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2010年03月13日

アニメ版『大正野球娘。』について

放送終了から約半年、今更感もありますが、BD&DVDシリーズのリリースも終わったことだし、アニメ『大正野球娘。』について語っておこう。

アニメ化の話を知った時は目を疑った。
私は原作を読んでたし、気に入ってはいたけど、客観的に見れば欠点も多く、ぶっちゃけ万人にオススメできるとは言い難い作品だった。
徳間ノベルスEdgeというマイナーレーベルで、特に人気があるという話も売れてるという話も聞こえない。CDドラマ化やコミック化でさえ十分ビックリだったのにまさかのアニメ化。いくらアニメ業界が原作不足とはいえ、他にやるべきものがいくらでもあるだろうと。
しかも普通の野球ものならともかく、舞台が大正時代。
野球の描写だけでもアニメでやるとなるとなかなか難しいというのに、更に大正時代の時代考証までできるのかというのも大きな疑問だった。
そんなわけでアニメ開始前は不安7期待3といった感じで、どうせダメならばネタになるくらいの駄作になった方がおもしろいなーなどと不謹慎なことも考えていた(悲しい自己防衛だな…)。
原作が好きだった私でもそうなんだから、放送前に期待してたのって池端監督のファンくらいだったんじゃなかろうか。
まあ、そんな私の不安は見事に覆されたわけですが。

女性を蔑視する許嫁を見返すために、晶子が小梅と仲間を集めて男子との試合に挑む、という基本の部分は変わらないものの、ストーリーは大きく改変されている。
何よりアニメで大きかったのは、地に足をつけた野球ものとして原作を再構成したところ。
原作小説の大きな欠点は野球の部分がいい加減なこと。作者自身野球に詳しくない事を認めているけど、野球の描写より食事の描写の方が力が入っている始末。試合内容や展開は野球好きにとってはなかなか厳しいものがあった。
また、原作では金属バットやスパイクなど未来の技術を使ったり、乃枝の発明品による特訓で男子に対抗する。これは作品の魅力でもあるんだけど、“トンデモ”として受け入れられない層も少なからずいた模様。
アニメ版ではそれらのトンデモ要素をほぼすべてカット。基本的に地道な練習で男子に対抗していくことになる。

最初は野球のルールも知らなかった少女たちが、道具を集め、練習を重ねてだんだん上達していく様子を丹念に描いている。
野球の動きを上手く描いているアニメは他にもあるけれど、手だけで投げるいわゆる女の子投げや、腕だけでバットを振る姿など素人の女子の動きをあそこまでうまくアニメで再現している作品は過去に無いんじゃないかと思う。
もちろん、上達した後の動きの描写も見事で、練習や試合をじっくり描いてきたことによって少女たちの成長が実感できる。女の子投げでボコボコ打たれていた晶子さんが、サイドスローの美しいフォームで男子を抑えるようになるのはかなり感動させられる。

キャラクターの設定や性格が一部改変されているが、これも上手くいっている。
晶子がすぐブチ切れる小物キャラになっていたり、巴がアホの子になっていたりするけど、今となっては原作よりもアニメの方が親しみが湧く。
原作ではほとんど存在感の無かった下級生コンビも、胡蝶は陸上部に所属している設定になったり、鏡子はクソレフト化&第10話の大暴走したりとそ見せ場も増えた。
また、アニメのオリジナルキャラクターの尾張記子も、変にでしゃばることも無く、桜花会を陰から支えるポジションとしてしっかり活躍。これだけ違和感無く作品に溶け込むオリキャラっていうのも珍しい気がする。

原作のウリのひとつは大正時代の文化・風物や食事の描写が細かいところだけど、これはアニメ版にも受け継がれている。
放送前、キャラクターイラストでセーラー服のスカート丈が短いのを見て、設定考証をまともにやるつもりはないんだと思い込んでたんだけど、それは私の間違い。実は大正の頃はセーラー服のスカート丈はかなり短く、長くなったのは昭和に入ってからとのこと。
このような例はほかにもたくさんあって、2chの『大正野球娘。』スレでは「大正時代に××なんてあるわけないじゃん」→調べてみたらちゃんとあった、というようなやり取りが放送中は毎週繰り広げられていました。
設定考証については大正野球娘。 まとめwikiが非常に詳しい。アニメと一緒にこちらを見るといっぱしの大正通になった気分になれます。

私が女子野球萌えの人だという事を差っ引いても、近年珍しい、誠実に作られた良作アニメだと思います。
なかなかBD/DVDを全部購入するのは難しいとは思うのだけど、マイナーアニメとして埋もれさせるのは勿体無い作品なので少しでも多くの人に観てほしい。
なんと今年4月からディズニーチャンネルでの再放送が決まったとの事なので、CSを観られる人はそちらで観てもいいかも。
池端監督を始め、作品に関わったすべてのスタッフ・キャストに賛辞と感謝を。



あ、忘れてたので一応追記。
PSP用ゲーム『大正野球娘。~乙女達乃青春日記~』はクソつまんねーのでやらない方がいいです。値段も下がりまくってるので酔狂で買ってもいいかもしれんけど。

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コメント

>ああくさん

書き込みありがとうございます!
『大正野球娘。』の良さを分かってくれている同士の方からの書きこみ、嬉しいです。
私も2クールとか2期とかは要らないですけど、OVAとかTBS得意の特別編とかでまた観てみたいですねー。

いつも見てもらっていたとの事。また何かあったら遠慮なく書きこんで下さいませ。

こんばんは。このブログはいつも楽しく拝見してますがコメントは初めてします。
私もこの作品はよく出来ていたと思います。大正末期を舞台にして大正野球娘。という題名は昭和に移るまでの僅かな間の少女達の青春を想起させました。桜花会の名の通り、青春を謳歌する少女達を可愛らしく、面白おかしく描けていましたね。
色んな人の意見で「最初は期待していなかったけど」ってのをよく見かけるんですが、その最初で切った人が多かったのかなと思うと残念です。
「2クール欲しかった」という意見もよく見かけますが、これは不満というよりも、魅力的なキャラクター、世界観に少しでも長くひたっていたかったという表れだと思います。
記子は確かに、でしゃばらず、空気にもならず良かったと思います。キャラクターそれぞれのさじ加減は絶妙でした。
それと、女子野球好きで様々な女子野球作品を見て、目が肥えている方が言うからこそ説得力があると思ってますよ。
二期は無くても良いぐらい綺麗な終わり方でしたが、このスタッフでたこ焼き勝負をやったらどうなるか興味はあります。
ではこの場を借りてスタッフ、キャストに感謝しつつ失礼します。

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