« 2012年05月 | メイン | 2012年07月 »

2012年06月30日

2012年6月の読書メーターまとめ

6月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1918ページ
ナイス数:14ナイス

ベン・トー 9 おかずたっぷり! 具だくさん! 香り豊かな欧風カレー弁当すぺしゃる305円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)ベン・トー 9 おかずたっぷり! 具だくさん! 香り豊かな欧風カレー弁当すぺしゃる305円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
相変わらずの楽しさだが、例によって読んでると腹が減ってくるので注意。一緒にどんべえを買ってくると吉。今回一番の衝撃はサラリーマンの復活だったのは私だけでしょうか。つーかカッコいいじゃねーかサラリーマン。つーかロリはやばいよね。
読了日:06月25日 著者:アサウラ
おおきく振りかぶって(19) (アフタヌーンKC)おおきく振りかぶって(19) (アフタヌーンKC)
読了日:06月23日 著者:ひぐち アサ
僕は友達が少ない 8 (文庫J)僕は友達が少ない 8 (文庫J)
誰だよ表紙の美少女? 理科かクソ騙された!いや俺理科推しですけど。つか今回は全体的にイラストに気合が入っていた気がする。今まで散々前巻の引きをさらっと流してきた今シリーズだけどさすがに今回はそんなこともできず。ヘタレ主人公がついにホントの主人公になれるのかってな話。しかし、チートキャラの星奈はもちろん理科や幸村でさえ見せ場があったのに負け犬街道一直線の夜空の明日はどっちだ!?
読了日:06月23日 著者:平坂読
ゴールデンタイム外伝―二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)ゴールデンタイム外伝―二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)
もうゆゆこさんはこういう話をラノベでやっちゃうんだもんなあ。グサグサ刺さる。現実と二次元くんの苦悩と妄想が絡みあって読みにくいのも意図的だろう。本編は未完だけど、現時点であれば本作のほうが好きかも。
読了日:06月16日 著者:竹宮 ゆゆこ
アオバ自転車店 20巻 (ヤングキングコミックス)アオバ自転車店 20巻 (ヤングキングコミックス)
アオバの第2シリーズも気が付けば20冊目。ぶっちゃけ第2シリーズは第1シリーズに比べて薄い話が多かったのだけど、この最終巻は過去の話の焼き直しが多いとはいえいいエピソードが多かった気がする。私が自転車を大好きになるきっかけとなった作品。これからも読み続けますよ。
読了日:06月16日 著者:宮尾 岳
キン肉マン 39 (ジャンプコミックス)キン肉マン 39 (ジャンプコミックス)
待ってましたの新キン肉マン2冊目。まず表紙がカッコ良すぎ。本編もステカセ、カーメン、ブラックホールの持ち味を生かした戦いっぷりがいいね。II世と違ってテンポがよいのがおもしろさに拍車をかけてる。しかし、Web掲載時にも思ったが、ブラックホールの逆転の仕方がヒドすぎて素晴らしい。
読了日:06月05日 著者:ゆでたまご
【Amazon.co.jp限定カバー】俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 4 (GA文庫)【Amazon.co.jp限定カバー】俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 4 (GA文庫)
毎回ヒロインが増えてくのかよ! と思ったけどさすがに春夏秋冬揃ったのでそんなこともなく。今までの展開もそれなりにおもしろかったけど、ようやく真涼との関係に大きな変化が起こっていろいろと動き出しそう。
読了日:06月02日 著者:裕時 悠示
はるみねーしょん (3) (まんがタイムKRコミックス)はるみねーしょん (3) (まんがタイムKRコミックス)
待望のエジプト編! \\まじで// なんてことは無く、良くも悪くも相変わらず。まあこのノリが合わない人は1巻で脱落してると思われるので無問題。つーか各キャラの表情が数パターンしかないのでほとんどコピペで作画できるんじゃないかと失礼なことを考えてしまった。でもはるみメーカーとかソフトがでたらちょっとほしい。
読了日:06月02日 著者:大沖

2012年6月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター

2012年06月25日

『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション05 Part2

◇◆◇ 3 ◇◆◇

そして――

“Top of the Cruiser Girls”全出場チーム入場式

<<< Top of the Cruiser Girls >>>

 *30分一本勝負。
 *勝ち点……勝ち=2点 引き分け=1点 負け=0点
 *最終的に各ブロック上位2チームによるトーナメントを行い、優勝者を決定する。

<Aブロック>
《ソニックキャット》 & 《星野 ちよる》
《野村 つばさ》 & 〈MARIPOSA〉
〈大空 ひだり〉 & 〈高倉 ケイ〉
《ストロベリー香澄》 & 〈シャイニー日向〉
《ジョーカー・レディ》 & 《テディキャット堀》
《佐尾山 幸音鈴》 & 《マスクド・ミステリィ》

<Bブロック>
《ディアナ・ライアル》 & 《小早川 志保》
《ソニック・ザ・ブラックナイト》 & 〈カナ高橋15世〉
《金森 麗子》 & 〈紫乃宮 こころ〉
〈フランケン鏑木〉 & 《?》
〈MOMOKA〉 & 〈?〉
《ダークドラゴン1号》 & 〈ダークドラゴン2号〉

(負けられない……っ、結果、出さないとっ)

バックステージにて、改めて気合を入れる日向。
彼女を鼓舞する要素は、たとえば別ブロックながら出場を果たしている鏑木などの存在もあるが……

(メガライト……あの人にも……!)

《ジェナ・メガライト》。

アメリカ遠征において、LWWのレスリングキャンプで接した若手レスラー。
互いに投げを得意とすることもあって息が合い、リング上での再会を期したものである。
その彼女が、広島の【パラシオン】の大会に参戦、歴戦のファイター・沢崎を秒殺、病院送り。
鮮烈過ぎる日本デビューを果たしたのだ。

 ×沢崎 vs メガライト○(1ラウンド22秒:ベリー・トゥー・バック)

(いつか、闘う時が来たら……その時は!)

「ほな、ぼちぼち行こか~。ご両人?」
「あっ、はいっ!!」
「ちゃんと振り付け確認しとかんといかんよ~?」
「…………」

……どういう形での再会になるのかは、さっぱり、イメージが湧かないが。

<<大会1日目>> - 東京都 後楽園プラザ -

 《ストロベリー香澄》(新日本女子プロレス) & 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
 VS
 《ジョーカー・レディ》(AAC) & 《テディキャット堀》(フリー)

Merry Merrily』に合わせて入場の“イノセント・キッス”。

「日向ちゃん……悪いけど、手加減は出来ないから!」
「もちろんです、咲恵さんっ!」

試合前のダンスコーナー(もっとも踊っていたのはもっぱらマネージャーの藤島であったが)に惑わされたわけでもあるまいが、序盤はT堀が日向にエルボーを食らわされるなど、太平洋軍劣勢。
しかし地力では遥かに上回るだけに、たちまち形勢逆転。
サンドイッチ式スワンダイブドロップキックが日向に決まった時は、これで決着か――と思われたが、間一髪で辻がカット。
むしろIK軍が合体技『ボクごとジャーマン』(ジャーマンで敵を捉えた辻ごと、日向がブン投げる。ジャーマンを封印中の辻ならではの捨て身技と言えよう)を食らわせるなど、あわやという場面を作り、すわ大金星か――と期待を抱かせる。
しかし両者譲らず、30分ドローという結果に終わった。

 ▲Jレディ vs 日向▲(30分:ドロー)

「……っ、やるねっ、日向ちゃん……でも、次は、負けないから!」
「こ、こち、ら、こ、そ……っ」

気息奄々とはいえ、“イノセント・キッス”の初陣としては、上々であったか。

<<大会2日目>> - 栃木県 うつのみや市営体育館 -

 《ソニックキャット》 & 《星野 ちよる》(勝ち点:3)
 VS
 《ストロベリー香澄》 & 〈シャイニー日向〉(勝ち点:1)

ジュニアの覇者・ソニックに、若手アイドルレスラーコンビが挑む一戦。
初勝利と金星を狙う“イノセント・キッス”は、序盤こそ日向が星野をスリーパーで捕獲するなどチャンスを作るも、ソニックの牙城を揺るがすまでには至らない。
ソニックが場外の辻に華麗なラ・ケブラーダを決めている間に、星野が日向をクルリと丸め込んで決着――

 ○星野 vs 日向×(16分26秒:スモールパッケージホールド)

 IK軍、初勝利はお預けとなった。

<<大会3日目>> - 千葉県 幕張コンベンションホール -

 〈大空 ひだり〉 & 〈高倉 ケイ〉(勝ち点:1)
 VS
 《ストロベリー香澄》 & 〈シャイニー日向〉(勝ち点:1)

ほぼ同等同士のキャリアを持つチーム同士であり、五分の闘いが期待された一戦。
もっとも、タッグの年季ならば急造コンビの“スカイ・ハイ”よりも、幼馴染同士の“イノセント・キッス”が優るのは道理であった。
最後に決めた“恋天使降臨”(合体不知火=日向がパワーボムで持ち上げた所へ辻が不知火)などは、新女ならではというより、彼女たち2人ならではのコンビネーションであったろう。

 ○香澄 vs 高倉×(12分22秒:恋天使降臨(合体不知火))

<<大会4日目>> - 神奈川県 横浜文化総合体育ホール -

 《野村 つばさ》 & 〈MARIPOSA〉(勝ち点:0)
 VS
 《ストロベリー香澄》 & 〈シャイニー日向〉(勝ち点:4)

第4戦は、ここまで勝ち点無しのWARS軍“バタフライエフェクト”との対戦。

「あんたがたやっぱちっこくて可愛いな~。負けたら、うちらのユニットに入らへん?」
「瞳さん! ナンパは試合の後にして下さいっ」

MARIの気合もあってか、試合はお互い譲らぬ互角の攻防。
IK軍が野村に合体ジャーマンを決めれば、BE軍も負けじと、MARIの三角蹴りからの野村のスペースローリングエルボーを日向に食らわせるなど、好連携を見せる。
この日のベストバウトといっていい闘いは、ドロー間近の所で、日向の豪快な決め技が火を吹き、決着――

 ○日向 vs MARI×(28分22秒:サンライズジャーマンスープレックス(高角度ジャーマンスープレックス))

2勝1敗1分けの勝ち点7とし、決勝トーナメント出場に希望をつないだ。

<<大会5日目>> - 東京都 両国コロシアム -

 《佐尾山 幸音鈴》 & 《マスクド・ミステリィ》(勝ち点:10)
 VS
 《ストロベリー香澄》 & 〈シャイニー日向〉(勝ち点:7)

最終戦は、佐尾山たち“ハート・オブ・J7”との同門対決。
IK軍、これに勝てば勝ち点で並び、逆転で決勝トーナメント進出となる一戦。

「そんなチャラチャラした格好じゃ勝てないよっ!」
「せ、セーラー服のさおさおに言われたくないっ!!」

しかし、実力差はいかんともしがたいものがあった。
辻と佐尾山は同等でも、マスクドMの強烈な打撃にはIK軍手も足も出ず、最後はツープラトンの打撃ラッシュで決着。

 ○佐尾山 vs 香澄×(15分9秒:エルボー)

2勝2敗1分けで、イノセント・キッスのTCGは幕を閉じた――

「く……っ! ゴメン……」
「香澄ちゃんのせいじゃないよ……私が……っ」
「お疲れ様。惜しかったわね、二人とも」
「えっ? あ……っ、はい……」

マスクド・ミステリィに肩を叩かれ、囁かれる。
同じ新女系とはいえ、正体は聞かされていない。
どうやら、知り合いではあるのだろうか。
しかし、打撃中心のこのファイトスタイルには、記憶にないものであった。

ちなみに、同じく新女から出場のフランケン鏑木は、《YUKI》なる覆面レスラーと組んでリーグ戦を闘い、やはり2勝2敗1分けに終わっている。

そして、その後の決勝戦。

<<決勝戦>>

<Aブロック1位>
 《佐尾山 幸音鈴》 & 《マスクド・ミステリィ》
 VS
<Bブロック1位>
 《ディアナ・ライアル》 & 《小早川 志保》

決勝に駒を進めたのは、順当に両ブロックの1位チーム。
奇しくも、新女・東女の最強チームがぶつかることとなった。
両軍、これが3試合目とは思えぬ運動量でぶつかり合う。
クルーザー級の頂点を決める戦いにふさわしい激闘にも、フィニッシュが近づいてきた。
ディアナと小早川が初披露の秘技・“ダブルムーンサルト・デュアル”で佐尾山を追い詰めたが、これはミステリィが間一髪カット。
場外で佐尾山とディアナがやり合っているさなか、一騎討ちとなったミステリィと小早川。
ミステリィ、渾身の打撃――と思いきや、

「っっ!!」

予想外の高速サブミッション。
ガッチリと極まったドラゴンスリーパーに、小早川はタップする以外はなかった。

 ○マスクドM vs 小早川×(24分29秒:ドラゴンスリーパー)

(……っ、あれは、どこかで見たような……)

『まぁ、楽勝やね~。東京女子、ぜんぜん大したことあらへんなぁ~~』

勝利者インタビュー、マイクを奪い取った《Judgment-NARU》――その正体は《成瀬 唯》と目されている――が東女勢を煽る。

『悔しかったら、年末の<EXトライエンジェル・サバイバー>に出てこいや! 恥かくのが怖いなら、しゃ~ないけどな~~』

ちゃっかり、年末のEXリーグ戦の宣伝をぶつあたり、抜け目がないというしかない。

「……!!」

ここで真っ先に動いたのは、フリーのヒール・MOMOKAであった。
イスを手に乱入、成瀬……じゃない、JNRを殴打して蹴散らすや、

『面白いじゃないっ! その喧嘩! 買ってあげるわ――――』

激昂した佐尾山が殴りかかり、それを阻止する湖ノ宮やMARIPOSA、関係なく乱闘を始める大空と鏑木、巻き込まれる紫乃宮や日向、客席に愛想をふりまく南奈、どさくさまぎれに目立とうとしてリング外に投げ飛ばされるお約束をかます高倉……などなど、リング上は混乱のまま、第一回TCGは幕を閉じた――

そして、一ヶ月後。

▼日本 東京都新宿区 国立霞ヶ丘陸上競技場

新日本女子プロレスの――いや、日本最大のプロレスの祭典『Athena Exclamation X』が開催された。
国立競技場には10万人近いオーディエンスがつめかけ、史上最大規模のイベントとして盛大に幕を開けたのである。
大会のサブタイトルは“Last Judgment”――――
その名の通り、【ジャッジメント・セブン】が中心となるマッチメークが行なわれ、《ビューティ市ヶ谷》が久々に新女のリングに上がり、《サンダー龍子》が初参戦するなど、色々な意味で話題の多い大会となった。

メインイベントでは、《マイティ祐希子》が負傷のため返上した“ダブル・クラウン”をめぐり、王座決定戦が行われた。
しかし、そのカードは、しばらく前なら予想だに出来ないものである。

<メインイベント NJWP・IWWF認定無差別級タイトルマッチ 時間無制限一本勝負>

 《南 利美》(ジャッジメント・セブン)
 VS
 《武藤 めぐみ》(NJWP-USA)

市ヶ谷を裏切り、【ジャッジメント・セブン】の新たなボスとして君臨する《南 利美》と、アメリカから凱旋した新女の新鋭・《武藤 めぐみ》の対決。
新星武藤の縦横無尽な無重力殺法に大観衆は酔いしれたが、久々の祭典登場となった南も緩急自在の攻めで応じ、次第にペースを掴んでいく。
そして終盤、武藤の秘技・“フロム・レッド・トゥ・ブルー”(青コーナーに配置した敵めがけ、赤コーナー最上段からミサイルキックを放つ超跳躍技)を受け切った南が、新技“ダブルクロス・サザンクロス”(変形リストクラッチ式エクスプロイダー)を繰り出し、決着――

 ○南 vs 武藤×(24分13秒:ダブルクロス・サザンクロス)

『残念だったわね。まだまだ、貴方じゃ勝てないって事よ――』

“ダブル・クラウン”を奪取した南、そしてJ7が、新日本女子の覇権を握ることとなった。
混迷を深める日本の女子プロレス界は、更なる闘いのステージへ突き進む――

2012年06月24日

『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション05 Part1

この宇宙(そら)に、いったいいくつの星々が生まれ、散っていったのだろう?

この惑星(ほし)に、いったいいくつの生命が生まれ、そして地に空に還っていったのだろう?

それを知るすべは、誰にもありはしない。

西暦20X1年、秋……

天と地の理(ことわり)と同じく、人の作り出した存在にも、いずれ終わりは訪れる。

プロレス団体も、その摂理から逃れることは出来ない。

されどその終わりは、あるいは始まりに過ぎないのかも知れないのだ……

◇◆◇ 1 ◇◆◇

◆リアクション05共通内容:新日本女子プロレス編(1)
◆リアクション05共通内容:新日本女子プロレス編(2)

◇◆◇ 2 ◇◆◇

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

タッグで香澄に勝ったとはいえ、〈高崎 日向〉にとってはまだまだ一歩に過ぎない。

「っ、今度は負けないから!」

と必死に平静を装う香澄を気遣いつつも、

「香澄に勝ったぐらいで、調子に乗らないようにねっ!」

と《菊池 理宇》との激しいスパーで追い込まれる日々。
そんなある日、日向に呼び出しがかかった……

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明

【Panther Gym】のオフィスを訪れた日向。
呼び出したのはもちろん、

「北海道じゃ、お手柄だったみたいね?」
「……っ、偶然ですよ」

理沙子に香澄を破った件を振られて、当惑する日向。
あれはまだまだ僥倖で、香澄を超えた……などと言えるものでは、到底ない。

「ふぅん、偶然で勝てるほど、簡単な相手だと言うことかしら?」
「そっ、そうじゃないですけどっ」
「そうでしょう? 卑下するのは良くないわね」
「…………」

それはさておき、と理沙子は咳払いし、

「どうする気なの?」

と、単刀直入に尋ねてきた。

「…………」

何のことかは、言わずとも分かる。
【Panther Gym】に移籍する気があるのか、と言うことなのであろう。
どうも、周囲は彼女が理沙子の所に移るのは“規定事項”と見なしているフシがある。

「……私からも、聞いていいですか」
「あら、何かしら?」

そこで日向は、理沙子の真意を問いただした。
本当に、新女から独立するつもりなのか? と。

「ふふっ、信用ないのね。何度も言っているでしょう?」

元々、こうした形で、若手を育てたいという気持ちがあった。

「でも、これまでは――」

彼女の眼鏡にかなう若手がいなかったこともあり、踏み切れずにいた。

「だったら、どうして今……」
「今は、違うから」
「…………?」

一瞬、意味が分からなかった。
が、理沙子のまなざしから、じきにその意を悟る。

「! ひょっと、して……」
「そう――高崎日向。貴方を」

手塩にかけて鍛えてみたくなったの、とパンサー理沙子は微笑んだ。

「そ、それって……っ」

つまるところ、この一連のドタバタは。
ただ、日向を鍛えたかった一心――
と、いうのだろうか。
それが本当だとして、

「っ、でも、それなら……」

新女の中にいても、可能だったのでは?

「ちょっとは感じてるでしょう? ……いろいろと、ややこしいのよ。“新女さん”は」
「…………っ」

大所帯ゆえに、さまざまな人間の利害が錯綜する新女。
それを避けるためには、しがらみのない“城”を作るしかない……

「すぐに決断して――とは、言わないわ」

言われずとも、とても、即答出来る話ではなかった。

「さてと、せっかく来たんだし、汗、流していくでしょ?」
「え……っ、え、え……」

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

ひとまず保留したとはいえ、理沙子の言葉は日向の頭から離れずにいた。

(……っ、ひとまず、忘れないとっ)

もっと、身近な問題がある。
それは、辻香澄の懊悩であった。

中堅レスラーとしてある程度の実績は残しているものの、新女の中での立ち位置は微妙。
折しも同期の幸音鈴が【ジャッジメント・セブン】に加入、菊池のジュニアタイトルへの挑戦が決定するなど、自分のレスラーとしての在り方に悩んでいる。
日向がそんな香澄の様子に気づいたのは、デビューを果たし、ようやくレスラーとしての毎日に慣れつつあったためであろうか。
とはいえ、後輩である自分から励まされたり、忠告されたりするのは、いくら友人であっても辛いことであろう。

そんなおり、小耳に入ったのは、GPWWAジュニアタッグリーグ戦――正式名“Top of the Cruiser Girls”――TCGの件であった。
GPWWA(国際女子プロレス連合)は、【東京女子プロレス】が音頭をとって立ち上げた女子プロレス統一コミッション。
独自のコミッションを持つ新女とは相容れない存在と言えるが、以前開催された“ニューフェイスカップトーナメント”には新女からも選手が出場、優勝を果たしていることから、出られないものでもあるまい。

「ねえ、香澄ちゃん。出てみようよ。新女の外に出てみて、わかることもあるかも知れないし」

現状の打破のため、一緒に参戦することを提案する日向。

「う~ん……でも、さおさおたちが出るみたいなんだよね……」
「……え」

どうやら既に、佐尾山たちJ7軍が出場を決めているらしい。
となると流石に、新女から2チームと言うのは厳しいかも知れない……

しかし、拾う神もあるというわけで、話を聞きつけてきたのが

「なんならウチが口聞いてやってもええよ~?」

アイドルレスラー《藤島 瞳》。

「っ、ホントですか?」
「モチのロン。そのかわり、ちょ~っと条件があるんやけど~」
「え……?」

▼日本 東京都渋谷区 B.B.アップルホール

 藤島 瞳ファン感謝イベント ~ 可愛い方が勝つって決まっとるんよ・3 ~ 

国内屈指の人気アイドルレスラー・藤島瞳(新日本女子プロレス)。
彼女のファン感謝イベント、いわゆる“カワカツ”第3弾。
トークショーや歌のコーナーなどでファンとの交流を図る催しである。

この場にて、藤島がリーダーをつとめるアイドルユニット【HONEY★TRIP】(いわゆるハニー・トラップ=色仕掛けのもじり)のメンバー紹介がおこなわれた。
そのメンバーは、新日本女子から

《辻 香澄》
《サキュバス真鍋》
〈高崎 日向〉

の3人である。
同時に、辻は《ストロベリー香澄》、高崎は〈シャイニー日向〉へのリングネーム変更も発表された……

はや自明であろう。
藤島の出した条件――それは【HONEY★TRIP】への参加だったのである。

「新女からやなくて、【HONEY★TRIP】からの参戦……てことなら、会社も目くじらたてんやろ」

との、お達し。
正統派レスリングスタイルの二人はアイドルレスラーになることに難色を示したが――日向は母親のこともあるのでなおさら――

「何事も経験じゃない?」

という菊池のアドバイスもあり、参加することを決意するのだった。

「それはそうと、なんでつかさまで入るのさ?」
「にひひ。いーじゃん。ほら、この辺でぇ、誰がかすみんの正妻かってことわからせておかなきゃだしぃ~」
「…………」

ひそかに、正妻戦争も勃発していた。

「……それにしても、このコスチューム、どうにかならないんですかね」

これまでとは段違いの、アイドルっぽさ全開のフリフリ衣装。
ちなみに、高崎という名字はアイドルにしては固すぎるということで、シャイニー日向というリングネームとあいなった。
日向本人も気に入り、このリングネームを使い続けることになるのだった。

「なんなら、お母はんにちなんで《SUN》とかでもええよ」
「謹んで固辞します!」

「あ、それから入場曲も変えんとね~~」
「そ、そうなんですか……?」
「……そら、アレはアイドルとしてはあかんやろ」

Burning Through The Night”(Roxanne)では、ダメらしい。

ちなみに、【HONEY★TRIP】には新女以外のメンバーとして、

《渡辺 智美》(激闘龍)
〈南奈 るい〉(東京女子プロレス)

の名前も挙がった。
この中でも、南奈の名前は意外なものだったといえる。
ほぼ全面外交な激闘龍と異なり、新日本女子と東京女子はライバル関係にある。

「まぁ、ええんちゃう? 可愛いは正義やし~」

という藤島のざっくり感のおかげであろうか。

「この子、日向。同じ新人やし、仲良うしたってね~」
「……っ、どうも」

藤島に紹介され、南奈に挨拶。

「は~い、よろしくね、ヒナちゃん!」
「は、はい……」

にっこり明るい笑顔で握手してくる南奈。
どうも、こちらの方がずっとアイドル向きのようだった。

▼日本 東京都新宿区 新宿FATE

新日本女子の若手中心の興行、“Angel Pit”。
小規模会場ながら、未来のスター候補を見ようと客席の熱気はただならないものがある。
そのメインイベントは、

<メインイベント 30分一本勝負>

 《ウィッチ美沙》 & 〈シャイニー日向〉 with《藤島 瞳》
 VS
 《小縞 聡美》 & 《榎本 綾》 with《キューティ金井》

藤島と金井がそれぞれセコンドについての一戦。
《天神 美沙》あらためウィッチ美沙は日向のルームメイトだが、おせじにも折り合いがいいとは言えぬ。

「フ~ン、期待のチョ~新星さんは、リングに上がるにも付き添いが必要なのですか~?」
「……っ」
「ま、そういうことやんね。なんなら、美沙っぺの面倒も見てあげるけど?」
「願い下げなのです。美沙は“自分の力”だけで上に行くのです。プッシュされまくりの誰かさんとは違うのですっ」
「く……っ」

返す言葉もない日向であるが、いざゴングが鳴れば、雑念は失せる。

「でやぁっ!!」

先輩たち相手にも物怖じしない、バチバチしたファイトを見せていく。
いわゆるストロングスタイル志向の戦法。
が、藤島からはさっそく容赦ないダメ出しが入る。

「あかんわ。全然美しくないな~~」
「その格好でそんなプロレスやってもしゃ~ないやん?」
「ガチガチいくのもええけど、もっとお客さんの目を気にせんといかんよ」

(……っ、そんなこと、言われてもっ)

「余所見してないで、試合に集中するのですっ」
「っ、は、はいっ!」

そっけない美沙であるが、意外とスムーズに連携をこなしてみせる。
小縞に決めた、日向のDDTからの美沙のノーザンライトスープレックスへの流れるような攻めが最大の勝機だったか。

「へ~、やるやん美沙っぺ。悪いこと言わんから、うちらと組んだら~?」
「ハァ、ハァ、そんな、口車には……あいった!?」

油断テキメン、小縞のラリアットからの脇固めに、あえなく屈した。

 ×美沙 vs 小縞○(12分25秒:脇固め)

「まだまだあかんね~。道場で絞り直しやね」
「……っ、よろしく、お願いします」

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明 “Panther Gym”道場

いっぽう、日向は有明道場にもたまに顔を出している。
といっても、正直、敷居が高いのだったが。

「あら、日向。今日もサボりに来たわけ~?」
「そんなわけないじゃないっ」

彼女の母、《高崎 月美》。
かつて新女において、《LUNA》というリングネームで活躍した彼女だが、現在は引退して専業主婦。
後輩で遠縁でもある理沙子の要請で、ちょっとしたコーチ役を買って出ているというわけ。

「ふふ、こちらの稽古の方がキツいんじゃありませんか?」

これは《ミミ吉原》。新女の鬼コーチだが、最近はこちらに足を運んでいることも多い。
やはり理沙子の手伝い、ということだったが……
何かキナ臭い気がするのは、新日本女子ならではであろうか。

そんなある日のこと……

「日向! ちょっと来て頂戴」
「えっ? あっ、はい」

練習中、ふいに理沙子に呼ばれた。
行ってみると、見知らぬ覆面姿の女、そして、

「あ、日向ちゃん?」
「あっ……咲恵さん!」

堀咲恵――《テディキャット堀》。
もと新女のレスラーで、理沙子の後輩にあたる。
日向とは以前から面識があった。
現在は、《ブレード上原》すなわち、上原今日子の下で活動しているはずだったが……

「あのっ……今日子さんは?」
「……っ、うん、大丈夫。すぐ、退院出来るから」
「そう……ですか」

上原が、練習中に負傷、入院を余儀なくされたと言う話は、聞いていた。
今日子とは子供の頃、よく遊んで貰ったりしたものだけど……

「高崎日向。私の――そうね、後継者候補って所かしら」

覆面の女に、ざっくりとした紹介をする理沙子。

「ちょっ!? 理沙子さんっ!!」

日向の抗議にかまわず、

「この子と、手合わせして貰おうかしら」
「…………」
「え? ええっ?」

良く分からぬままに、日向は、謎の怪覆面〈イレス神威〉とスパーリングする羽目になった。

 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
 VS
 〈イレス神威〉(太平洋女子プロレス)

「でやああああっ!!」
「ウッグ……ッ!?」

イレスの豪快なダイビングショルダーが決まり、日向がのけぞった。

「――そこまで」

理沙子の冷静な声に、イレスは追撃を踏み止まった。

「もういいわ、日向。お疲れさま」
「く…………っ」

その場では、彼女の正体は定かでなかったが……
じきに、いやがうえにも明らかになったのである。

その舞台は、【Panther Gym】、旗揚げ戦!

▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明

 ― Panther Gym 旗揚げ戦 “Law of the Jungle”―

(第0試合)<ダークマッチ:ハルク本郷プレデビュー戦>:15分一本勝負

 《ハルク本郷》(Panther Gym)
 VS
 〈ブラッディ・マリー〉(プロレスリング・ネオ)

※入場曲、選手紹介などもないダークマッチ。
 本郷はこれが実質的なデビュー戦。
 Panther Gymの理念を見せ付けての勝利が義務だ。

(第1試合)<オープニングマッチ:30分一本勝負>

 《佐久間 理沙子》(Panther Gym)&〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
 VS
 〈イレス神威〉(太平洋女子プロレス)&〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)

※理沙子、本名で登場。初心を思い出す一戦。
 パートナーには“次代の大物”日向を抜擢した。
 対するは、《ブレード上原》を血祭りに上げた“地獄仮面”イレス神威と、村上姉妹らを追放し、ヒールユニット【夜叉紅蓮】をわがものにした極悪レスラー・鏑木からなる外道コンビ。
 理沙子&日向は怪人チームを退治して、団体の船出を飾ることが出来るであろうか?

(第2試合)
 《奥村 美里》&《小松 香奈子》(Panther Gym)
 VS
 《霧島 レイラ》&《楠木 悠里》(プロレスリング・ネオ)

※若手コンビが外敵を迎え撃つ。

(第3試合)
 《Judgment-ONE》&《Judgment-ZERO》(ジャッジメント・セブン)
 VS
 《ドルフィン早瀬》&《森嶋 亜里沙》(プロレスリング・ネオ)

※J7軍が外敵に胸を貸す一戦。

(第4試合)
 《後野 まつり》&《庄司 由美》&《村上 千春》(Panther Gym)
 VS
 《神田 幸子》&《Judgment-NARU》&《村上 千秋》(ジャッジメント・セブン)

※若手トリオがJ7軍と対峙する。

(第5試合)
 《キューティ金井》&《小縞 聡美》&《榎本 綾》(新日本女子プロレス)
 VS
 《藤島 瞳》&《ストロベリー香澄》&《サキュバス真鍋》(新日本女子プロレス)

※アイドルユニット【HONEY★TRIP】が【みるきぃ☆れもん】と対決。

(第6試合)
 《沢登 真美》(Panther Gym)
 VS
 《菊池 理宇》(新日本女子プロレス)

※ジュニア王者・菊池が沢登の挑戦を受ける。

(第7試合)
 《佐尾山 幸音鈴》&《マスクド・ミステリィ》(ジャッジメント・セブン)
 VS
 《テディキャット堀》(太平洋女子プロレス)&《永原 ちづる》(新日本女子プロレス)

(第8試合)
 《南 利美》(JWI)&《山田 遙》(フリー)
 VS
 《マッキー上戸》&《ラッキー内田》(新日本女子プロレス)

※アジアタッグ王者に挑むのは、南&山田の危険な狼コンビ。

(第9試合)
 《パンサー理沙子》(Panther Gym)&《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 VS
 《越後 しのぶ》&《斉藤 彰子》(ジャッジメント・セブン)

※新旧アジアヘビー王者が、J7のツートップと対峙する。

上原を負傷させたのは、他ならぬイレスであった。

(今日子さんの、仇……!)

もとより、そのパートナーとも因縁浅からぬものがある。

「アイドルレスラー転向たァお利巧なことで――弱くったってご声援を頂戴出来るんですからなァ」
「わ、私だって……好きでこんな格好してるわけじゃッ!!」

意地のぶつけ合いで、見せ場は作った日向とかがりだったが……
若手時代のコスチュームや入場曲で登場した理沙子、勝ちにこだわり気迫を見せ付けたイレスに引っ張られた試合だったのはいなめない。

試合は、イレスが日向をフォール。
リベンジとはならなかった。

 ×日向 vs イレス○(19分41秒:ダイビングショルダー)

この因縁が、点に終らず線となってつながっていくのかどうか……
それは誰にも分からない。

そして、新女九州巡業。
大分では、日向に取ってきわめてハードなカードが組まれた。
すなわち、

▼日本 大分県 別府ビーコンホール

<セミファイナル 45分一本勝負>

《マイティ祐希子》 & 《菊池 理宇》 & 〈シャイニー日向〉
 VS
《大空 みぎり》 & 《近藤 真琴》 & 《大空 ひだり》

シリーズ最終戦の九州ドーム大会における、祐希子vsみぎりの“ダブル・クラウン”王座戦の前哨戦。
何と言っても、日向にとっては、ジュニア王者・菊池と組むのだけでも十分にプレッシャーなのに、

(祐希子さんと、なんて……っ)

先日、新女の道場に現れた際は、スパー相手を買って出た鏑木をドロップキック一発で失神させたと聞く。

(……っ、あの人も、頑丈さだけは凄いのに)

祐希子の力、もって思うべしと言うほかない。

「お手並み見せて貰うわよ、理沙子さんの愛弟子サン?」
「……っ、はい……っ」

もっとも、この試合のメインは、なんといっても祐希子vsみぎり。
とりわけ、大空姉妹はそろって祐希子を狙い撃ちにしてきた。
ことに祐希子の命とも言うべきスピードを殺すべく、下半身を主に攻め、足腰にダメージを与えていったのである。
ひだりの怪力、みぎりの暴虐っぷり、加えて近藤のキレのある打撃で集中攻撃されては、さしものチャンピオンもただではすまぬ。

「好き勝手には……やらせないっ!」
「うふふ~、まだまだ……って、あれええぇ~~~?」

 ○日向 vs ひだり×(26分29秒:ジャーマンスープレックス)

最後は日向の人間橋にひだりが沈んだが、試合後、祐希子は一人で帰れず、菊池たちに肩を借りるありさま。
誰もが、王座防衛に黄信号――と確信した一幕であった。

そして、シリーズ最終戦のドーム大会。
ここでは、【HONEY★TRIP】と【みるきぃ☆れもん】の全面対決が行われた。

▼日本 福岡県福岡市中央区 九州ドーム

<6人タッグマッチ 60分三本勝負>

【HONEY★TRIP】
 《藤島 瞳》&《ストロベリー香澄》&〈シャイニー日向〉
 VS
【みるきぃ☆れもん】
 《キューティ金井》&《小縞 聡美》&《榎本 綾》

*一本目はダンス、ニ本目は歌、三本目はプロレスで決着がつけられる。
*なお、三本目を取ったチームが勝ちとなり、CDデビューが認められる。

「……って、一本目とニ本目、意味なくないですか」
「ええやん。そういうもんなんよ」

ちなみに、真鍋はアンダーカードに出場している。

<夜叉紅蓮残党・共食い4WAYマッチ 30分一本勝負>

 《村上 千春》vs《村上 千秋》vs《サキュバス真鍋》vs〈フランケン鏑木〉

*敗者は新女を追放される

「って、なんであたしはこんなカードなのー!」

と真鍋がブツクサ言い出すのも道理であろう。

(鏑木、かがり――)

ヒールユニット【夜叉紅蓮】が、リーダー・《八島 静香》の欠場以来、バラバラになっていったのは知っていたが……
こんなエゲつないカードと、アイドル対決が同じ興行に組み込まれているのは、天下広しと言えども新女のみであろう。

このサバイバル戦のゆくえがどうなったかは、鏑木かがりの物語に譲るとして……

日向たちの試合の行方はと言えば。

まず一本目の歌対決。
これは、歌唱力に定評のある金井と榎本を要する【みるきぃ☆れもん】が圧勝した。

続くダンス対決。
これはぶっちゃけどちらもどっこいな出来であったが、榎本がミスを連発したので、消去法で【HONEY★TRIP】。

結局は、三本目のプロレス対決で決着をつけることになった。
ここでは、ダンス対決のミスを取り返さんものと榎本が大ハッスル、遂には日向からギブアップを奪ったのである。

 ○榎本 vs 日向×(15分5秒:コブラツイスト)

かくして、アイドルユニット対決第一ラウンドは、みるきぃ軍に軍配が上がった。
どっこいしかし、HONEY軍も黙って引き下がりはしない。

『こうなったら、うちらの実力見せたるわ! T・C・G! “Top of the Cruiser Girls”!
 うちらが出場して、賞金500万円、バッチリいただいてきます~~!!』

藤島の宣言により、香澄&日向のTCG挑戦が始まったのである。

その後のメインイベントにも、触れておく必要があるであろう。

<メインイベント NJWP・IWWF認定無差別級タイトルマッチ 60分一本勝負>

 〔王者〕
 《マイティ祐希子》(新日本女子プロレス)
 VS
 〔挑戦者〕
 《大空 みぎり》(寿千歌軍団)

前哨戦において、祐希子はみぎりやその妹〈大空 ひだり〉の集中砲火を浴び、大きなダメージを負っていた。
痛々しいテーピング姿で入場してきた祐希子の姿を見た観客のみならず、日向ら新女勢の脳裏にも、V12ならず、王座陥落――そんな可能性がよぎった。
だが、この祐希子vsみぎり戦は、予想外の結末となったのである。

「ごめ~ん。……長くは持たないから、“早食い”で行くわ」
「……!?」

ゴング早々、手負いのはずの祐希子が“翔んだ”。
その場飛びの“超高層”ドロップキックが、みぎりの顔面に炸裂――

「~~~~~ッッ!!」

思わぬ奇襲に、思わずうずくまったみぎりに、祐希子の容赦ないサッカーボールキックが追い討ちをかける。
そのまま手をゆるめず、殴る、蹴るの一方的な猛ラッシュ。
それはもはや、プロレスの“範疇”を超えた、暴力、そのものであったかも知れない。

普段ならば、一流の“受け”を披露し、風車の理論で一進一退の攻防を魅せ、その上で勝利する祐希子。
が、怪我の影響で、それは難しい――ゆえに、非情の速攻ケンカマッチを仕掛けたのだ。

「ひぃ……ひぃぃ、ひいぃぃぃぃ……」

悲痛に泣き叫ぶみぎりをギリギリと絞り上げ、最後は片逆エビで非情のギブアップ勝利。
勝ち名乗りを受けた祐希子に笑顔がなかったのは、およそ納得のいかぬ内容であったためであろうか。

 ○祐希子 vs みぎり×(9分30秒:片逆エビ固め)

(……っ、こんな……非情な……)

思わず、怖気が走るような、凄絶な試合。
これもまた、新女ならではの風景となるのであろうか……

なお、この大会後、祐希子は負傷を理由に王座を返上、“ダブル・クラウン”は空位に。
王座決定戦は、次回のメガイベント・『Athena Exclamation X』にて行われることになった。

ちなみに、負傷欠場となった祐希子だが、その後、映画出演などは普通にこなしていたため、

――あのケガは、フェイクではないか。

という噂も聞かれた。
つまり、映画出演のため欠場……では聞こえが悪いので、負傷したというテイにした、というのだ。
短時間での決着も、全ては計算どおりというわけ。
もとより、虚実のほどは定かでない……が、仮に事実だとすれば、新女らしいにも程のある話であろう。
何しろ、この試合で無残に心をヘシ折られたみぎりが、プロレスへの恐怖を訴え、実家に帰ってしまったのは事実なのだから。

2012年06月04日

『天使轟臨』 サイドストーリー 月下の追想

「さあ、本日のメインイベント、特別試合、タッグマッチ60分一本勝負もいよいよ大詰めです! 試合序盤から試合を優位に進めていたドラゴン藤子とLUNAのコンビ、一時は外国人チームの逆襲に会う場面も見られましたが連携で切り抜け試合の流れをつかんでいます。さあ、そろそろフィニッシュに向かうか!?」
「おおっと、LUNAがコーナーに上ります! 観客へ投げキッスを飛ばし、出たー! ムーンサルトプレス! カットには、藤子がいかせない! カウント、スリー! 決まったー! 本日のメインイベント、決めたのはLUNA!」
「みなさんご存知の通り、オリオン高崎選手と結婚・出産し、一時は引退も噂されていたLUNA選手ですが、復帰後もブランクを感じさせないファイトで『月光の麗人』健在を見せてくれています。若手の成長も著しい新女ですが、まだまだその華麗な戦いぶりは追随を許しません。今後の活躍にも期待がかかります!」
「おお、リングサイドには若手の佐久間選手に連れられたLUNA選手のお嬢さん・日向ちゃんの姿も見られます。LUNA選手、日向ちゃんを抱きかかえて笑顔を見せます。オリオン高崎選手とLUNA選手の娘さんですから、将来は親娘2代でプロレスラーということもあるかもしれませんね」
「それでは、興奮冷めやらぬ後楽園プラザからお別れします。本日の実況はファウルチップ服沢がお届けしました」

               ◇       ◇       ◇

「ママ、かっこよかったおー」
「ふふ、ありがと。日向が応援してくれたおかげよ。それじゃひなた、ママは着替えるから今日子ちゃんと待っててくれる?」
「うん、わかったおー。きょーこちゃん、いこー」
「今日子ちゃん、悪いけどお願いね。理沙子は着替え手伝ってくれる?」
「はい」「わかりました」

「……日向と今日子ちゃん、行った?」
「ええ」
「そっか。あいたたたたた……!」
「月美さん! 大丈夫ですか!?」
「だいじょぶだいじょぶ、と言いたいけど、ちょっとキツイわ~。やっぱ最後のがやばかったわねえ」
「膝がそんな状態なのに。せめてムーンサルトなんか止めていれば」
「ムトーさんやコバシさんだってやってるじゃない。あの人達に比べればまだあたしの膝なんてマシよ?」
「それはあの人達と比べればそうでしょうけども」
「メインだったしクイックで終われる感じなかったしね~。お客さんの期待に応えてこそプロ、ってあいたた…。理沙子、悪いけどテーピングお願い。あんまり今日子ちゃん待たせても悪いからね」

               ◇       ◇       ◇

「……月美さん、そろそろいいんじゃないですか」
「ん、何が?」
「わかってるはずです」
「ん~? ……辞めろってこと?」
「……はい」
「あらあら、エラくなったもんねぇ~、佐久間選手。そーゆーナマイキな口は藤子からベルト獲ってからいいなさいな。まだまだあんたや今日子ちゃんに新女は任せらんないわね」
「ベルトは必ず獲ります。新女だって守ってみせます。だから、そんな身体で無理しないでください!」
「何? あんたから見てLUNAの試合は見てらんないほど酷かった?」
「そんな、そんなことありません。それどころか膝がそんな状態なんて、信じられないくらいでした」
「でしょ? だから大丈夫だって」
「それでも、このまま続けていれば必ず限界が来ます。そのときに大怪我でもしたら、星司さんも日向ちゃんも悲しみます」
「それはレスラーの奥さんに言うことじゃないわね。ま、星司さんにも遠まわしに言われたんだけどね」
「それでなんて?」
「『あなたが私の立場だったら止めてる?』って言ったら黙っちゃったわ。あの人も大概プロレスバカよねえ。そこがいいんだけど♪」
「…………」
「もう、そんな顔しないの。わかってるって。私だって動けなくなったらすっぱりと止めるつもり。お客さんにボロボロの姿を見せてもいいキャラじゃないしね」
「わかりません。プロレスが好きだから、ってだけじゃないですよね。どうして、そこまで現役にこだわるんですか」
「ん~……。正直さ、日向を産むまでは辞めるつもりだったのよ。あたしとしてもレスラーとしてやれることはやったって満足感はあったし。藤子がいて、あんたや今日子ちゃんがいれば新女の心配はいらないしね。
 でもね、生まれてきたあの子の顔見たらさ、リングに立ってるあたしの姿を見せたくなったの。
 あたしはさ、プロレスっていう自分が一番輝ける場所で精一杯やってきたつもり。だから、そういう自分にふさわしい場所で一生懸命生きていけるってことはすごく幸せなことなんだってことを伝えたいの。
 別に日向にレスラーになってほしいっていうんじゃないよ。あの子の人生だもん。好きに生きればいい。でもね、あの子がどんな道を選ぶにしても、リングに立つあたしの姿を覚えてれば、そういう生き方を選んでくれるんじゃないかなって思うの。
 だからさ、身体が動く限りは、あたしのプロレスをあの子に見せ続けたいのよ」
「日向ちゃんのため、ってことですか」
「ただの自己満足かもしれないけどね」
「…………。そこまでおっしゃるのなら、私からはもう何も言いません。でも、本当にダメなときは無理矢理にでも止めますからね」
「あら怖い。わかってるってば。そのためにもさっきの台詞、ちゃんと実現しておねーさんを安心させて頂戴な」
「はい。必ず!」

-------------------------------------------------------------------------------------------------

「そういえば、そんなこともあったわね~。あの頃のあんたは可愛かったのに、いつの間にこんな色々企む悪いおねーさんになっちゃったのよ」
「もう、誰のせいですか。少なくともこういう性格になった一端はあなたが担ってますよ」
「わかってるってば。……それにしても、結局、あの子の中にちょっとは何か残せたのかしらね?」
「ふふ、大丈夫。ちゃんと伝わってますよ。本人はまだ気づいてないみたいですけどね」
「そうだといいんだけどね~。ま、リングの女王のお墨付きを信じますか」