『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』
今更ながら、ネット上でも評価の高い高木徹・著『「バレンタイン流マネジメント」の逆襲』を読んだ。
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NHKの『クローズアップ現代』のために行ったマリーンズとボビーについての取材をもとに、ボビー・バレンタインという「マネージャー」の真の姿に迫っている。
本来、昨年の春に出版されるはずだったのが事情により半年ほど遅れてしまったという。だが、そのお陰で昨年のマリーンズの不振について分析することができ、ボビー礼賛に終わることなく、ボビー・バレンタインの指揮官としての問題点(もしかしたら限界)にも触れることができている。
私もボビーがファンや選手の前で見せるような「テンションの高い陽気なアメリカ人」というだけではないことはわかっていたつもりだったが、ボビー・バレンタインという人間は私が思っていた以上に鋭利で冷徹な人物だった。
本書を読んで、ボビーに対する認識を改めた人も多いと思う。彼はただ単なる野球の監督という存在ではなく、チームという組織を経営する「マネージャー」なのである。
「バレンタイン流マネジメント」の凄さと問題点については多くの鴎系ブロガーの方々も触れているし、ぜひ本書を読んでもらうとして、私がここで触れるのは「enjoy」ということについて。
ボビーはよく選手にプレイを「楽しめ」と言っている。
私も意外と古臭い日本の精神論的思考をしていたらしく、ボビーのこの言葉に違和感を抱いていたのだが、ボビーの言う「enjoy」とは我々がイメージする「楽しむ」とは大きく異なっていた。
ボビーの言う「enjoy」というものは、選手が、結果を恐れたりせず、自身の持てる最高の力を発揮するときに心から湧き上がる喜びや充足感を表しているのである。
いわゆる無我の境地に近いのだろう。これは実際はやろうと思ってもなかなか容易なことではない。昨シーズン、特に後半のマリーンズの不振は、プレイを「enjoy」することができなかったことも大きいのだろう。
この本を読んで今期のマリーンズについて更に興味が増した。
今までのようにマリーンズとマリーンズの選手を応援するだけでなく、卓越した手腕を持つボビー・バレンタインが、昨年の失敗を元にどのようにマリーンズを「マネジメント」していくのかにも注目していきたい。
マリーンズファンはもちろん、多くの野球ファンにもぜひ読んでもらいたい良著である。