PRO-WRESTLING NOAH Summer Navigation'06 最終戦 日本武道館大会 観戦記
もう武道館から1週間経っちゃいましたが(日付は試合のあった日にしてます)、それは悩惚堂クオリティっつーことで。
今まで観戦記は悩惚堂本舗の方にアップしてたんですが、今回からこっちの方にアップすることにしました。どんどん本家ページの意味がなくなってきますが…。
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“プロレス界の帝王”“ノーフィアー”高山善廣が2年ぶりにリングに帰ってくる。
その隣に立つのは、高山の最高のライバルである小橋建太のはずだったが、小橋は腎腫瘍のため欠場。小橋の代役としてリングに立つのは、昨年、小橋と名勝負を繰り広げ、高山とも因縁浅からぬ佐々木健介。
二人を迎え撃つのはGHCヘビー級王者・秋山準と“ノアの盟主”三沢光晴。最高のレスラーによる最高のカードが高山の復帰戦として用意された。
更にセミファイナルでは、ノアの未来を背負って立つであろう4人によるタッグマッチ、力皇 猛・森嶋猛 vs 丸藤正道・KENTAのカードが組まれた。
他にも、鈴木みのるvs潮崎豪のシングルマッチやムシキング・テリー復帰戦など、注目カードがマッチメイクされた。
マリンスタジアムにも行きたいし、久しぶりに武道館にも行きたいと思っていたが、小橋の欠場が決まったことで上京・観戦を決意。
だって、自分がいない武道館大会が盛り上がらなかったなんて知ったら、小橋が大人しくしていられるわけないからね。
そういえば、小橋のいないプロレスの興行を生観戦するのって、今回が初めてになるのか。全日・ノアしか生観戦した事ないからな。
武道館でのプロレス観戦は6年ぶりになる。
ちなみに前に行ったのは2000年6月9日。私の生涯初のプロレス生観戦であり、三沢、小橋ら今のノアの主力選手が全日本プロレス所属としてリングに上がった最後の武道館大会であった。
今にして思うと、あの大会はすごいカードだった。金丸vs小林健太(現・KENTA)、森嶋vsハンセン(!)なんて今や垂涎モノのシングル戦があったし、世界タッグ王者決定トーナメントでノーフィアー(大森・高山)がアンタッチャブル(三沢・小川)を初撃破したし(実は菅谷アナとノーフィアーの初遭遇だったりする)、セミの特別試合は小橋・志賀vs秋山・モスマン(現・太陽ケア)は小橋の後の絶対王者の片鱗が見えたし秋山サンがまだツンデレだったし志賀が志賀だったし、トーナメント決勝戦、大森・高山vs川田・田上は負傷した田上が戦線離脱する中で川田が孤軍奮闘、復活した田上火山大噴火という凄まじい試合だった。あと、ジャンボの追悼10カウント…。
うーん、当時はこんなにプロレスファンになるとは思ってもみなかったよなあ。
パンフとバーニングTシャツ、ウチワを購入。
席は2階スタンドS席。距離的には大分離れているが、武道館は見やすい会場だし、持ってきたオペラグラスのお陰で快適に観戦できた。
午後5時。重厚なノアのテーマとレーザービームが飛び交う中、試合開始。
第1試合 シングルマッチ 30分1本勝負
×百田光雄 vs SUWA○
7分49秒 ラリアット→片エビ固め
チャラリ~♪
いきなり必殺仕事人のイントロ&ピンクタイツで入場のSUWA。さすがやねえ。
訳のわかっていない永源営業部長を無理矢理セコンドにつけて試合開始。
試合は実力差がありすぎ、あっさりSUWAの勝利で終わったが、この試合のクライマックスは試合後だった。
試合後も百田さんを嬲るSUWA、止めに入ったマイティさんも吹き飛ばす。更にロープに走って止めを刺そうとしたところ、永源さんが足を掴んで転ばす。そして百田さんとマイティさんがダブルのブレンバスター! ジジイ3人が手を上げ、場内大歓声。
SUWAさんお見事! 第1試合の意味を良くわかっている。お陰で場内がしっかり温まった。
ホント、SUWAはプロだよなあ。
第2試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
モハメド ヨネ & ×エル・オリエンタル & 青木篤志 vs 泉田純至 & 菊地毅 & アビスモ・ネグロ○
12分56秒 マルチネス・スペシャル→体固め
第2試合ならまあこんなもん。
前に来日したときは一杯食わせものっぽかったオリエンタルとネグロだったけど、今回は結構良かった。しっかし、ネグロでかっ! ぜってー96kgは嘘だ。
青木はやっぱりいいな。若手の中で頭ひとつ抜け出した感がある。
あと若手を相手にしたときの泉田さんは力強い。やっぱ重さは武器だな。
第3試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
本田多聞 & ○佐野巧真 & 志賀賢太郎 vs 齋藤彰俊 & 井上雅央 & 川畑輝鎮×
15分46秒 北斗ボム→体固め
このメンツじゃある程度ネタ試合になっちゃうのは仕方ないか。
志賀アニキのパンチ劇場や佐野さんの監獄締めネタなどを交えつつ。
いつも全力ファイトの彰俊さんはもちろん、多聞ちゃんも気合入ってました。
佐野さんのダイビングフットスタンプはそろそろ封印すべきかも。自爆の無い飛び技って美しくないよね。
第4試合 タッグマッチ 30分1本勝負
小川良成 & ×太田一平 vs 田上明 & 中嶋勝彦○
15分20秒 原爆固め
この試合はなんと言っても田上。もちろん、悪い意味で。
若い中嶋くんをひとりで戦わせ、自分はずっとコーナー。
ようやくタッチしたかと思えばすぐに中嶋くんにタッチ。場内からも「えええ~!?」の声。
小川サマと中嶋くんの絡み、時間は短かったけどおもしろかった。小川の多彩な脚攻めはさすが。年の割に修羅場をいくつもくぐり抜けている中嶋くんだが、さすがに小川の前では分が悪い。
その中嶋くんに対抗意識を燃やしていた太田だけど、いくら年齢が上でもさすがにまだまだかな。小川直伝の脚攻めやいつもより多く回したエアプレン・スピンなど、頑張ってはいたけどね。
第5試合 ムシキング・テリー 復帰戦 6人タッグマッチ 30分1本勝負
○ムシキング・テリー & エル・アンヘル & 石森太二 vs ムシキング・ジョーカー & チャーリー・マンソン & シコシス×
17分21秒 ミストクラッシュ
そういえば鼓太郎とマルビンはどうしたのだろう? などとお約束のボケはさておき。
ぼくらのヒーロー、ムシキング・テリーの復帰戦。ネプ博士も来てたし、当然主役はテリーのはずだったのだが…。
この試合の主役は、驚異のルチャ・ドール、エル・アンヘル。何なんだヤツは一体…。
緑のマスクと上下の白タイツという微妙な格好で入場してきたかと思ったらなんとオーバーマスク。下のマスクは白でさらに微妙な姿に。ノースリーブの全身タイツみたいな。
こいつが無茶苦茶弱い。体格も小さいし、ロープに振られてもなぜか走らないでよちよち歩いてる。
ところが、ルード3人組にいいようにやられているのに、いくら技を喰らっても効いた様子が無い。受け身が半端じゃないのか、グネグネし過ぎでダメージを吸収してしまうのか…。
会場がどんどんアンヘルに引き込まれていくのがわかる。まるで雅央ワールドか志賀アニキのパンチ空間のような生暖かい歓声がアンヘルに注がれていく。何だったんだ、アレは。
アンヘルがひとりで捕まりまくっていたのでテリーの出番はほとんど無し。田上並みの出番の長さ。
石森クンは今日はなかなか良かった。相手がルチャドールで手があったのだろう。…アンヘルのお陰で動きがよく見えたのかもしれんが。
ルード3人組は連携も含めてかなり良かった。シリーズ開幕戦のディファの試合はかなーりアレだったけど、今回は連携もバッチリ。武道館という大舞台でお客さんのノリが良かったお陰もあってか、ようやくAAAのトップクラスの実力を発揮できたかな。
特にテリー同様久々の登場のジョーカーは気合が入っていたのか、いい動きだった。個人的にはテリー&正義に目覚めたジョーカーでGHCジュニアタッグに挑戦してほしいのだが。
第6試合 シングルマッチ 30分1本勝負
×潮崎 豪 vs 鈴木みのる○
16分46秒 裸絞め ※レフェリーストップ
セミ前のシングル戦という大抜擢に奮起したい豪だったが、みのる相手に何も出来ず完敗。
正直、みのるに感謝したい。よくぞ豪を叩き潰してくれた。
三沢や小橋だと変に受けてあげちゃうので、こういう試合にはならないんだよね。何だかんだ言って秋山も優しいし。ノアでこういう試合をやってくれそうなのって小川くらいだろう。
デビューして2年、怪我による欠場はあったとはいえ、ここまでは順調に来ていた豪だけど、叩き潰されるにはいいタイミングだったと思う。
私も豪のスター性、将来性は高く買っているのだけど、小橋の猿真似とも言えるスタイルが気になっていた。若手が師匠のファイトを模倣するのは当然だけども、そろそろ潮崎豪オリジナルのスタイルを確立してもいいんじゃないか。
豪はノアのエースになれるレスラーだと思ってるので、今回の屈辱を糧に這い上がってほしい。
第7試合 タッグマッチ 30分1本勝負
△力皇 猛 & 森嶋 猛 vs 丸藤正道 & KENTA△
30分00秒 時間切れ引き分け
ノアの未来を背負う、いやもう中心選手と言ってもいい若武者たちによるタッグマッチ。
期待通りの好勝負に場内大興奮。試合としての盛り上がりはメインより上だったろう。
今回一番目立っていたのはなんといっても我らが姫もりしー。三沢戦で見せた圧殺ファイトに加え、ヨーロッパ遠征で学んだという観客を惹きつけるファイトで場内を沸かせた。
圧殺ヒップアタック。側転ボディ。重爆トペ。スカッドミサイル。高角度の裏投げ。そしてバックドロップドライバー。
次は何を見せるんだろうというワクワク感。観客がもりしーの一挙手一投足に引き込まれていく。
ボスの復帰戦ということで、普段ノアを見ないファンも多く来ていただろうけど、そういう人々にも森嶋猛というレスラーの魅力を知らしめたことだろう。ずっともりしーを応援してきた私としても嬉しい。
リキはあえて控え気味な戦いぶりに徹した感じだったが、サポートに回ったときのリキの力強さは凄い。華は無いが抜群の安定感。
正直、今のWILD2に勝てるようなタッグって、それこそメインに出場した4人クラスがタッグ組まないと無理だと思う。
そんな相手に、丸藤とKENTAはよく戦ったと思う。あの体格差はさすがにどうしようもなかったが、それでも自分達の見せ場はしっかりつくった。
何より丸藤もKENTAも受け身が半端じゃない。ノアのレスラーの受け身の技術の高さは今更言うまでも無いが、あれだけ体重差のある相手の攻撃をあれだけ受けて、それでもフォールを奪われなかったというのは凄すぎる(最後にもりしーがもう一発バックドロップを打ってれば決まったと思うが)。
もりしーの大技を受け続けたKENTAに比べて丸藤はあまり見せ場をつくれなかった。リキ同様サポートに徹したとも言えるが、シングル戦での凄さを考えると、実はタッグ向きの選手じゃ無いんじゃないのかとも思う。
素晴らしい試合ではあったのだが、ひとつ不満だったのはやっぱり30分時間切れ引き分けだったこと。(以下反転。ノアだけはガチと思っている人は読まないように)
30分勝負って時点でいやな予感はしてたのだけどね。序盤もりしーが受け過ぎだったことや最後バックドロップを狙わなかったこともそうだし、引き分けでケツ決めだったんだろうなと思われても仕方ないよな。別にもりしがKENTAからピン取ってもKENTAの評価は下がらんだろうに。
まあ丸め込みで丸KENが勝つよりはマシな結果ではあるか。そもそもWILD2対丸KENてカード自体、あんまり乗れんかったんだよね。リキ・KENTAvs森嶋・丸藤なら素直に乗れたんだが。
現状ならWILD2が勝って当然なわけで、もりしやリキにとってはリスクばかり大きい。しかもノアのことだから、丸藤に丸め込みでピン取らせてGHC挑戦、とかやりかねん。
別にノアだけはガチと思ってるわけじゃないが、筋書きが透けて見えそうな展開は正直勘弁してほしい。
第8試合 高山善廣 復帰戦 タッグマッチ 60分1本勝負
○秋山準 & 三沢光晴 vs 高山善廣× & 佐々木健介
22分30秒 リストクラッチ式エクスプロイダー→体固め
セミ終了後、巻き起こる高山コール。
三沢、健介、秋山の順で入場。そして武道館に流れる『DESTRUCTIVE POWER』!
ドン!ドン!オイ!! ドン!ドン!オイ!!
大歓声を背負い、2年ぶりにリングに高山善廣が帰ってきた。
いつものようにトップロープを跨ぐと一際歓声が大きくなる。ま、ロープに足が引っ掛かったのはご愛嬌。
それにしても、やっぱボスは姿、立ち振る舞いだけでも絵になるよな。全身がプロレスラーと言った趣きだ。
試合は三沢と高山が先発。
ロックアップするかと思いきや、いきなりボスのビックブーツが社長の顔面に炸裂、続けて膝蹴りで三沢悶絶。ボスはボスのままだとこれだけで納得する。
とはいえ、2年のブランクはやはり大きい。巨体を生かしたパワー、打撃の破壊力は相変わらずだが、受けやスタミナ面ではまだまだ全開とは言い難い。
そんな高山の顔面に、容赦無く三沢がエルボーを、秋山が膝を叩き込む。高山の顔面が歪むたびに、歓声と悲鳴が上がる。
二人の猛攻を受け続けたボスだったが、中盤を過ぎたあたりでそれまではエンジンの試運転だったとばかりに反撃。「小橋!」と叫んでからのマシンガンチョップからのダブルアームスープレックス、投げっぱなしのフルネルソンスープレックスに、完璧なブリッジのエベレストジャーマンまで決めてみせた。
健介も復帰戦の高山をよくサポートしていた。復帰戦の高山を立てながらも、気合の入った全力ファイトで三沢、秋山と渡り合った。
最後は三沢のエメラルドフロウジョン(しかも久しぶりに完璧な形で)から秋山がリストクラッチエクスプロイダーでピンフォール。復帰してすぐ勝てる程甘くないんだよ、と言わんばかりの情け容赦ないフィニッシュで秋山・三沢組が勝利。
小橋の代役を見事果たした健介だったが、試合後、眼窩底骨折していたことを報告。とても試合を出来る状態ではなかったという。
北斗は健介を止めようとしたが、左目を失ってもいいから出場するとまで言われて止められなかったそうだ。
試合中まったくそんな素振りは見せなかったし、パートナーの高山も、対戦相手の秋山、三沢も知らなかったという。
なんていうか…。一言で言えば、ホント、健介はバカだよ。
バカと言えば、ボスだってそう。脳梗塞から復帰したレスラーなんていない。いつ再発するかわからない。下手したら命を失いかねないのにリングに戻ってきた。これをバカと言わずに何と言うか。
対戦相手の三沢や秋山だってそうだ。脳梗塞を患った相手の顔面に打撃を打ち込み、頭から投げ捨てる。プロレスラー高山をリスペクトするから、全力で戦わなければ失礼だからという理由で。
ホント、バカばっかりだ。
おまえら、最高のプロレスバカだよ。
6年ぶりの武道館でのプロレス観戦だったが、素晴らしい興行でした。ノアの武道館に外れなし(4月の武道館? あー、アレはアレでアレってことで)。
休憩無しで3時間半。ダラダラした感じも無く、すっきりとまとまっていたのも好印象。
試合後、武道館から出て行く観客が一様に満足そうな表情をしているのもプロレスの興行、そしてノアならでは。マンネリとも言われるが、こういう幸せな予定調和を生み出せるのがノアのいいところだと思う。
いい意味で小橋不在を感じさせなかった。選手それぞれに期する所があったのだろうし、特にセミの4人の頑張りが大きかったと思う。
わざわざ上京した甲斐があったというもの。私個人としても大満足でした。
次に武道館に行くのは、小橋の復帰戦かな。