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2006年07月09日

『キミキス』

遅ればせながら『キミキス』の感想など…。

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『トゥルーラブストーリー』(以下『TLS』)シリーズ全作プレイしているトゥルラーとしてはやらざるを得ないわけで。
公式には『TLS』の続編と謳われてはいないけど、発売元はもちろんプロデューサー、キャラクターデザイン、音楽まで同一のスタッフなので無関係とは言えないだろう。

で、実際プレイしてみての感想は…。
どうみても『TLS』です。ありがとうございました。ってな感じ。
そりゃあ続編のつもりで購入したけどね。ここまで同じだとは思わんかったよ。『トゥルーラブストーリー My First Kiss for you...』とかそんなタイトルでも全然問題ない。
それじゃあなぜ『TLS』のタイトルを使わなかったかといえば、やっぱ売れないからだろうなあ。シリーズの新作を出す度に売り上げが落ちてたって話だし、完全に新規タイトルとして出した方がいいと踏んだんだろう。実際、発売前の積極的なプロモーションのお陰で各所で話題になっていたようだし。
そんなわけで、このテキストは『TLS』との比較という点を重視して書いてますので、シリーズをやってない人は今からプレイするよーに。今からやるなら『R』、『2』、『Summer Days, and yet...』(以下『サマデ』)あたりかな。『3』は地雷なので注意。

基本的なゲームシステムは『TLS』を踏襲している。
一日の始めに校内の移動場所を決定し、女の子とのイベントや会話を重ねて仲良くなっていく。
事実上の前作に当たる『サマデ』の目標システムを改良したものとなっており、好感度ポイントを溜め、固定のストーリーイベントやマッチング会話でのアタックを成功させることにより恋愛レベルが上昇、女の子との関係が進んでいく。展開によってスキルートとナカヨシルートに分岐するのも『TLS』と同じ。
『2』のチェーンイベントや『サマデ』同様、それぞれのキャラクターのドラマをしっかり描けるのは利点だが、その分どうしてもゲームの流れが固定化して一本道になっちゃってるのは賛否が分かれるところ。『1』&『R』のような自由度を求める人には多少辛いかもしれない。
ゲームは恋愛レベルの上昇とシナリオをメインに進むので、結果として恋愛マップはイベントの発生条件にしか関係しなくなっている。シナリオはスキルートなのにフリーイベントはナカヨシ寄りのイベントだったりすることもあるわけで、この辺は従来のシステムを踏襲してきたために生まれた齟齬と言えるかもしれない。

今作のウリであり、『TLS』ともっとも異なる点であるマッチング会話について。
過去のシリーズでは通常のエンカウントでは「女の子と会話した」というメッセージが表示されるだけ(好感度は上昇している)で味気ないものだった。個人的にはいろいろ想像力を刺激されて好きだったが。
また、『サマデ』では目標を達成すれば女の子との関係がどんどん進んでいき好感度も上がるので、通常のエンカウントの意味自体があまりなかった。やり直してみたら、通常のエンカウントで話題レベルも上がるし、目標の難易度も下がるね。やっぱよく練られたシステムだわ。
そこで導入されたのが今作のマッチング会話である。イベントが発生しない通常のエンカウント時に行うことが出来る。いつでもできる下校会話と言うと分かり易いか。
『TLS』の下校会話と同じく、女の子の喜びそうな話題を選んで会話を進めていくのだが、下校会話と違うのはあらかじめ会話に用いる話題を話題袋に用意して置かねばならないところ。
マッチング会話時には用意しておいた話題しか話せないので、女の子の好みをあらかじめ把握して準備しておかねばならない。
上手く女の子との会話を進め、女の子の好感度ゲージとテンションを上昇させたならアタックを行う。下校会話で言えばデートのお誘いに当たる。
アタックを行うことによってイベントを発生させたり、下校デートに誘うことが可能。アタックによるイベントを発生させないと女の子の恋愛レベルは上がらないので、マッチング会話とアタックをいかにうまく成功させるかが攻略の鍵となるだろう。
とはいえ、『TLS』の下校会話ほど難易度は高くない。女の子の好みの話題は読みやすいし(キャラにもよるが)、会話が盛り上がらなかったり、ドキドキさせすぎたりで女の子が途中でいなくなってしまうこともほとんどない。
ただ、運が絡むので失敗するときはどうやっても失敗してしまう。また、話題ごとにスキポイントとナカヨシポイントのどちらが得られるのか決まっているので、ルート分岐やイベント発生条件まで考慮に入れて話題を選択するとなるとなかなか大変になってくる。この辺は攻略本に頼った方が無難か。

このマッチング会話、確かに話題に対する女の子のリアクションも豊富で楽しいのだが、『TLS』の下校会話と比べるとやはり少々物足りない。
必死になって話題を選んでも外してしまい、ぎこちない雰囲気になっちゃった挙句途中で帰られちゃったりとか、焦って会話を盛り上げ過ぎて女の子がドキドキしすぎて帰っちゃったりとか、デートに誘おうとして頑張って会話を盛り上げたけど、いざデートに誘おうとしたら別れる場所に着いちゃったりとか、少しでも一緒にいたいから短い帰り道をゆっくり歩いたりとか、何も言わずに握った手を彼女も握り返してくれたりとか、そういう切なさとかドキドキ感が足りんのですよ。
マッチング会話でも女の子を見つめたり手を握ったりも出来るんだけど、なんか違うんだよね。あの、放課後の二人っきりの帰り道というシチュエーションでのドキドキ感には叶わない。
確かに難易度は高くて大変だったけど、下校会話システムは『TLS』の根幹を占めていたのだと再認識させられた。

マッチング会話だけでなく、全体を通しての難易度自体もそう高くない。しかし、女の子と会うのもイベントを発生させるのも、運が絡むことが多すぎる。
ベストの移動場所を選んでも、運が悪いと全く女の子と会えないということもある。
普通にやっていれば狙った女の子は攻略できるだろうし、慣れてくれば複数攻略も可能(バッドエンカウントがあるのでお勧めはできないが)だが、運が悪いと全く女の子に会えず、期限切れになってしまうこともある。邪道ではあるが、セーブ&ロードもときには必要だろう。
また、狙った女の子のエンディングを見るだけならそう大変ではないのだが、イベントを網羅しようとすると難度は跳ね上がる。
スキ/ナカヨシルートでイベントが違うので当然複数回プレイが必要だし、恋愛マップの特定のブロックでしか発生しないイベントもある。跳び箱イベントなんて存在自体をずっと気付かなかった。
また、イベントの多くは発生がランダムで、イベント発生条件を満たしていてもなかなか発生しなかったり、他のイベントに潰されてしまうこともある。攻略本とセーブ&ロード、そして根気は必須だろう。
あ、おなじみ神風イベントの発生確率だけは上がってる気がする。コンプリートも簡単かと。

キャラクターとかシナリオについて。
『TLS』同様、突飛な性格や設定のキャラはおらず、ぱっと見はちょっと地味(髪の色も黒~茶系のみ)だけど、現実にいそうだけどいない、そんな感じのキャラ造形になっている。
高山さんの作画も、シリーズのイメージを引きずっていた『サマデ』よりもいい意味で垢抜けた感じ。
キャスティングも相変わらず見事。池澤春菜に懐かしさを覚えてみたり。パジャマでいっしょに、ね! 池澤春菜使いたくて『TLS』のタイトルを捨てたんじゃなかろうな。
星乃さんの地味な図書委員っぷりも中里さんを思い出したなあ。♪めだたない~背の低い~私のことを~♪
「キスでしか伝わらない想いがある」「いつでもどこでもキスできる」など、キスを前面に出したプロモーションが発売前から行われていたが、思ったほどキスしまくるわけではなかった。まあキャラやルートにもよるけど。
どちらかというと“キス”という共通のテーマを軸にして『TLS』と同じように甘く切ない恋物語を描いたというのが正しいだろう。
脚本がたからやすりさんじゃない点が不安だったのだけど、相変わらずのこっ恥ずかしいラブストーリーで安心。
巷ではエロいエロいと発売前から随分騒がれていたみたいだけど、『TLS』は昔からエロかったです。松田さんの作画のお陰で気付かなかった人が多かったようだけど。
キスなんて判り易い肉体的接触が無いとエロさがわからない、ってのはオタクとしての練度が足りねーんじゃねーのと思ったり。何気ない仕草や台詞で妄想できてこそ、人類の進化系たるオタクだろう。ってなんのこっちゃ。アスペルギルスさんは復活しないのかなあ。

総評。
プレイするまでは期待と同時に不安も大きかったのだが、いい意味で期待通りの良作だった。
『TLS』シリーズと比較すると、『1』『R』『2』にはやや及ばないが『サマデ』と同等、『3』よりは遥かにおもしろい(まあ『3』と比べるのもなんだが)と言ったところか。
何より、PCから移植のノベルゲーばかりで低迷する昨今のコンシューマギャルゲー市場において、システム重視のちゃんと遊べる作品が出た意義は大きい。
売り上げも悪くなかったようだし、CD・ラジオ・グッズなどの展開も積極的に行われているようで、続編も期待できそうだ。
これで『TLS』の続編が出る可能性はほぼ断たれてしまったとは思うが、『TLS』の魂を継いだ『キミキス』の今後に期待することにしよう。

杉ポン、99までつくるって言ったの忘れてないよな?

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