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2008年09月09日

『大正野球娘。 ~土と埃にまみれます~』

例によって遅ればせながら、『大正野球娘。 ~土と埃にまみれます~』の感想をば。

大正野球娘。―土と埃にまみれます (TOKUMA NOVELS Edge)大正野球娘。―土と埃にまみれます (TOKUMA NOVELS Edge)
神楽坂 淳


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前巻の感想はこちら
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前巻の発売は昨年の3月。夏に続刊予定だったはずが気がつけば徳間の新刊予定からも無くなってました。昨年末CDドラマが発売されたのでそのうち続きは出るだろうと思っていたけれど、本来の予定より1年遅れてようやく発売。
何はともあれ、続きがちゃんと発売されただけでも喜ばしい。

前巻での様々な特訓を経て、ついに乙女の意地を賭けた男子との試合が開始。
前作から予想するにそれほど試合シーンは多くならないかと思っていたけど、かなりの部分を試合の描写に割かれていたのは意外と言えば意外。
体力では圧倒的に男子に劣る少女達が、金属バットやスパイクなど当時存在しなかった道具に加えて、指揮官・乃枝の発案によるドラッグバントや外野シフト、お嬢の投げる魔球・へろへろ球(無回転系の変化球)などやはり当時は誰も知らなかったであろう戦術・技術を駆使することによって男子と互角の戦いを繰り広げていく。

前巻同様、タイムマシン的方法で男子に勝とうとする発想は良いのだけど、純粋に野球ものとしてみるとやっぱり甘いか。これが一色銀河さん辺りならばマニアを唸らせる奇策でもっと勝負するだろう。結果、男子と互角に戦うために巴の超人っぷりに頼らざるを得なくなっている。
ただまあ、『若草野球部狂想曲』の光児や亜紀みたいなキャラはどう考えてもこの作品に出番は無いだろうし、あまり本格的な野球描写は作品の雰囲気に合わないので、これくらいの塩梅がいいのかもしれない。
巴が目隠しをして打席に立つのはさすがに無茶だと思う人も多いだろうけど、あれは五味康祐の『一刀斎は背番号6』のオマージュだと思うのだが、どうか?
まったくの余談だけど、私が『一刀斎は背番号6』を読んだことが無いのに内容を知っているのは、女子野球小説の名作『赤毛のサウスポー』の解説からだったりします。なんという女子野球つながり。

個性豊かな大正時代のお嬢さん達がやはり今作の魅力。
小梅とお嬢のバッテリーの絆は百合好きならずとも気持ち良い。試合前日の二人のベッドシーンは今作屈指の名場面だと思います。
メインヒロインで親友同士の小梅とお嬢の両方に許嫁がいて、それぞれがお互いの許嫁との関係を築いていく物語でもあるというのも興味深いところ。

メインキャラ以外でもっとも活躍していたのは乃枝。試合の作戦面での活躍はもちろん、男子とのランデヴーで見せる普段とのギャップが可愛い。
雪のぱやぱやした熱血ぶりや静のシスコン&ツンデレなど、他のキャラクターも見せ場自体は少ないながらそれぞれに魅力を発揮してます。
また、敵役たる男子にもなかなか良い少年たちが揃っています。作中のイラストに出ていた男性キャラは小梅の許嫁の三郎だけだけど、イラスト担当の小池定路さんのブログには他の男子キャラや小梅の両親などのデザインが公開されているのでご覧ください。→小池定路の覚え書き | 大正野球少年ズ

前巻同様、心地よい読後感を与えてくれる良作だと思います。
またひとつお気に入りの女子野球作品が増えました。



あと、やっぱりこれは触れておかないとなあ…。
月刊COMICリュウでのコミック連載に続いて、なんとTVアニメ化が決定!
CDドラマでも十分ビックリだったんだけど、まさかTVアニメ化とは予想だにしませんでした。
……いや、俺が言うのもなんだけど、アニメ化するほどの作品じゃないだろ、どう考えても。徳間の社長は女子野球好きとかなのか、もしかして?
何はともあれ、『プリンセスナイン』から数えて10年ぶりの女子野球もののアニメ化、注目せざるを得ません。今から不安と期待でわくわくして待ってます。

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