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2012年06月04日

『天使轟臨』 サイドストーリー 月下の追想

「さあ、本日のメインイベント、特別試合、タッグマッチ60分一本勝負もいよいよ大詰めです! 試合序盤から試合を優位に進めていたドラゴン藤子とLUNAのコンビ、一時は外国人チームの逆襲に会う場面も見られましたが連携で切り抜け試合の流れをつかんでいます。さあ、そろそろフィニッシュに向かうか!?」
「おおっと、LUNAがコーナーに上ります! 観客へ投げキッスを飛ばし、出たー! ムーンサルトプレス! カットには、藤子がいかせない! カウント、スリー! 決まったー! 本日のメインイベント、決めたのはLUNA!」
「みなさんご存知の通り、オリオン高崎選手と結婚・出産し、一時は引退も噂されていたLUNA選手ですが、復帰後もブランクを感じさせないファイトで『月光の麗人』健在を見せてくれています。若手の成長も著しい新女ですが、まだまだその華麗な戦いぶりは追随を許しません。今後の活躍にも期待がかかります!」
「おお、リングサイドには若手の佐久間選手に連れられたLUNA選手のお嬢さん・日向ちゃんの姿も見られます。LUNA選手、日向ちゃんを抱きかかえて笑顔を見せます。オリオン高崎選手とLUNA選手の娘さんですから、将来は親娘2代でプロレスラーということもあるかもしれませんね」
「それでは、興奮冷めやらぬ後楽園プラザからお別れします。本日の実況はファウルチップ服沢がお届けしました」

               ◇       ◇       ◇

「ママ、かっこよかったおー」
「ふふ、ありがと。日向が応援してくれたおかげよ。それじゃひなた、ママは着替えるから今日子ちゃんと待っててくれる?」
「うん、わかったおー。きょーこちゃん、いこー」
「今日子ちゃん、悪いけどお願いね。理沙子は着替え手伝ってくれる?」
「はい」「わかりました」

「……日向と今日子ちゃん、行った?」
「ええ」
「そっか。あいたたたたた……!」
「月美さん! 大丈夫ですか!?」
「だいじょぶだいじょぶ、と言いたいけど、ちょっとキツイわ~。やっぱ最後のがやばかったわねえ」
「膝がそんな状態なのに。せめてムーンサルトなんか止めていれば」
「ムトーさんやコバシさんだってやってるじゃない。あの人達に比べればまだあたしの膝なんてマシよ?」
「それはあの人達と比べればそうでしょうけども」
「メインだったしクイックで終われる感じなかったしね~。お客さんの期待に応えてこそプロ、ってあいたた…。理沙子、悪いけどテーピングお願い。あんまり今日子ちゃん待たせても悪いからね」

               ◇       ◇       ◇

「……月美さん、そろそろいいんじゃないですか」
「ん、何が?」
「わかってるはずです」
「ん~? ……辞めろってこと?」
「……はい」
「あらあら、エラくなったもんねぇ~、佐久間選手。そーゆーナマイキな口は藤子からベルト獲ってからいいなさいな。まだまだあんたや今日子ちゃんに新女は任せらんないわね」
「ベルトは必ず獲ります。新女だって守ってみせます。だから、そんな身体で無理しないでください!」
「何? あんたから見てLUNAの試合は見てらんないほど酷かった?」
「そんな、そんなことありません。それどころか膝がそんな状態なんて、信じられないくらいでした」
「でしょ? だから大丈夫だって」
「それでも、このまま続けていれば必ず限界が来ます。そのときに大怪我でもしたら、星司さんも日向ちゃんも悲しみます」
「それはレスラーの奥さんに言うことじゃないわね。ま、星司さんにも遠まわしに言われたんだけどね」
「それでなんて?」
「『あなたが私の立場だったら止めてる?』って言ったら黙っちゃったわ。あの人も大概プロレスバカよねえ。そこがいいんだけど♪」
「…………」
「もう、そんな顔しないの。わかってるって。私だって動けなくなったらすっぱりと止めるつもり。お客さんにボロボロの姿を見せてもいいキャラじゃないしね」
「わかりません。プロレスが好きだから、ってだけじゃないですよね。どうして、そこまで現役にこだわるんですか」
「ん~……。正直さ、日向を産むまでは辞めるつもりだったのよ。あたしとしてもレスラーとしてやれることはやったって満足感はあったし。藤子がいて、あんたや今日子ちゃんがいれば新女の心配はいらないしね。
 でもね、生まれてきたあの子の顔見たらさ、リングに立ってるあたしの姿を見せたくなったの。
 あたしはさ、プロレスっていう自分が一番輝ける場所で精一杯やってきたつもり。だから、そういう自分にふさわしい場所で一生懸命生きていけるってことはすごく幸せなことなんだってことを伝えたいの。
 別に日向にレスラーになってほしいっていうんじゃないよ。あの子の人生だもん。好きに生きればいい。でもね、あの子がどんな道を選ぶにしても、リングに立つあたしの姿を覚えてれば、そういう生き方を選んでくれるんじゃないかなって思うの。
 だからさ、身体が動く限りは、あたしのプロレスをあの子に見せ続けたいのよ」
「日向ちゃんのため、ってことですか」
「ただの自己満足かもしれないけどね」
「…………。そこまでおっしゃるのなら、私からはもう何も言いません。でも、本当にダメなときは無理矢理にでも止めますからね」
「あら怖い。わかってるってば。そのためにもさっきの台詞、ちゃんと実現しておねーさんを安心させて頂戴な」
「はい。必ず!」

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「そういえば、そんなこともあったわね~。あの頃のあんたは可愛かったのに、いつの間にこんな色々企む悪いおねーさんになっちゃったのよ」
「もう、誰のせいですか。少なくともこういう性格になった一端はあなたが担ってますよ」
「わかってるってば。……それにしても、結局、あの子の中にちょっとは何か残せたのかしらね?」
「ふふ、大丈夫。ちゃんと伝わってますよ。本人はまだ気づいてないみたいですけどね」
「そうだといいんだけどね~。ま、リングの女王のお墨付きを信じますか」

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