負傷を理由に王座を返上、“ダブル・クラウン”は空位に。
王座決定戦は、次回のメガイベント・『Athena Exclamation X』にて行われることになった。

ちなみに、負傷欠場となった祐希子だが、その後、映画出演などは普通にこなしていたため、

――あのケガは、フェイクではないか。

という噂も聞かれた。
つまり、映画出演のため欠場……では聞こえが悪いので、負傷したというテイにした、というのだ。
短時間での決着も、全ては計算どおりというわけ。
もとより、虚実のほどは定かでない……が、仮に事実だとすれば、新女らしいにも程のある話であろう。
何しろ、この試合で無残に心をヘシ折られたみぎりが、プロレスへの恐怖を訴え、実家に帰ってしまったのは事実なのだから。

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