2013年09月18日

『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part2

 (『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part1

それぞれの年の瀬 〈シャイニー日向〉編

ルチャ・フィエスタ・メヒカナ(1)

<第1試合:4ウェイマッチ 20分一本勝負>

 〈アポロン高崎〉(?)
 VS
 〈高橋 加奈子〉(東京女子プロレス)
 VS
 〈上原 凪〉(WARS)
 VS
 〈ブレイヴ・レイ〉(激闘龍)

四者四様、睨み合う。

(っ、思った以上に、やり辛い……っ)

われらがアポロン高崎、マスクの下で顔をしかめる。
視界は広めのマスクであるが、それでも違和感はぬぐえない。
そのうえ、不慣れな4WAY戦、それも馴染みのない連中との対戦ときている。
高橋や凪とはTCGやEXTASで顔は合わせたが、手合わせはしていない。
ブレイヴ・レイにいたっては初見である。

もとより、日向にとってこの大会への参戦は、

――今日子さんに、自分のファイトを見せたい。

と、いう思いのみであり、勝ち負けは問題ではない。
最近になってようやく意識を取り戻したブレード上原だが、いまだ復帰は遠いという。

だからといって、ふがいない闘いをする気はさらさらなかった。
いちおう、正体不明のマスクウーマンとなっているとはいえ。

「――正々堂々とやりましょう」
「……っ?」

レイが、覆面のよしみで(?)日向に握手を求めてくる。

これに応じた日向だったが、

「……っ!?」

不意打ちのエルボースマッシュを食らう。
たまらず倒れた日向に、レイと高橋がストンピング。
この小ずるいテクに怒った凪が日向を救出。
おのずと、日向・凪がリンピオ(善玉)、レイ・高橋がルード(悪役)的なポジションにおさまる。
かくして高橋と「新旧激闘龍同盟」を組んだレイ、派手な空中殺法で観客から歓声を引き出す。
日向も負けじと食い下がるが、マスクの違和感はぬぐえず、4WAY戦への不慣れさから決定打に欠いた。
つまるところ……
最後は同盟決裂からのウラカン・ラナでレイが高橋を沈め、勝利をもぎ取ったのである。

 ×高橋 VS レイ○
 (11分9秒:ウラカン・ラナ)

「……っ、ハァ、ハァ……ッ」

不完全燃焼に終わった日向であったが、これも経験のうち、といえようか。
もっとも。
この試合は、文字通りの「前座」の一つでしかなかったのだ……

興行はつつがなく進み、メインイベント――

ルチャ・フィエスタ・メヒカナ(2)

J1K軍12人に対し、太平洋勢わずか6人。
数の上では絶対的に不利な状況。
だが、彼女たちは――孤独ではなかった。

「っ、これは……」

バックステージのモニターでこの様子を見ていた日向は、思わぬ成り行きに困惑していた。
こんな展開が待っているとは予想だにしていなかったのだが、それも当然であろう。
堀とは旧知だし、イレス神威とも手を合わせたことはある。
上原の興した太平洋女子の存亡の危機、日向とて微力ながらに一肌脱ぎたいところであったが、

(……っ、でも……)

いくらマスクを被っているとはいえ、新女の一員である自分が、こういった闘いにかかわるのは、問題ではあるまいか?

(…………っ)

人数の上で劣勢に立たされていた太平洋女子軍であったが、次々と助っ人が名乗りを上げた。

「……上原さんは私の目標。微々たる力でも、ないよりは!」

太平洋女子から分裂した激闘龍所属のマスクウーマン、〈ブレイヴ・レイ〉。

「今日子ねぇねぇの団体を、潰させるもんかっ!」

上原の従妹、WARSの〈上原 凪〉。

「――ウエハラと再び闘う舞台は、太平洋女子のリングをおいて他にはない」

AACの《ジョーカー・レディ》。

「友がすべてを懸けて闘うのなら、四の五の言わずに手を貸すのみ!」

同じくAAC、《ミレーヌ・シウパ》。

「――今日子に、いいところを見せておかないとね」

上原の無二の盟友にして、“リングの女王”《パンサー理沙子》――

……そして。

「今日子さ…ブレード上原とは昔馴染み。及ばずながら助太刀します!」

謎の覆面ファイター、〈アポロン高崎〉。

かくして、団体の垣根を越えた“鳥人血盟軍”とでも称すべきチームが結成されたのである。

「意外だったわ。いいのかしら? 会社に迷惑がかかっても」
「っ、な、何のことでしょう……っ」

理沙子にささやかれても、知らぬ存ぜぬのテイ。

<太平洋女子プロレス・負けたら即消滅マッチ>

【ジャッジメント・サウザンド】

《寿 千歌》
《ライラ神威》
《氷室 紫月》
《マスクド・ミステリィ》
《ジャイアント・カムイ》
《ナイトメア神威》
《サタン神威》
《スパイダー神威》
〈アトラス・カムイ〉
《栗浜 亜魅》
《ダークフレイム真田》
《ブラックペガサス》

VS

【鳥人血盟軍】

《パンサー理沙子》
〈アポロン高崎〉
〈上原 凪〉
〈ブレイヴ・レイ〉
《ジョーカー・レディ》
《ミレーヌ・シウパ》
《大高 はるみ》
《テディキャット堀》
《アルコ・イリス》
《優香》
《橘 みずき》
〈イレス神威〉

協議の末、試合形式はイリミネーション式4人タッグ戦と決まった。
すなわち、フォールかタップで敗れた選手が脱落し、残りのメンバーと交代していく。
最後の一人が敗れた時点で、決着というわけである。

「――お膳立てはしたけれど」

パンサー理沙子は、太平洋女子残党たちに告げる。

「この後のことは、すべて、リングの上で決まるわ」
「……心得ています」

うなずくイレス神威。
舞台は整った。
後は、白黒つけるのみだ。
彼女が踏み出そうとするや、

「おっと、イレスちゃんの出番はまだまだ」
「……っ?」

橘や優香たちに止められた。

「あっちの大将と闘いたいんでしょう? だったら……」

今はまだ、動くときではない。

「任せて。私たちが、あの覆面、引きずり出してあげる!」
「ううっ……な、何だか、悪寒が止まらないけど……やるっきゃないね!」
「……っ、皆さん……」

かくして、太平洋女子の命運を懸けた一戦の火蓋が切って落とされたのである――

<1>

 《ブラックペガサス》
 &
 《ダークフレイム真田》

 VS

 《橘 みずき》
 &
 《優香》

「藤原さんっ……闇に飲まれた貴方の正義、私の正義で浄化してみせる!」
「黙れ――力なき正義こそが悪! 正義とは、力そのものに他ならない――」

橘と、藤原和美こと暗黒天馬聖戦士が火花を散らし、

「うおおおーーっ!! 闇の炎ですべてを焼き尽くしてやるッス!! バーニング・ラブッ!!」
「な、なんか悪いアレが憑いてるよこの人~~っ」

優香は、闇炎使いと対峙する。

初戦は優香が上原直伝のミサイルキックでペガサスから3カウント。

 ×ペガサス VS 優香○
 (7分:ミサイルキック)

<2>J:11人/鳥:12人

《ジャイアント・カムイ》
《ダークフレイム真田》

 VS

《橘 みずき》
《優香》

*Bペガサスに代わって登場は、2メートル近くの巨体をほこる危険な大巨人・Gカムイ。
 しかしここでは橘と優香のコンビネーションが上回り、真田を沈めて幸先良く2連勝となった。

 ×真田 VS 橘○
 (11分:フライングニールキック)

<3>J:10人/鳥:12人

《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉

VS

《橘 みずき》
《優香》

*真田退場で登場したのは、Gカムイの妹・Aカムイ。
 姉妹のパワーで圧倒し、橘をたちどころに粉砕。

 ○Gカムイ VS 橘×
 (13分:超高層ボディスラム)

<4>J:10人/鳥:11人

《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉

VS

〈ブレイヴ・レイ〉
《優香》

*橘に代わって登場は激闘龍の新鋭・Bレイ。
 意気軒昂で突貫したレイであったが、Gカムイの圧力に何もさせて貰えない。
 サッカーボールキック一発でグロッギー状態に陥り、かろうじてタッチした優香にタッチ。
 その後は優香がなぶり殺しにされ、最後はギロチンフィールで処刑台の露と消えるのを見殺しにするしかなかった。

 ○Gカムイ VS 優香×
 (16分:ギロチンフォール)

「……っ」

血まみれになって担架で運ばれる優香を横目に、日向の出番が回ってきた。

「無理はしない方がいいんじゃない?」
「っ、そんなこと……!」

理沙子の言葉を振り切り、リングへ向かう。

<5>J:10人/鳥:10人

《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉

VS

〈ブレイヴ・レイ〉
〈アポロン高崎〉

「高崎さん……っ、やってやりましょう!」
「も、もちろん……っ」

と士気は高い2人だが、Gカムイの圧力を押し返せるほどの力はない。

「…破壊…シ尽クス…ッッ!!」
「……っ!!」

Gカムイのダブルラリアットで、2人まとめてぶっ飛ばされ、レイはあえなく3カウント。
もはやプロレスの体をなしていない、それは一方的な闘いであった。

 ○Gカムイ VS レイ×
 (20分:ラリアット)

<6>J:10人/鳥:9人

《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉

VS

〈上原 凪〉
〈アポロン高崎〉

「ゲホッ、ゴホッ…」
「~~っ、好きにさせるもんかーーっ!」

日向がラリアットのダメージから立ち直れない間に、凪もあっさり叩き潰される。
まさにブレーキの壊れた重戦車、止めようがない。

 ○Gカムイ VS 凪×
 (24分:デスバレーボム)

<7>J:10人/鳥:8人

《ジャイアント・カムイ》
〈アトラス・カムイ〉

VS

《大高 はるみ》
〈アポロン高崎〉

辛うじて戦線復帰した日向であったが、

「偽の、新人王っ…ぶち壊れちゃえ…っ!!」
「~~~~~~っ!?」

日向には連敗しているアトラス(大空ひだり)、激しい当たりで追い込む。
アトラスのサポートもまじえた合体パワーボムで、一本も取れぬまま、リング上に撃沈――

 ○Gカムイ VS 高崎×
 (26分:ダブルパワーボム)

その後の展開は、記憶が定かでない。
気がつくと控え室に寝かされていて、モニターには、凄惨な光景が映し出されていた。

「ぐ……ぁ……」
「ヒャーーーッハッハッハッ! 他愛ねぇなぁ。えぇ?」

リング上は、血みどろの修羅場と化していた。
返り血に染まって哄笑しているのは、《ライラ神威》。
マスクを引き裂かれ、血の海に沈んでいるのは〈イレス神威〉。
その腕は異様な角度に折れ曲がっており、もはや闘える状態でないのは明白であった。

「これが、我々【ジャッジメント・サウザンド】に逆らった者の惨めな末路ですわ――」

呵呵大笑し、戦闘不能のイレスを足蹴にする寿千歌。
その凄惨な光景に、会場のファンは声もない……

そこで、太平洋女子の解散を宣言せんとする千歌。

が、そこに疾風のごとくリングインした集団が、千歌をボコボコにした。

『弱い者いじめで偉そうにしないことね――』

マイクで主張したのは、【柳生衆】の下っ端ヒール、〈MOMOKA〉。

『あなたたちの相手は、わたしたち【スーパー柳生衆】よ!!』

かくして年の瀬の番外戦は、乱入によってウヤムヤなままに終わったのである。

 ▲ライラ VS イレス▲
 (1時間22分:ノーコンテスト)

とどのつまり。
太平洋女子の解散は棚上げとなった……が、あれほどの惨敗を喫しては、もはや再起は不可能であろう。
堀たちの行く末は日向にとっても気になるところであったが、

――心配しなくて大丈夫よ。

という理沙子の言葉を、信じるしかなかった。
日向自身、それどころではなかったというのもある。
何せ、わずか4日後には、ドーム大会が控えているのだから。

新日本女子プロレス 1・4新日本ドーム大会 ~Labyrinth of Judgment~

「ヒナタ、Enjoy Wrestling!!」
「い、イエーース……」

コリィと日向が入場するや、大きな歓声が上がった。
<EXトライエンジェル・サバイバー>では十六夜を破るなどの結果を出した日向に、オーディエンスも期待していたとみえる。
しかし、コリィがいかにジュニアの強豪とはいえ、一度手を合わせただけのルーキーがパートナーでは、ベルト奪取は難易度が高すぎた。
大晦日のダメージも残る日向は精彩を欠き、技の失敗、カット遅れ、長らくリング外でゴロゴロと休んでいるだけ、やっと交代したと思ったら見せ場もないままギブアップ……
といった具合で、またもドーム中からのブーイングを浴びる羽目になったのである。

 ○ミステリィ VS 日向×
 (13分39秒:ドラゴンスリーパー)

――“へなたん”卒業かと思ったけど、やっぱりへなたんはへなたんだな。
――新人王なんか貰って、調子に乗ってんじゃねーの?
――親父を見習えってんだ。

興行後、水道橋近辺の居酒屋でそんな会話が交わされたことは想像に難くない。

そう、父親といえば。
大晦日でチャンピオン相手に初の異種格闘技戦に挑んだオリオン高崎は、大流血に見舞われるも不屈の精神で闘い抜き、ついに時間切れ引き分けに持ち込んでいた。
その諦めない気持ちの強さと全力ファイトに、プロレスファンはもとより格闘技ファンからも大きな評価を受けていたのである。
それだけになおさら、娘のふがいなさが際立った……というのは、いささか酷であろうけれど。

新年早々赤っ恥をかかされた日向であったが、落ち込んでいる暇もなく、気が重いイベントが待っていた。

▼日本 東京都千代田区 『ホテル・ニューイチガヤ』飛龍の間

この日、昨年度のプロレス大賞の受賞式が華やかに開催された。
なお、今年の各賞受賞者は以下の如し――

・最優秀選手賞(MVP):

 《マイティ祐希子》(新日本女子プロレス)

・最優秀試合賞(ベストバウト):

 《サンダー龍子》(WARS)
 VS
 《フレイア鏡》(フリー=当時)

 (WARS福岡大会:龍子(31分45秒:両者ノックダウン)鏡)

・最優秀タッグ賞:

“災凶タッグプラスワン”
 《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
 《十六夜 美響》(VT-X)
 〈紫乃宮 こころ〉(JWI)

・殊勲賞:

 《南 利美》(ジャッジメント・サウザンド)

・敢闘賞:

 《ソニックキャット》(東京女子プロレス)

・技能賞:

 《内田 希》(ジャッジメント・サウザンド)

・新人賞:

 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

(……っ、場違いにも、程がある……)

大物ぞろいの中にあって、何でアンタがいるの? と皆から思われているような、針のムシロ状態。
辛うじて同程度のキャリアの選手として紫乃宮がいるが、あちらはEXTAS制覇という明確な結果を出しているので、また違うであろう。

「ろくに試合にも出ていない半病人がMVPとは、どういうことですのっ?」
「頑丈なのだけが取りえの誰かさんとは違うのよね~」
「何ですって――」

市ヶ谷と祐希子は一触即発、

「やれやれ。バカが2人そろうと、やっかいそのものだな」
「その点は同感ね。あぁでも、バカは3人でしょう? 貴方もふくめて」
「ほお……?」

龍子と南が視殺戦を展開したり。

かくのごとく対立関係にある面々も少なくない緊迫した会場であったが、ひとまず無難に進行、最後の集合写真撮影も終え、さてこれにてお開き――という段になって。
それは、起こった。

「!」

突然、照明が落ちる。
ほんの数秒で明かりは戻ったが、

「あっ!」

誰もが、目を剥いた。
見知らぬ派手な女が、日向を痛めつけていたのだ。

「何の結果も出してないくせに、新人王? ちゃんちゃらおかしいなァ――」

と冷笑したこの乱入者は、日向の顔面に黒い毒霧をぶちまけて悶絶させるや、

「うちの名はΣリア! 通りすがりの美人レスラーや! あんたらの首も、いずれ頂戴いたしますんで、よろしゅうに――」

呵呵大笑するや、風を食らって撤収するΣリア。

「あははっ、面白いな~、あの子!」
「さ、さすがクイーン・サドンデス! びっくりさせられたお~」

と大ウケだったのは祐希子とソニックで、

「やれやれ、品がありませんわね。まるでどこかの誰かのよう」
「うふふ。楽しそうな子ね」

と鼻で笑ったのは市ヶ谷であり、微笑したのは十六夜である。

「アレが例の“クイーン”か。少しは骨がありそうだ」
「フフ。そうでしょう?」

これは、龍子と鏡の言。

「おやおや。海外でおとなしくしていれば、五体無事でいられたのにね」
「……気の毒に」

そんな物騒なことをつぶやいたのは、南と内田。

「麗華さまより目立つなんて……許せません!」

と怒りを露にしたのはこころで、

「あの……女っ!」

怒りを剥き出しにしたのは、被害者の日向であった。

この一件を受けて。
さっそく、リアと日向の試合が組まれることになった。
その舞台は、【Panther Gym】の後楽園大会。

「……PGって、新女とは別団体なんですよね?」
「フフッ、もちろんそうよ」

日向の疑いのまなざしを、にっこり微笑んでかわす理沙子。
そのわりには、ズブズブのように思えるのは気のせいだろうか。

日本 東京都文京区 後楽園プラザ

<(0)15分一本勝負>

 〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)

*新女のルーキー木村が曲者と対決。

<(1)15分一本勝負>

 《ハルク本郷》(Panther Gym)
 VS
 〈ブラッディ・マリー〉(プロレスリング・ネオ)

*デビュー戦の本郷に不覚を取ったBマリーの雪辱戦。

<(2)30分一本勝負>

 《奥村 美里》(Panther Gym)
 &
 《小松 香奈子》(Panther Gym)

 VS

 《YUKI》(フリー)
 &
 〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)

*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。

<(3)30分一本勝負>

 《後野 まつり》(Panther Gym)
 &
 《庄司 由美》(Panther Gym)

 VS

 《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
 &
 《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)

*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。

<(4)30分一本勝負>

 《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《テディキャット堀》(フリー)
 &
 《アルコ・イリス》(フリー)
 &
 《優香》(フリー)
 &
 《橘 みずき》(フリー)

*太平洋女子の残党がJ1Kに挑戦する。

<(5)休憩明け 30分一本勝負>

 《沢登 真美》(Panther Gym)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

 《村上 千春》(Panther Gym)
 &
 〈Σリア〉(フリー)

*関西でマニアックな人気をはくしていた、元・ワールド女子のΣなにがしがPantherGym初参戦。
 メジャーのリングで存在感を示せるか?

<(6)セミ前 45分一本勝負>

 《マスクド・ミステリィ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《森嶋 亜里沙》(プロレスリング・ネオ)
 &
 《ドルフィン早瀬》(プロレスリング・ネオ)

*ネオコンビがJ1Kの刺客と対峙する。

<(7)セミファイナル 45分一本勝負>

 《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《大高 はるみ》(フリー)
 &
 《ジャニス・クレア》(GWA)

*J1Kの個性派チームが友情タッグと対決。

<(8)メインイベント 60分一本勝負>

 《パンサー理沙子》(Panther Gym)
 &
 《武藤 めぐみ》(NJWP-USA)

 VS

 《ヴァルキリー千種》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《越後 しのぶ》(ジャッジメント・サウザンド)

*決別した武藤と結城がPGリング上で激突。

<(5)休憩明け 30分一本勝負>

 《沢登 真美》(Panther Gym)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

 《村上 千春》(Panther Gym)
 &
 〈Σリア〉(フリー)

休憩前の試合で起こった〈イレス神威〉の乱入事件でいまだざわつく中、試合が開始。
ゴングが鳴るや、千春が日向をいたぶる展開。
タッチを求めるリアだが、千春、見向きもしないありさま。
どうやら、チームワークはよろしくないようだ。
千春が青コーナーに押し返されてきたタイミングで、強引にタッチするリア。

「さ~て、なんちゃって新人王サンに、本物のプロレスっちゅうのを教えて――」
「この……おっ!」
「ンッグッ!?」

日向、ショルダータックルから、高速フロントスープレックス!

「つっう……!?」

立ち上がるのもまたず、ぶっこ抜き投げっぱなしジャーマン!

「~~~~っ!!」

脳天からグサリとマットに突き刺さり、たまらず頭を抱えて悶絶するリア。

「おおっと……こういうのも……あるっ!」
「うぐっ!?」

指を掴んでねじりあげられる反則でペースを乱される。
そこをキックで乱れ打つ、容赦なしのラフ殺法。
ここは、Σリアの場数の豊富さが生きたか。

とはいえ、圧倒するには至らぬまま決着はつかず――

 ○沢登 VS 千春×
 (11分:ノーザンライトボム)

「てめえっ! 何で助けに来ねぇっ!」
「いやぁ……あんなに簡単にピン取られるって思わなくて」
「何をっ!!」

千春を適当にあしらい、マイクを握ったリア、

『なかなかやるわね、“次代の大物”さん! でも、このリア様ほどでは――』

とアピールしようとした、矢先。

「……あぐっ!?」

突然、背後からイスで殴り倒されていた。

「修行してきたってわりには、甘いな~。また国外逃亡したほうがええんちゃう?」
「ぐ……っ、う……!」

J1Kの成瀬唯の人を食った笑み、更には――

「うっふふふ……っ♪ さよ~なら……リ~ア……ちゃんっ!」
「! アンタは……ッ!」

〈大空 ひだり〉――否、〈アトラス・カムイ〉の、ブルーボックスでの一撃!

このとき、日向もまた、J1Kの輩に袋叩きにされていた。

「う、ふ、ふ、ふ、ふ…………」

場外では、〈大空 みぎり〉……いや〈ジャイアント・カムイ〉がラダーを両手に持って大暴れ。

「な~に、うちらも鬼と違うからな。ちゃんと詫びいれて筋通すなら、堪忍したってもええんやで?」
「……っ、だ、誰……がっ!」
「せやろな。じゃ、腕の一本くらいは、貰っとくわ」
「…………!」

マスク越しにもわかるほど嬉々として、アトラスがスレッジハンマーを振り上げる――

「――はあっ!」
「!?」
「な、何やっ?」

突然飛来した影が、アトラスをかっ飛ばす。
いやアトラスのみならず、成瀬や、日向を襲っていた連中も、リングから追い出された。
誰の仕業かと見れば、

《ウィッチ美沙》
《YUKI》
《小縞 聡美》
〈フランケン鏑木〉
《木村 華鳥》

といった、新女の若手グループであった。

『貴方たちの相手は美沙たちがしてあげるのです!

 そう、美沙たち――

 【レッスルエンジェルス・ドリーム】がっ!』

美沙のマイクアピールに、大きなどよめきが起こる。
レッスルエンジェルス――
それはかつて、《マイティ祐希子》たちが立ち上げた伝説的革命軍団。
その名を襲い、新たな革命の炎を上げようとするのか。

『アンタらみたいなひよっこがレッスルエンジェルスぅ? そんなん、身の程知らずにもホドがあるやろ!』

『いかにもさよう――』

と、ここで鏑木がバトンタッチ、

『確かにこちとら、クチバシの黄色いひよっこぞろい。
 身の程知らず、いかにもいかにも。
 されどでっかい組織に属し、ガン首並べて弱いものいじめ。
 そんなチンケな輩の所業、なんで黙って見ておれましょうや。
 なに、諸先輩方が出るまでもない。
 かるく飲み干せるものならば、どうぞ飲み尽くしてごらんなれ。
 たんと悪酔い、二日酔い、ただじゃあ呑まれぬ、干し上がらぬ。
 天使と名乗るは面映いが、お見せしやしょう、ひよっこの意気地――』

と、さんざん口上述べて、

『お手前方の思い通りにはさせやせん――絶対にっっ!!』

最後は、感情を剥き出しにしての咆哮。
場内大いにどよめき、騒然となったのである。

「…………っ」

彼女たちの姿を、日向はまぶしげに仰ぎ見ることしかできなかった……

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

レッスルエンジェルス・ドリーム――
伝説の軍団の名を襲ったこのユニットへの反響は、多大であった。
もとより、好意的なものばかりではなかったが、

――マイティ祐希子がお墨付きを与えたらしい。

との噂も広がり、その期待感は少なくなかった。
そして……

「美沙先輩、私もユニットに入れてくださいっ」
「はぁ? 何を言ってるのです」

日向の申し出に、ウィッチ美沙は、白けた顔で応じた。

「しょっぱい試合してもひいきされて使ってもらえるスーパースター候補生さんは、美沙なんかに頼まなくても、会社に泣き付けばいいのです。きっと、頼もし~いお仲間を用意してくれるに決まってるのです」
「……っ」

それでも必死に頼む日向に、美沙は条件を出す。
今度の関西興行でJ1Kと対戦するので、そこで結果を出してみろ、と。

「そこまで言うなら――」

と、美沙は条件を出した。
今度、J1Kが京都で自主興行を行なう。

「そこにブッキングして貰いますから、結果を出してください」
「……っ、わかりましたっ」

そのやりとりを、かがりは複雑な思いで聞いていた。
もちろん、戦力は多いにこしたことはないが、正直、面白くはない。

(……せいぜい、お手並み拝見といきやしょうか)

<I・W・J 関西大会>

▼日本 京都府京都市 寿総合文化ホール

<(1)15分一本勝負>

 〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)

<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>

 《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

【レッスルエンジェルス・ドリーム】
 《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
 &
 《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
 &
 〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

<(3)ブレード上原復帰戦 30分一本勝負>

 《ブレード上原》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《芝田 美紀》(ジャッジメント・サウザンド)
 
 VS

 《中森 あずみ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈高倉 ケイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

<(4:休憩前) -KAMUI FINAL- 時間無制限一本勝負>

 《ライラ神威》(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 〈イレス神威〉(フリー)

<(5:休憩明け)スペシャルシングルマッチ カラテvsジークンドー 30分一本勝負>

 《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
 VS
 〈Σリア〉(フリー)

<(6)ノールールマッチ 30分一本勝負>

 《六角 葉月》(新日本女子プロレス)
 VS
 〈ランダ八重樫〉(ジャッジメント・サウザンド)

<(7)J1Kvsスーパー柳生衆・1 30分一本勝負>

 《サタン神威》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《スパイダー神威》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《ダイナマイト・リン》(スーパー柳生衆)
 &
 〈MOMOKA〉(スーパー柳生衆)

<(8)J1Kvsスーパー柳生衆・2  45分一本勝負>

 《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《栗浜 亜魅》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《保科 優希》(スーパー柳生衆)
 &
 《近藤 真琴》(スーパー柳生衆)

<(9)メインイベント J1Kvsスーパー柳生衆・3 60分一本勝負>

 《寿 千歌》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

 《柳生 美冬》(スーパー柳生衆)
 &
 《寿 零》(スーパー柳生衆)
 &
 《オーガ朝比奈》(スーパー柳生衆)

「景気いいみたいだねぇ。あたしもあやかりたいよ」
「……っ、とんでもない」

バックステージでは、シングルマッチに出場する六角や、

「よっ。調子いいみたいじゃん。悪夢にならないようにね~」
「わ、わかっているのです……っ」

試合のない祐希子もなぜか――その理由は第4試合で判明した――顔を出した。
いわば“御前試合”であるからして、不覚は許されぬ。
まして、準構成員にすぎぬ日向にとってはなおさら。

「……せいぜい、足を引っ張らないようにお願いいたしやす」
「っ、もちろんですっ!」

共闘する以上、鏑木ともうまくやらねばならないだろう。

そして、J1Kとの正面衝突。

<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>

 《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
 &
 〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)

 VS

【レッスルエンジェルス・ドリーム】
 《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
 &
 《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
 &
 〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
 &
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

「な~にがレッスルエンジェルスや、名前負けにもほどがあるっちゅうねん」
「今はまだ天使の卵でも、ここから大きく成長するのです!」
「いつまで夢(ドリーム)見てんねん!」

日向が先発を買って出て、J1Kのアトラスと対峙。

「この前のようにはいかない……っ!」
「うっふふっ……偽者の……くせに……!!」

日向、がむしゃらなファイトで突貫し、神田や村上の打撃、成瀬の拷問技やアトラスのパワーに痛めつけられながらも、必死に食い下がる。
いつになく感情を剥き出しにしたファイトに美沙たちも触発され、激しくぶつかり合う。

「――鏑木さん!!」
「……承知!!」

鏑木が抱えあげたアトラスに、日向がトップロープから一撃――
日向と鏑木、初めてのツープラトン攻撃・ハイジャック式パイルドライバーを成功させる。

「う、ぐ、ぐ……っ!」

アトラスもたまらず場外へエスケープ。
そして、最終局面では、

「――みしるし頂戴っ!」
「!?」

鏑木が神田をクルリと丸めて破る殊勲を上げ、レッスルエンジェルス・ドリームの初陣を飾った――

 ×神田 VS 鏑木○
 (9分:高速小包固め)

「フン……まぁまぁなのです。とりあえず、端っこに入れておいてあげてもいいのです」
「……っ、ありがとう、ございますっ」

かくして、シャイニー日向は、新たな一歩を踏み出したのである。
もっともこの日の興行では、第4試合で謎の覆面戦士《マイティ・カレーコ》が乱入したり、復帰したブレード上原が独立を表明したり、第5試合の終了後に例のΣリアとJ1Kを裏切ったアークデーモンが結託したり、といったトピックが多々あったため、そこまで大きく取り上げられることはなかったのだけれど。

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

「こうしてメンバーが集まった以上――まずは、コレなのです!」

バーン、と美沙がテーブルに置いたのは、真新しいポスターである。

「<アルティメット・エンジェル・クラウン>……?」

新女が開催する、若手レスラーの登龍門的イベント。
今回は他団体のルーキーにも大々的に門戸を開くのだという。

「ここできっちり結果を出して……っ」

その先にある、真の“大勝負”……

「<ジャッジメント・ショウダウン>を制するのです!」

今はまだ噂段階でしかない、J1Kと新女(+α)の全面対抗戦。
果たして【レッスルエンジェルス・ドリーム】は、その舞台に立つことができるのであろうか。

2013年01月14日

平成二十三年の野球娘。

以下は大正野球娘。合同誌第二弾「櫻花球宴」 に寄稿した私の作品です。
頒布から2年が経過したこともあり、せっかくなので全文公開しちゃいたいと思います。

なお、以前にあとがき的なものも書いたので、読後にそちらも合わせてご覧いただければ幸い。
『平成二十三年の野球娘。』あとがき的なもの: nokotsudo BLOG

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右手に握ったバットを垂直に立て、右腕を水平に伸ばしてマウンドの上の投手を見つめる。
打席に立った時、私が必ず行う動作だ。
私が立っているのは京都わかさスタジアムのバッターボックス。マウンドには女子球界のエースと称される右腕が立っている。
相手投手はその評価に恥じぬ好投で、チームの得点は相手のエラーから取った一点のみ。相手チームに大量のリードを許していた。
試合はすでに最終回ツーアウト。私が出塁できなければ最後の打者になる。このまま負けるにしてもなんとか一矢報いたいところだ。
私の前の二打席は見逃しの三振とキャッチャーフライ。どちらもストレートで打ち取られた。この打席もすでにワンボールツーストライクと追い込まれている。
一球外してくるか、それとも勝負に来るか。
決め球はストレートか、それとも変化球か。
今日の相手投手のストレートは走っているし、前の二打席ともストレートで打ち取ったことは相手バッテリーも分かっているだろう。裏をかいて今度は変化球勝負ということも考えられる。
頭にさまざまなことが駆け巡るが、判断がつかなかった。
考えがまとまらないまま向かったのが悪かったのか、中途半端に出したバットは外角のボール気味の変化球をひっかけてしまい、打球はぼてぼてとショートに転がっていった。
遊撃手が簡単にボールを取り一塁に送球。スリーアウト。
結局今日の私は三打数ノーヒット。試合も7対1で私たちの完敗だった。

私の名前は草薙綾梅(あやめ)。
設立されて二年目の女子プロ野球リーグに今年から加入したルーキーだ。
ここ京都わかさスタジアムを本拠地とする京都アストドリームスに所属している。
私はニ歳年上の兄の影響もあって小さな頃から野球が大好きな子だった。小・中は男子に混じってリトルとシニアに所属してたし、高校も実家から離れて女子硬式野球部のある学校に入学したくらいだ。
そんな私が高校二年生のとき、女子プロ野球リーグが設立された。高校卒業後も野球を続けたいと思っていた私にとって願っても無いことだった。
二年目の今年はそれほど多くの選手が獲得されたわけじゃないけど、私はトライアウトに見事合格し、晴れてプロ野球選手となることができた。
高校の頃はこれでも女子野球の名門校で四番キャプテンを務めていた私、守備は先輩たちと比べればまだまだだけど打撃には自信があった。
新監督は男子のプロ野球で監督を務めたことのある元プロ野球選手で、打撃を重視していることもあり、私はルーキーながらオープン戦から積極的に起用された。
オープン戦でそれなりの成績を残し、開幕戦でもスタメンの座を勝ち取った私だったけど、さすがにプロは甘くなかったのか開幕以後は打率も低空飛行。スタメンを外されることも多くなった。
開幕から三ヶ月、久しぶりにスタメンで起用された今日の試合でもノーヒットと結果を残せず、打率もとうとう二割を切ってしまった。
打率とともに自信も気分もどん底というのが今の私の状況だった。

女子プロ野球リーグでは試合後、選手たちが観客と一緒にスタンドのゴミ拾いを行っている。
直接ファンと触れ合うこともできるし、選手をより身近に感じてもらえるのはいいと思うんだけど、こういう日はやっぱり気が重い。
「がんばってくださいね」
「応援してます」
そんな風に声をかけてくれるファンの人たちに、なるべく沈んだ気持ちを見せないよう笑顔で応える。
応援してくれるファンの存在は嬉しいけど、試合に負けて活躍もできなかったときにはちょっと辛いものがあるなあ。まあ、男子のプロ野球のように野次を飛ばされるよりはずっとマシなんだろうけれど。
「すみません。草薙綾梅さん?」
そんなことを考えていた私に声をかけてくる人がいた。
眼鏡をかけた女の人。年の頃は二十代後半くらいだろうか。いかにも仕事のできるお姉さん、といった感じの美人だ。
「私、こういうものなんだけど」
そう言いつつ名刺を渡してくる。
「秋川桐子(とうこ)さん……。新聞記者の方ですか」
「ええ、そうよ。えーと、綾梅さんって呼んでいい?」
「ええ、いいですよ」
「ありがとう、私も桐子でいいから。この後少しお時間いいかしら。チームの許可はもう取ってあるから」
「というと、取材ですか?」
「うーん、取材も是非お願いしたいところなんだけど、今日はちょっと違うのよね。実はあなたに会ってほしい人がいるの」
「会ってほしい人? 誰ですか?」
「それは会ってのお楽しみ、かな。そんなに時間取らせるわけじゃないのでお願い、ね?」
そう言って手を合わせる桐子さん。
私に会わせたい人というのが誰なのかは気になったけど、球団の許可も取っているのであれば特に断る理由は無い。
了承の旨を伝えると、待ち合わせの時間と場所を告げて桐子さんは去って行った。
それじゃあ、さっさと掃除を片付けますか。

「おーいこっちよ」
球場の近くの待ち合わせの場所に行くと、桐子さんが手を振っていた。
そこには桐子さんの他にもう一人いた。
車いすに座った上品そうなおばあさん。お年寄りの年齢ってよくわからないけど、私のおばあちゃんよりはずっと年上なんじゃないだろうか。
「あなたに会わせたい人というのはこちら」
「はじめまして。桐子の祖母の鏡子と言います。ごめんなさいね。急にお呼び立てして」
そう言っておばあさんはほほ笑んだ。笑うとチャーミングで、若い頃はさぞ可愛らしかったのだろうと思った。
「実はあなたにお会いして直接差し上げたいものがあったのよ。そのために孫の桐子に無理を言ってあなたを呼んでもらったの」
その言葉を受けて、桐子さんは担いでいた大きめのカバンから布に包まれた棒状のものを取り出し、鏡子さんに渡した。
「どうぞ。受け取ってもらえるかしら」
「はあ」
よくわからないまま鏡子さんからそれを受け取る私。
丁寧に巻かれた白い布を取ると、中からは木製バットが出てきた。かなり古いもののようで黒ずんでいる。前に野球博物館に行った時に見た昔のバットがこんな感じだったかもしれない。
メーカーのラベルなんかは無かったけれど、よく見ると文字が書かれており、

こてつ 東邦星華 櫻花會

と読めた。
東邦星華は確か東京のお嬢様学校だったと思うけど、櫻花會って何だろう。あと、こてつって、人の名前?
「このバットは……?」
「そのバットはね、私があなたのひいおばあ様からいただいたものなの」
ひいおばあちゃん?
四人いる私のひいおばあちゃんのうち、三人は私が生まれる前に亡くなっていて詳しくは知らない。私に関係がありそうな人となると……。
「ひいばあちゃ、巴おばあちゃんですか?」
私のお母さんのお父さんの、そのまたお母さんにあたる巴おばあちゃん。私がまだ小さい頃に亡くなったけど、生前は何度も遊びに行ったことがある。
私の綾梅という名前の名付け親になってくれたのも巴おばあちゃんだと聞いている。私も“ひいばあちゃん”と呼んで懐いていた。
「ええ、巴さんよ。巴さんは女学校で私の一年先輩だったの」
ひいばあちゃんが亡くなった時は八十歳を優に過ぎてたはずだから……、同世代ということは鏡子さん、もう百歳近いんじゃないだろうか。
「巴さんはとても綺麗な人でね。私たち寮に住んでいた下級生の憧れの人だったのよ。そのバットは、私が家の都合で海外に行かなくてはいけなくなったときに、巴さんが私にくださったものなの」
「そうだったんですか。でも、どうしてバットを」
女学生とバットは縁遠いものに思えるけど。
「私と巴さんはね、一緒に野球をやっていたの」
女学校で、野球?
「あれは私が女学校に入学した年だから、大正の終わり頃ね……」
そう前置きして鏡子さんは語り出した。
大正野球娘たちの物語を――。

ひいばあちゃんのクラスメートが許婚を見返すために野球を始めることを決意したこと。
一緒に野球をする仲間を集めて、桜花会という会を作ったこと。
最初はみんな野球のルールもろくに知らなかったけれど、みんなで様々な特訓をしたり合宿をしたりと練習を重ねたこと。
年上の男子と試合し、敗れはしたけど精一杯戦ったこと。

そんなお話を大切な宝物を数えるかのように鏡子さんは話してくれた。
「すごい話よね。小説にしたら二冊、コミックなら五冊、アニメなら十二話くらいになりそうよね」
と、桐子さんが妙な感心の仕方をしてるけど、すごい話だというのは同感だった。
最近は女子野球の認知度は上がってきたとはいえ、それでも「女が野球なんか」と思っている人はまだまだ多い。
現在でさえそうなんだから、大正時代、男尊女卑が今よりずっとすごかった時代に男子と野球をやるなんて、お転婆とかそんなレベルじゃなかったんじゃなかろうか。
私も少しは女子野球の歴史は知っているので、日本で初めての女子野球は大正時代の女学校で行われた、なんて話は聞いたことがあった。
でもそれは歴史の教科書に載っていた大正デモクラシーや米騒動なんかと同じで、全然実感の湧かない遠い昔のお話だった。
それが、自分のひいおばあちゃんが野球をやっていて、そのチームメイトだったという人が目の前にいるのはなんだかとっても不思議な感じだった。
「そのバットはね、男子との試合で巴さんがホームランを打ったバットなの。あれから何十年……。あの戦争のときも、戦後の大変なときもずっと私と一緒だったわ。私にとっては御守りみたいなものだったのよ」
「えっ、そんな大切なもの、いただいていいんですか?」
「いいの。私は十分守ってもらったわ。巴さんのひ孫のあなたにこうして出会えたのも巴さんのお導きだと思うの。是非もらってちょうだい」
そこまで言われて断るのも申し訳ない気がした。
それに大好きだったひいばあちゃんの形見みたいなものだ。私だって手元に置けるものなら置いておきたい。
「それじゃあ、いただきますね」
「その代わりと言ってはなんだけど……」
鏡子さんはいたずらっぽい笑顔になった。
「綾梅さん。お願いがあるのだけど、うんと言ってくださらないかしら」
「え? 最初に内容を言うものじゃないですか?」
反射的にそう答えてしまう。
「最初にうんと言ってくださらなくてはいけないわ。……なんて、うふふ、冗談よ。お願いというのはね、ここでそのバットを振ってみてくれないかしら」
「え、ええ、それくらいお安い御用ですけど。」
数歩下がって二人にバットが届かない位置に移動する。
こてつ、と刻まれたバットを右手で握り、腕を水平に前に伸ばしていつもの構えを取る。
すると、すうっと私の脳裏にすっかり忘れていた昔の光景が浮かびあがってきた。

あれは私が四歳くらいの頃。ひいばあちゃんの家に遊びに行った時のことだ。
ゴムボールとプラスチックのバットでお兄ちゃんと野球のまねごとに興じていた。
ひいばあちゃんは縁側からその様子を穏やかな表情で眺めていた。
お兄ちゃんがピッチャー役で私がバッター役。
お兄ちゃんは手加減すること無く思いっきりボールを投げるのでいくら私がバットを振っても全然ボールに当たらなかった。
なんとかボールに当てようと、バントみたいな形でバットを持ってへっぴり腰でボールに当てに行こうとしたとき、それまでにこにこと眺めているだけのひいばあちゃんから声がかかった。
「綾梅ちゃん。バットは思いっきり振らないとだめよ」
「えー、でも当たらないよぉ」
「当たらなくてもいいのよ。バットというのはね、迷ったり、中途半端な気持ちで振るのが一番だめなのよ。一振り一振り、気持ちを込めて振らないと。空振りしたらどうしようとか結果は考えないの。空の彼方に吸い込まれていく白球のイメジだけを描いて、勇気を持って振り抜くのよ」
ひいばあちゃんの言うことは当時の私にはちょっと難しかったけど、バットは思いっきり振らなくちゃいけない、ってことだけはわかった。
ひいばあちゃんの言う通り、空振りすることとか考えない。
プラスチックのバットに気持ちを込めて思いっきり振り抜く。
何度かフルスイングを繰り返しているうちについにバットがボールを捕らえた。
ぽーん!
空の彼方、とまではいかなかったけど、ボールはお兄ちゃんの頭を大きく越えて飛んで行った。
「やったー!」
「ね、気持ちいいでしょ。今の気持ちを忘れちゃだめよ。女は度胸、野球も度胸なんだから」
「はーい!」
ひいばあちゃんの言葉に私も笑顔でうなずいた。

ひいばあちゃんのバットが、私の胸の奥に埋もれていた思い出を甦らせてくれたんだろうか。
そんな出来事はすっかり忘れていたけど、ひいばあちゃんの教えはずっと私の中に生きていた。
子供の頃からずっと、バットを振る時は結果を気にせず、失敗を恐れず、無心に振っていた。
それがプロに入って、自分の未熟さや周囲の期待がプレッシャーになり、一番大事なことを忘れていた気がする。

うん、そうだったね、ひいばあちゃん。
バットを振る時は迷ったり、いろいろ考えたりしちゃダメ。
女は度胸、野球も度胸だ。

大きく深呼吸すると、もう一度腕を伸ばしバットを構え、バッティングフォームに入る。
ぶるんっ!
振り抜くと、バットがまるで白刃のように空気を切り裂く。
そうだ。この感じだ。
忘れかけていた感覚を取り戻すように、何度も何度もバットを振り抜く。
振るたびにバットから力が身体に流れ込むかのような錯覚さえ覚えた。
バットを振る時はいつもフルスイング。
そのことをひいばあちゃんのバットに改めて心の中で約束した。

いつにない充実感でバットを振り、つい夢中になってしまった。
ふと鏡子さんを見るとなぜか目から涙が溢れてる。
「ど、どうしたんですか!?」
「ううん、何でも無いの。ただやっぱり私の目に狂いは無かったなって」
鏡子さんは泣き笑いのような表情でハンカチで涙を拭いた。
多分だけど、鏡子さんは私ではなく、私を通して遠い昔のひいばあちゃんの姿を見てたんじゃないかと思った。

「このバット、大事にします」
そう言いながらバットを布で丁寧にくるむ。
ひいばあちゃんと鏡子さんの大切な思い出の品というだけでなく、私の大事な記憶も呼び起こしてくれたバットだ。
試合には使えないけど、今度は私を守ってくれるような気がした。
「ええ、また試合見せてもらうわね」
「はい、ぜひ!」
そのときは今日の試合みたいな無様なバッティングは絶対に見せないぞ。
そして、私は最後に気になっていたことを尋ねてみることにした。
「そういえば、どうして私が巴おばあちゃんのひ孫だってわかったんですか。やっぱり桐子さんが?」
桐子さんが女子野球について調べているうちにひいばあちゃんに行き当たったのかと思ったのだけど、桐子さんは首を横に振った。
「綾梅さんのことを調べたのは確かに私よ。でもおばあちゃんに言われなかったらあなたが巴さんのひ孫だなんてわからなかったでしょうね」
「それじゃあどうして……?」
「おばあちゃんがね、テレビの中継であなたのバッティングを見たらしいの。それで、絶対間違い無いからあなたのことを調べてくれって頼まれたのよ。半信半疑だったけど、念のため調べてみたら本当に巴さんのひ孫さんだったんで私も驚いたわ」
「バッティングを見てって……、それだけでわかったんですか?」
そう尋ねると鏡子さんは、

「だって。私が巴お姉さまのこと、見間違えるわけ無いじゃない」

と微笑んだ。
その笑顔は、まるで年下の少女のようだった。

数日後、スポーツ新聞に女子プロ野球リーグ設立以来初のホームランが記録されたという記事が小さく掲載された。
ホームランを打った打者のバットに“こてつ”と刻まれていたかどうかについては記載は無い。

2013年01月13日

『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part1

西暦20X1年、冬。

運命の悪戯が数多の邂逅を生み、神々の遊戯が無限の苦悩を閃かす。

何もかも得ることなどできはしない。

何かを得るためには、何かを犠牲にしなくてはならないのだ。

ある女は言う、過去を捨てなくては未来を得ることはかなわぬ、と。

またある女は言った、過去の己あればこそ、未来を得られるのだと。

どうあれ人は選ばざるをえない、己のゆくべき道を。

その先が頂にいたる道か、奈落の底につづく断崖か、それは誰も知りえない。

だとすれば、その選択のよりどころは。

己の心のなかにしか、ないのかもしれぬ。


“――理沙子、私はね”

“――プロレスが、大好きなんだ”

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■ジャッジメント・セブン SIDE■
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▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明 PantherGymオフィス

【ジャッジメント・セブン】が本拠地とするPantherGym。
その真夜中のオフィスにて……

「プロレスが興行である以上は――」

《南 利美》がいった。

「――まず、観客が望むものを提供しなければならないわ」

それはそうです、と《内田 希》は同意した。

「ただの競技ならまだしも、プロレスは……そうではありませんし」

競技であったとしても同じことよ、と南はつづける。

「しかし、私たちは奉仕者ではなく、」

支配者でなければならない、と南は説く。

「チケット代、PPV代よりも更に上回るものを、見せつけなければならないのよ」
「……容易なことではありませんね」
「当然よ。それができているレスラーなんて、まぁ、国内では五本の指に足りるていど」
「挙げていただいても?」
「そうね、まずは私」
「…………」

真っ先に自分を挙げるあたりは、南利美の真骨頂というしかない。

「それから、お龍さん(サンダー龍子)、麗華(ビューティ市ヶ谷)、それと……祐希子(マイティ祐希子)くらいかしらね」
「……手厳しい評価ですね」
「あぁ、貴方も悪くはないわ。一流のレスラーには違いないし」

ただ、超一流ではない。
それだけのこと。
おそれいった自信だが、それもまんざら的外れではない。

(……祭典での試合は、まさにそうだった)

先の祭典“Athena Exclamation X”のメイン戦における《武藤 めぐみ》との二冠戦は、まさにリングを、そして会場をも“支配する”ものであった。
もともと南は実力者ではあったが、これまでは祐希子や市ヶ谷らのサポートに回っていたイメージが強い。
それが、【ジャッジメント・セブン】に加担してシングルプレイヤーとして起つやいなや、その存在感は倍加したといっていい。
内田が上戸とのタッグを解消、J7についたのも、南の影響があったことは否定できぬ。
タッグ屋“ジューシーペア”としては高評価を得てきたが、それでは飽き足らなくなってきていた。
もっとも、内田の転身の理由は、そればかりではないけれども。

「フフッ。相棒に悪い、と思ってる?」
「いえ。……別に」
「そう。まぁ、どうでもいいけれど」
「…………」

上戸に、不満があったわけではない。
……いや、まぁ、皆無ではなかったが。
今こうして反体制ポジションについたのは、己の殻を破るため、といってさしつかえない。

「私の解釈ですが」

ジャッジメント・セブンの、本来の存在価値は……

「……祐希子さんが欠場している間の、話題づくりだったのでは?」
「そうかも知れないわね」

新女の、いや日本女子プロレス界のトップに立つ、マイティ祐希子。
ここ最近、故障ということで欠場を続けており、来年正月の新日本ドーム大会で復帰予定。
もっとも、その間に映画出演など芸能活動も活発におこなっており、ケガというのは表向きではないか、という声もある。

「新女ならありそうな話だけど。……ま、無傷のプロレスラーなんていないわ」

長くやっていれば、大なり小なり故障はある。
祐希子の欠場も、オーバーホールと考えれば納得はいく。
そして、その間の話題を保つための布石として……

(ジャッジメント・セブンが作られた……か)

まんざら信憑性がないでもない。
だとすれば、

(祐希子の復帰と共に、J7は消滅……あるいは、リニューアル)

それが、団体側の思惑かもしれなかった。

「ま、(越後)しのぶや斉藤(彰子)も、十分“スター気分”は味わえたでしょ」

今後しばらくは、祐希子と南によるベルト争奪を、メインストーリーとしていきたいのかもしれない。
もっとも、そのとおりに行くかどうかは、さだかではないのだ。

(つまるところは)

新女にとって、他団体との
“共存共栄”
などは、論ずるに値しない。
あわよくばすべてひねり潰し、使えそうなレスラーのみを拾い上げ、シェアを独占したいに決まっているのだ。
まして、“世界戦略”を掲げるならば、なおさらのこと。

(その点、真っ先に狙われるのは……)

東女? いや、あそこの社長は、なかなか食えない。
最近、“あの”《井上 霧子》が加担しているとあっては、なおのこと。
WARS? なるほど、トップの龍子は、考えるより先に行動するタイプ……
しかし、いまやあの“女狐”(《フレイア鏡》)がそばにいるとあっては、そう簡単には崩せまい。
その他の、吹けば飛ぶような泡沫団体は問題外とすれば……

やはり、JWI。
いくら《小川 ひかる》らがついていても、肝心の市ヶ谷がアレでは、どうにもなるまい。

(…………)

南利美はかぶりを振った。
感傷的になっている暇など、ありはしない。
何かを手に入れるためには……

(……何かを、失う覚悟がいる)

そう、たとえば、長い付き合いの友人。

いや、同じ時を過ごしてきた、家族ですらも。

(そして、人の心は、いちど離れてしまえば……)

二度とはたやすく、結びつかぬものなのだから。

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■新日本女子プロレス SIDE■
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◆リアクション06共通内容:新日本女子プロレス編(1)
◆リアクション06共通内容:新日本女子プロレス編(2)
◆リアクション06共通内容:新日本女子プロレス編(3)

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

新女を中心とした【HONEY★TRIP】と【みるきぃ☆れもん】のアイドルユニット抗争は、新たな局面を迎えつつあった。
祭典における対決で、みるきぃ軍のリーダー・《キューティ金井》がHT軍に引き抜かれるという異常事態が発生。
更にそののち、金井は永原・富沢らと同期トリオを結成し、事実上アイドル戦線から離脱した。

いっぽう、トップを失ったみるきぃ軍であったが、《榎本 綾》をセンターとした新体制でリスタート。
新女の《井上 美香》《山元 広美》らに加えて、他団体の《メロディ小鳩》や〈ルカ湖ノ宮〉を引き込み、ガールズバンド形式での巻き返しを図っている。
ちかぢか冠番組をかけての対抗戦が企画されるなど、年の瀬のマット界が<EXトライエンジェル・サバイバー>の話題で持ちきりになるなか、アイドルレスラー業界は独自の路線で華々しく活動していた。

とはいえ、誰もがその潮流に乗れるわけでもない。
たとえば《小縞 聡美》。
みるきぃ軍の一員であったが、榎本体制においては居場所がなく――べつだん不仲なわけでもなかったが――アイドル路線の主流からは外れてしまった。
現在はレスラーの本分に戻り、若手の実力派である〈ウィッチ美沙〉や、ルームメイトである〈フランケン鏑木〉らと共闘する流れに行きつつある。
噂では、美沙を中心として、若手による革命軍団を結成しようと画策しているとか。
それはあたかも、かつて《マイティ祐希子》らが時代を変えるべく結成した伝説の軍団……

――レッスルエンジェルス

その、再来なのかもしれない。

そんな彼女たちの動きを、〈高崎 日向〉は複雑な思いで見つめていた。
アイドル路線に活路を見出したまでは良かったが、《辻 香澄》らほどには染まりきれぬ。
さればレスラーとしての実力を示せているかといえば、そうでもない。
たとえば、先の祭典におけるシングルマッチ……

“Athena Exclamation X”試合結果(2)

あるいはまた。
若手によって競われた、EXTAS出場者決定戦……

リアクション06共通内容:ある日の闘景(1)

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

かつては顔を合わせるたびに嫌味を口にしていた美沙などは、最近は言葉をかけることすらしなくなった。
無視している――というほどでもなく、たんに無関心でしかないその態度は、悪口雑言よりはるかにこたえるものだった。
針のむしろ、とはこのことであろう。
しっかりとした目的を持ち、自分たちの手でそれを成し遂げようと邁進する美沙や鏑木らの姿に、日向は羨望にちかい感情を抱いていた……

彼女のケータイに一通のメールが届いたのは、そんなおりである。
全文英語であったため、一瞬、スパムかと思ったが、

「! これって……」

アメリカ遠征中、LWWのレスリングキャンプで出会い、スープレックス使いとして意気投合、アドレスを交換した若手レスラー。
ジェナ――《ジェナ・メガライト》。
メールの内容は、いたってシンプルなものである。

“Hi,Hinata.I fight in NJWP-EXTAS”

(彼女も、EXTASに……!?)

参戦が決まったらしい。

“I want to fight Hinata.”

ヒナタと闘いたい――と、メールは締めくくられていた。

(ジェナ……!)

雑念から解放され、ひたすら無心にレスリングに没頭した、あのひととき。
あの時、日向は確信した。

(そうだ……私は……!)

やはり自分は――プロレスが、何より好きなのだと。
目の前に立ちはだかっていると思えた大きな山は、登り、攻略するためのもの。
はたからは苦行としか見えぬその山登りを、彼女は好きで選んだのではなかったか。

(私は……負けないから!)

そんな気持ちを思い出させてくれたメガライトに、感謝と健闘を祈るむねを返信する……

「……っ、さ、サンキュー、だけじゃまずいし……ええっとぉ」

……英語力という高い壁は、なかなか乗り越えられないようであった。

――日本武闘館6連戦。

それが、<EXトライエンジェル・サバイバー>の日程である。
全18チームを3ブロックに分け、総当りのリーグ戦を開催。
最終日において、各ブロックの首位3チームと、敗者復活戦を勝ち抜いたチームによる決勝トーナメントをおこない、優勝を争う。
優勝チームには、賞金として100000000円……つまり1億円が贈られる。
そのブロック分けは以下の通り。

<Aブロック>

“ゴールデン・ボンバーズ”
“NJWP-USA”
“パッション・スリー”
“災凶タッグプラスワン”
“C.B.T”
“魔王と姫と魔法使い”

<Bブロック>

“xXx(トリプルクロス)”
“六角道場”
“ブラックホール・クラスターズ”
“柳生三人衆”
“アニマル・キングダム”
“パイレーツ・オブ・ヨコハマ”

<Cブロック>

“新女魂”
“ジャスティス・フォース”
“Silberne Drache”
“I・W・J”
“レガシー・オブ・レスリング”
“アンノウン・ソルジャーズ”

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス道場

「……やっかいなブロックに入っちまったなぁ」

“ゴールデン・ボンバーズ”をひきいる《ボンバー来島》がボヤくのも無理はなかろう。
天才・武藤ひきいるUSA軍、最凶お嬢様を擁する災凶タッグ、パラシオンや日本海勢も侮れない。
かてて加えて、“魔王”の降臨ときている。

「ゴチャゴチャ考えても仕方ない。どいつもこいつも、ブン投げてやるだけっすよ」

《マッキー上戸》などは割り切っている。

「アイツの目を覚まさせてやるには……勝ち上がるしかないっすから」

アイツとはつまり、元パートナーのラッキー内田こと《内田 希》のことに他ならぬ。

「まぁな。……ゴチャゴチャ言うより、結果を出すしかないってわけだ。アテにしてるぜ、ゴールデンルーキー」
「…………ッ」

無言でうなずく日向。
果たして、どこまで期待に応えられるのか……それは分からないけれど。

もとより、日向も研鑽を怠っているわけではない。
アイドル軍団【HONEY★TRIP】のリーダー・《藤島 瞳》からは、“魅せるプロレス”の極意を学んだ。
それは、日向の美意識にそぐわぬところも少なくなかったが――たとえば“大向こうをうならせるバンプ(受け身)の取り方”であるとか“より派手な音の出し方”といったもの――ただ闘えばいいというものではない、プロレスの深みというものではあったろう。

「プロレスゆうのは、ボクシングなんかとちがって、お客さんにダメージが伝わりにくいんよね。せやから、あるていど大げさに“強調”する必要があるんよ」
「はぁ……でも、それって、“芝居”しろってことですか?」
「あぁ――まぁ、当たらずとも遠からずやけどね。ソレ、他の先輩の前じゃ言わんほうがええよ。ブッ飛ばされるから」
「………っ」

自分から話を振っておいて、理不尽な言いぐさであった。

「ま、ひなたんがクールキャラでいきたいなら、やめといたほうがええけど、お父さんみたいな熱血キャラでいくなら、そういうのも必要やと思うなぁ」
「はぁ……」

彼女の父、《オリオン高崎》は国内屈指の熱血プロレスラーとして知られている。
その暑苦しさにヘキエキはしても、憧れの対象ではなかった。

―――― さぁ日向、今日の夕飯は大盛りPKGだ!!
―――― え、ピーケージー? なにそれ?
―――― プロテインかけごはん! 今風に言ってみたぞ! さぁ、これでチェンジ・ザ・ボディだ!! C・T・B!! P・K・G!! C・T・B!!  P・K・G!!!
―――― ………………。

……まぁ、幼いころからの基礎トレのおかげで今があると思えば、文句ばかりも言えないけれど。

「ま~でも、うちの言うことなんて、あんま聞かんほうがええよ(アッサリ)」
「え、ええっ??」
「だって、うちもコーチや先輩の話なんか、ろくに聞いてなかったもん」

そんなことを、なぜか自慢げに言う藤島。

「ぜんぶ素直に従っとったら、そんなん、デビューもできずに夜逃げしとったんちゃうかな。適当にサボったりして、いい按配にやっとったわけ」
「……っ、でも、それでどうして……」

生存競争熾烈な新女マットで、成功できたのか?

「考えたんよ。生き残るためにはどうすればいいかって」
「…………っ」
「ひなたんも、とどのつまりは、自分でなんとかするしかないんよね~~」
「は、はぁ……」

藤島の言に惑わされつつも、汗を流すしかない日向なのであった。

▼日本 東京都千代田区 日本武闘館

<1日目>

そして迎えた、<EXトライエンジェル・サバイバー>、本番。
開幕に至るまでは色々とあったが、最大の衝撃は、理沙子の参戦であったろう。
それまでそんな気配は微塵も見せなかったのに。
盟友・上原の従妹であるという凪と組んで出場するとは。

(せめて、一声かけてくれたって……)

いいだろうに、と恨み言のひとつも言いたくなる。
それなのに、発表後に顔を合わせた理沙子ときたら、

――新女さんの大物ルーキーに声をかけるなんて、そんな大それたことができるわけないじゃない。

などと、しゃあしゃあと言ってのけるのだから、たちが悪い。

もっとも、日向は理沙子にばかり気を取られてもいられなかった。
毎試合(彼女のように大物ルーキー待遇であってすら)普段ではありえぬ一線級の強豪たちと闘わねばならぬ。
ことこの大会においては、勝ち負けもさることながら、

――壊されないこと

それも、彼女にとっては闘いであったといえよう。

さて、開幕戦。
初っぱなから、難敵であった。

“ゴールデン・ボンバーズ”
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“NJWP-USA”
 《武藤 めぐみ》(新日本女子プロレス)
 《レミー・ダダーン》(IWWF)
 《ミスUSAマスク》(???)

「言うまでもありませんけど――来島さんじゃ勝てません」
「アメリカかぶれに負けるかよ!」

武藤と来島が火花散らすかたわら、謎のマスクウーマンとゴールデンルーキーも視殺戦を展開。

「ヒナタ……レッツ・ストラグル!」
「っ、やっぱり、貴方は……!!」

出場メンバーの中に、メガライトの名はなかった。
が、USA軍の助っ人覆面ファイターの体つきを一目見ただけで、日向には瞭然。
どうやら、約束を果たすときが来たようだ……

<一本目:6人タッグ>

一本目の先陣は、来島と武藤が激突。
武藤のスピードと来島のパワーが交錯、お互い一歩も譲らぬ攻防に場内は早くもヒートアップ。
そこから来島とダダーンの力比べ、上戸とUSAマスクのスープレックス対決などの展開の末、日向がリングに入る。

「ジェナッ!」
「ヒナタァーーー!!}

真っ向からぶつかり合う両者。
ロックアップからバックの奪い合い、腕の取り合い、とオーソドックスなやり取り。
それだけで、

――更に腕を上げている。

数ヶ月前とは違う、とお互いに認識する。

「でやあっ!」
「……!」

バックドロップを狙うもスカされ、逆に背後を取られてクラッチされるが、これはロープを掴んで必死に阻止。
パラシオンの沢崎を病院送りにしたスープレックスは、何としても食らってはならない。
そのまま両者譲らぬまま、USAからダダーンがみずからタッチ、

「のんびりやっとれんからなァ!」
「…………!!」

豪快なスラムで日向を沈め、一本目を先取した。

 ×〈シャイニー日向〉 VS 《レミー・ダダーン》○

 (10分32秒:ボディスラム)

その後、二本目は来島が獲ったが、三本目で上戸が武藤に敗れ、Gボンバーズは初戦を落としたのである。

<二本目:4人タッグ>

 ○《ボンバー来島》 VS 《ミスUSAマスク》×
 (9分24秒:ダブル延髄斬り)

<三本目:シングルマッチ>
 ×《マッキー上戸》 VS 《武藤 めぐみ》○
 (6分17秒:フライングニールキック)

「……っ、すみません……っ」
「ま、いいさ。どんなリーグ戦も、開幕戦は難しいもんだ」

来島に肩を叩かれながらも日向は、勝ち名乗りを受けるUSAに鋭い視線を送っていた……

そして、大会2日目。

“ゴールデン・ボンバーズ”
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“パッション・スリー”
 《桜井 千里》(パラシオン)
 《ソニア稲垣》(パラシオン)
 〈坂林 玲〉(パラシオン)

パラシオン代表トリオとの対決。

「オープン戦はおしまいだ。今日からペナントレーススタートだぜ!」
「あれがニュージャパン? フン、レスリングは筋肉でやるものじゃないわ!」

<一本目:6人タッグマッチ>

開幕投手? を買って出た来島、稲垣をはじめとするパラシオン勢を、メジャー団体のプライドを見せつけるかのようなパワーファイトで蹂躙。
しかし坂林が奇襲で仕掛けたカウンター裏拳で鼻から大流血、たまらず投手交代。
中継ぎとして登場の日向と坂林が対峙する。
身長は10cmばかり違い、リーチに差があるだけに、もとより打撃戦は不利。

(あの打撃は強烈……でも、密着してしまえば!)

「とりゃああっ!!」
「…………!」

タックルで一気に距離を詰め、体をつかむやいなや高速フロントスープレックスでブン投げる!
更にコーナーに昇り、ミサイルキックで追い討ちを……

「……っと!」
「つあっ!?」

これは読んでいたか、坂林が間一髪でかわして自爆を誘い、

「……どおおおっ!!」
「んっぐううっ!?」

倒れた日向の土手っ腹に、強烈なヒザを叩き込む。
そのまま、顔面へマウントパンチの連打!
もちろんプロレスルールでは反則なので、レフェリーに制止される。

「こ……のおおおっ!!」
「…………!!」

カッと熱くなった日向が、突っ込んできたところへ……

「おっぐっ!?」

カウンターのヒザが待ち受けていた。
アゴに入ったクリティカルな一発で、日向の意識は吹き飛んだ……

 ×〈シャイニー日向〉 VS 〈坂林 玲〉○
 (10分36秒:ニーリフト)

ゆえに、その後の展開はほとんど記憶にない。
気がつけば、リング上で勝ち名乗りを受けていた、ということになる。

<二本目:4人タッグマッチ>

 ×《ソニア稲垣》 VS 《マッキー上戸》○
 (7分14秒:ヘッドバット)

<三本目:シングルマッチ>

 ×《桜井 千里》 VS 《ボンバー来島》○
 (10分44秒:ぶっこ抜きジャーマン)

「やれやれ、まずは1勝だな」
「あと全部勝てば、決勝トーナメントなんでしょ? 楽勝っすね」
「気楽でいいねぇマッキ」
「すみません……っ、私、また……」
「気にすんな。お前さんは、お前さんにできる仕事をやりゃあいいのさ」
「…………っ」

<大会3日目>

「……いやはや。また面倒なのが出やがったぜ」
「……あの御仁とだけはやりたくなかったっすね」

来島や上戸すら、嫌がる相手……
だがそれも、仕方ないかもしれない。
なにしろ、

“ゴールデン・ボンバーズ”
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“災凶タッグプラスワン”
 《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
 《十六夜 美響》(VT-X)
 〈紫乃宮 こころ〉(JWI)

「オーーッホッホッホッ! この兆両役者相手には不足もいいところですけれど、せいぜい引き立て役として輝かせてさしあげますわ!」
「麗華さま流石です!」
「………………」

リング上で相対したビューティ市ヶ谷という“生物”は、予想を遥かに超えた……何か、のようだった。

<一本目:6人タッグマッチ>

この頃になると。
日向にも、この試合形式の“攻略法”がわかってきていた。
ぶっちゃけ、自分が勝ち星を上げるのは容易ではない。
ならばせめて、相手のエース格に負ければ、“道連れ”にすることができる。
だが、相手が同程度のキャリアなら、話が違う。

JWIの紫乃宮……先日おこなわれた“Top of the Cruiser Girls”にも参戦していた。
そのさいはブロックが別だったため、手を合わせることはなかったが、

「麗華さまのため……絶対、負けられない!」
「…………!」

並外れた気迫は、あのときより更にパワーアップしているような気さえする。
あの市ヶ谷のどこにそんなに心酔しているのかは、わからないけれど。
パワーでは上戸を相手にしても引けをとらないものがあるだけに、

(正面からぶつかるのは愚策!)

「せりゃあっ!」
「……うわっ!?」

奇襲のヘッドホイップシザースで投げ飛ばし、機先を制する。

「こ……のっ!」
「くうっ!!」

ダッシュからの顔面へのサッカーボールキックをあやうくかわし、

「……でええいっ!」
「!?」

トップロープを踏み台にしてコーナーポストに飛び移り、そこからミサイルキック!
幻惑されたこころはこれをまともに食らい、もんどりうって倒れる。
華麗さと威力のあいまった一撃に、場内からもどよめきが起こった。

(っ、やった……!)

練習でもやったことのない流れだったが、ズバリとはまった。

(あの動き……)

ひそかに試合を観戦していた理沙子は、思わずうなったものである。

(あれは……月美さんの)

月美、すなわち日向の母《LUNA》が得意としていた華麗なトライアングル・ミサイルキック。
反発するようなことを言いつつ、しっかり参考していたのか?
あるいは、幼い頃に観たムーブが、とっさに出たのかもしれない。

(おやおや……)

こころに代わってリングに入ってきた“彼女”を観て、理沙子は微笑をうかべた。

(さて、どれだけ通用するかしらね?)


ありていにいえば、まったく通用しなかった。
ビューティ市ヶ谷と日向との闘いは……
試合というより、一方的な破壊。

「う、ぐ、ぐ……!!」
「やれやれですわ。今の新女には、こんな三下しかおりませんの? とんだ凋落ぶり。驕る者ひさしからずとはよく言ったものですわ!」

日向を踏みつけながら大笑する、たぶん日本一傲慢な当人。

「麗華さま、タッチを!」
「おっと……そうでしたわね。まったく、誰ですの? こんな七面倒なルールを考案したのは」

こころと交代しようとする市ヶ谷……だったが、その手を叩いたのはもう一人の選手。

「!? ちょ、十六夜さんっ?!」
「フフッ。ずっと休んでいるのも、退屈なの」

九州の雄【VT-X】のトップ、“災厄の女帝”十六夜美響である。

「おい、高崎っ! 代われ――」
「…………っ」

来島の声をよそに、歯を食いしばって立ち上がり、十六夜をにらみつける日向。

「後は……っ、お任せしますっ!」

ここで、日向が十六夜に敗れれば。
残るは来島&上戸と市ヶ谷&紫乃宮。
二本目で一枚おとる紫乃宮を叩ければ、あるいは勝機も見えてくるであろう。

「フフ……少しは楽しませてくれるのかしら? 月の落とし子さん」
「……!」

妖しく舌なめずりしながら、嗜虐的に微笑む十六夜。
果たして手も足も出ず、ボロボロにされる日向……
しかし、その目は死んではいなかった。

「でやあっ!」
「……!」

とっさのトラースキックで十六夜をグラつかせたところへ……

「………………!」

身体が、本能に突き動かされるように反応する。
コーナーポストを、一息に、駆け上がり……
そのまま、翔んだ。

『お…………おおおおお!?』

それは、観たものが思わず目を奪われざるをえない、羽が生えているかのような、飛翔。
太陽は、高らかに昇り……
そして、沈んだ。

<一本目:6人タッグマッチ>

 ×《十六夜 美響》 VS  〈シャイニー日向〉○
 (10分27秒:360°スプラッシュ+エルボー)

3カウントが叩かれるや、場内は割れんばかりの大歓声に包まれた。

 “永遠の未完の大器”
 “昇らぬ太陽”
 “サンシャインガール(笑)”
 “へなたん”

とさんざんコケにされてきた彼女が、その名に恥じない大仕事をやってのけたのだから、それも道理であろう。
のちに『サンセットスプラッシュ』と称されることになる大技の、衝撃的なお披露目であった。

日向畢生のジャイアントキリング(大物食い)により、風向きは一気にGボンバーズに傾いた。
市ヶ谷軍はそのままペースを取り戻せず……

「ええいっ、猪口才な!」
「てめーみたいなのを……猪武者っていうんだよ!」
「……!?」

突進してきた市ヶ谷を来島がカウンターのDDTで仕留め、二本先取にてGボンバーズが勝利を果たしたのである。

<二本目:4人タッグマッチ>

 ○《ボンバー来島》 VS 《ビューティ市ヶ谷》×
 (6分26秒:DDT)

「やりやがったな、高崎!」
「あんな隠し玉があるとはな。菊池サンに教わったのか?」
「いっ、いえ……その、勢いというか」

あれは、もうほとんど無意識的なもので。
のちに映像を観返しても、もう一度やってみる気には、なかなかなれなかった。
これを「技を大事にしている」と見る向きもあったが、要は恐怖心と……空中殺法で名高い母への、複雑な心情ゆえであろう。

<4日目>

“ゴールデン・ボンバーズ”
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“C.B.T”
 《相羽 和希》(日本海女子プロレス)
 《杉浦 美月》(日本海女子プロレス)
 《ノエル白石》(日本海女子プロレス)

3連敗でもはや予選突破の目がないCBTだが、意地を見せんとぶつかってくる。
杉浦のテクニックや白石のパワー、相羽の……えーっと、相羽の元気のよさなどで畳み掛けてくる。

「ちょっと!? ボクだけポイントぼんやりしてない!?」

日向が白石のパワーに屈したものの、二本目・三本目を上戸・来島が奪取、3連勝でリーグ戦突破に望みを託したのである。

<一本目:6人タッグマッチ>

 ×〈シャイニー日向〉 VS 《ノエル白石》○
 (7分32秒:ロメロスペシャル)

<二本目:4人タッグマッチ>

 ○《マッキー上戸》 VS  《杉浦 美月》×
(9分38秒:ジャンピングニーパット)

<三本目:シングルマッチ>

 ○《ボンバー来島》 VS 《相羽 和希》×
 (4分26秒:延髄斬り)

<5日目>

そして、リーグ戦最終戦……

“ゴールデン・ボンバーズ”
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“魔王と姫と魔法使い”
 《ダークスターカオス》(WWCA)
 《ソフィー・シエラ》(TWWA)
 〈ルカ湖ノ宮〉(日本海女子プロレス)

ここまで4連勝の魔姫魔に対し、3勝1敗のGボンバーズは、これに勝てば逆転で決勝トーナメント進出となる。
湖ノ宮は紫乃宮同様TCGに参戦していたが、やはりブロックが違っていたので対決はなかった。
聞けば、チームメイトのギャラは自腹らしく、優勝して賞金をゲットするのが至上命題らしい。
……日本海女子というのは、なかなかに破天荒な団体らしかった。

「負けられない……日本海女子の看板と、そして私の人生のために!!」
「そんなの、こっちだって……っ!!」

先発を買って出た湖ノ宮と日向、感情を剥き出しにしてぶつかり合う。

「わが右腕に集え、混沌とか闇の力とか! ダークスターハルカッ……ホゲ~~~!?」

カオス譲りの? ラリアットを放とうとした湖ノ宮の顔面に、カウンターでドロップキックを食らわせる日向。
その後、本家カオスの猛攻に追い込まれたりしたものの……

<一本目:6人タッグマッチ>

 ×〈シャイニー日向〉 VS  《ソフィー・シエラ》○
 (12分12秒:パイルドライバー)

<二本目:4人タッグマッチ>
 ○《マッキー上戸》 VS 《ダークスターカオス》×
 (4分26秒:サンドイッチラリアット)

<三本目:シングルマッチ>
 ○《ボンバー来島》 VS 〈ルカ湖ノ宮〉×
 (4分12秒:ボストンクラブ)

上戸がカオスを撃破する殊勲をあげるなどして、ついにBボンバーズ、逆転で予選ブロック突破を果たしたのである。

「やれやれだな。ま、最低限の目標はクリアだが」
「ここまできたら、優勝しかありませんよっ」

経験豊富な来島と上戸も、テンションが上がっている。
何しろ、新女系チームで勝ち残ったのは、彼女たちのみ。

「それに、アイツをブン殴るには、決勝まで行かないとですからね」
「……流石にやるな、アイツらは」

内田ようするJ7の“xXx(トリプルクロス)”は、Bブロックを全勝(しかも全試合で二本勝利!)で突破。
彼女たちと闘うには、お互い決勝まで行くしかない。

<最終日>

かくして“ゴールデン・ボンバーズ”は4勝1敗でAブロックを制し、決勝トーナメントに駒を進めた。
相対するは、Cブロック1位・J7を追放された《カーメン成瀬》ひきいる正体不明のミイラ集団“アンノウン・ソルジャーズ”である。

“ゴールデン・ボンバーズ”(Aブロック1位)
 《ボンバー来島》(新日本女子プロレス)
 《マッキー上戸》(新日本女子プロレス)
 〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)

 VS

“アンノウン・ソルジャーズ”(Cブロック1位)
 《ミステリアスパートナー1号》(?)
 《ミステリアスパートナー2号》(?)
 《ミステリアスパートナー3号》(?)

「わけのわからねー連中だが、油断は禁物だな」
「…………っ」

Cブロックでは、理沙子ら“レガシー・オブ・レスリング”に敗れたのみで、4勝1敗での勝ち上がり。
実力は確かなものに違いない。

<一本目:6人タッグマッチ>

先発は来島とMパートナー3号。
来島の剛力をのらりくらりとかわす体術は、見かけによらぬもの。
代わって上戸と2号がやり合うも、これまたつかみどころがない。
タッチした日向もペースつかめず、ゾンビパウダーを食らうなど幻惑されたあげく、あえなくピンフォールを奪われた。

 ×〈シャイニー日向〉 VS 《ミステリアスパートナー2号》○
 (11分14秒:ヒップアタック)

Bボンバーズ、そのまま流れをつかめず……

<二本目:4人タッグマッチ>

 ×《マッキー上戸》 VS 《ミステリアスパートナー1号》
 (3分31秒:飛びつき腕ひしぎ逆十字)

つまるところ、ストレート負けに終わってしまった。
かくして、BボンバーズはUソルジャーズに敗退、決勝進出はならなかったのである。
日向にとってみれば、まぁまぁ……というには、物足りぬ結末であったといえよう。
十六夜から大金星を挙げた以外は一本目で獲られており、お世辞にも活躍したとはいえぬ。
この経験を肥やしにできるかどうかは、彼女の今後次第であろう。

ちなみに、決勝戦のカードは……

“アンノウン・ソルジャーズ”
 《ミステリアスパートナー1号》(?)
 《ミステリアスパートナー2号》(?)
 《ミステリアスパートナー3号》(?)

 VS

“災凶タッグプラスワン”
 《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
 《十六夜 美響》(VT-X)
 〈紫乃宮 こころ〉(JWI)

「……ゴキブリなみにしぶとい奴らだな」

来島が呆れるのも無理はない。
Aブロックで敗退した災凶Tだが、敗者復活ガントレットマッチで破竹の5連勝を果たして大復活。
準決勝では、因縁浅からぬ“xXx(トリプルクロス)”と対決、これを下しての決勝進出である。
とはいえ。
今日だけで実に7試合目。
まだ2試合目にすぎないUソルジャーズとは、消耗度の差は歴然。
ここにいたっても、

――このていど、ちょうどいいハンデですわ。

と呵呵大笑する市ヶ谷の図太さは底が知れぬ。
かくて決勝戦は、異例となる外敵チーム同士の対決……と、思われた。

が、事態は意外な展開をむかえる。
決勝のゴングを前に、Uソルジャーズがその正体を露にしたのである――

黒の長髪が目立っていた3号は、すなわち《氷室 紫月》――
小柄なテクニシャンの2号は、《ナイトメア神威》――
そして、長身の実力者である1号は……《カンナ神威》。

「うちらは【ジャッジメント・セブン】の別働隊! さしづめ、“リアル・ジャッジメント”ちゅうこっちゃ!」

J7を追放されたとは方便に過ぎなかった《カーメン成瀬》……いや、《成瀬 唯》がうそぶく。
そして、J7が決勝まで残っていれば途中で負けても良かったが、こうなっては仕方ないから優勝させてもらう、と大言壮語。

“リアル・ジャッジメント”
 《カンナ神威》(フリー)
 《ナイトメア神威》(苛無威軍団)
 《氷室 紫月》(フリー)

 VS

“災凶タッグプラスワン”
 《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
 《十六夜 美響》(VT-X)
 〈紫乃宮 こころ〉(JWI)

<一本目:6人タッグマッチ>

一本目、カンナが十六夜を仕留め、この時点で絶体絶命……

 ○《カンナ神威》 VS 《十六夜 美響》×
 (2分20秒:エクスプロイダー)

<二本目:4人タッグマッチ>

しかしここでこころが大奮起、氷室から殊勲の星をあげてイーブンに。

 ×《氷室 紫月》 VS 〈紫乃宮 こころ〉○
 (11分53秒:パワーボム)

<三本目:シングルマッチ>

ナイトメアと市ヶ谷の一騎打ちとなる――が、ここで《ライラ神威》ひきいる【苛無威軍団】が乱入、ノーコンテストに。

 ▲《ナイトメア神威》 VS 《ビューティ市ヶ谷》▲
 (14分10秒:苛無威軍団乱入によるノーコンテスト)

しかし龍子たち他チームが苛無威軍を排除、再試合となる。
最後は市ヶ谷渾身の“美神降臨”(災厄降臨)が炸裂、決着となった――

 ×《ナイトメア神威》 VS ○《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
 (4分42秒:美神降臨)

しかしそれもつかのま。
試合後にはJ7がリングを占拠、そこへ再度寿千歌ひきいる苛無威軍団が現れる。
遺恨のある両軍は対立……と思いきや、南と千歌がガッチリと握手。

――マット界にはびこる罪は七つどころではない。幾千にもおよぶ。
――そのすべての罪を裁くため、あえて悪をも呑み込もう。

ここに新軍団【ジャッジメント・サウザンド】(J1K)を結成を宣言、日本マット界の完全制圧を掲げたのである。
これに新女正規軍をはじめ、市ヶ谷や龍子らが反発、“J1Kvs女子プロレス界”の構図がより明解なものとなったのはいうまでもない。

このとき、日向も来島らに従ってはいたが、市ヶ谷や龍子らに混じってはその他大勢にすぎぬ。
インパクトを残せなかった、といっても、仕方のないところであったろう。

とまれかくまれ。
大混乱の末、歳末のビッグイベント<EXトライエンジェル・サバイバー>は幕を閉じた……

▼日本 東京都品川区 新日本女子プロレス寮

遥かに格上の相手との連戦は、日向の肉体に悲鳴を上げさせるに十分だった。
故障こそまぬがれたものの、熱を出してダウンしてしまったのである。
それでも、ほんの数日で回復にむかったのは、流石に若さというしかない。

「すこしゆっくりすればいいんじゃない? 無理して悪化しちゃったら、元も子もないし」
「う……ん」

《辻 香澄》に言われ、おとなしくしておくことにする。
どのみち。
わずかな休息の先には、苛酷な毎日が待っているのだ……いやおうなしに。

果たして。
回復した日向に、ハードな選択が待っていた――


 → 『天使轟臨』 シャイニー日向 リアクション06 Part2

2013年01月05日

きんが

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

年末年始のお休みもとうとう明日で終わりですが、今年は親戚の集まりも無く、友人とも1回飲みにいったっきりで、久しぶりの長期休暇をのんびりと過ごすことができました。
部屋の掃除やら、録り溜めたアニメの消化やら、PC内のファイル・ソフトの整理やらもそれなりにできたので、のんびりしつつもそれなりに充実した時間だったかなと。

思えば、昨年も色々ありました。
特に昨年後半は仕事がめっさ忙しくて、毎日11時過ぎに帰ってくるような状況だったので、あっという間に過ぎ去ったような気がします。

昨年のことを振り返ろうとブログを見なおしたら、何も振り返れなかった…。
それくらい、我ながら昨年の更新のサボりっぷりはヤバいですな。
読書メーターとレッスルPBeMのエントリを除くと仙台行った時新潟のアニソンしばりノアの崩壊についてしか書いてないという為体。
正之さんのコンサートなど参加したライヴやイベントの感想とか、十数年ぶりにコミケに行ったこととか、書きたいこと、書くべきことは色々あったんですが…。

昔、「学ぶ暇あらずと謂う者は暇ありと雖も亦学ぶ能わず」という言葉を知って以来、勉強だろうが趣味だろうが忙しいってことを極力言い訳にしないようにしてる(まあ、今まではそんなに忙しいことも無かったけど)んだけど、使える時間が減ったことで改めて自分の時間の使い方の下手くそさを痛感したなー。

前々から思ってたけど、やっぱりブログの更新、特に感想なんかはその日の内に書かないとダメだわ。
日が経つにつれて記憶も薄くなるし、そのときの気持ちは無くなるわけじゃないけど、心の深い方の部屋に移動しちゃうので、引っ張りだすのも大変になってしまう。
思いついたことを垂れ流しにできるTwitterと違って、ブログにちゃんとした文章で残すのはそれなりに大変ではあるのだけど、やっぱりそういう作業は俺にとって必要だし大事だと思うのさ。

そんなわけで、今年は「思い立ったが吉日」と「一寸の光陰軽んずべからず」を目標というかモットーに過ごしていこうかなと考えてます。
また明後日からは日々の暮らしに追われていくんだろうけど、そんな中でも一日一日を大事に過ごして行きたいです。

このサイト、このブログも今年はもっと更新する、とはお約束はできませんが、変わらずお付き合いいただければ幸い。

2012年12月31日

2012年10~12月の読書メーターまとめ

2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1529ページ
ナイス数:4ナイス

地獄野球☆ワイルドウィッチーズ 美少女だらけのチームでプレイボール!? (KCG文庫)地獄野球☆ワイルドウィッチーズ 美少女だらけのチームでプレイボール!? (KCG文庫)
読了日:12月30日 著者:高崎とおる,孝岡春之介
高校球児 ザワさん 11 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)高校球児 ザワさん 11 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
読了日:12月29日 著者:三島 衛里子
僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J)僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J)
読了日:12月22日 著者:平坂読
恋物語 (講談社BOX)恋物語 (講談社BOX)
読了日:12月16日 著者:西尾 維新
鬼物語 (講談社BOX)鬼物語 (講談社BOX)
読了日:12月16日 著者:西尾 維新
キン肉マン 41 (ジャンプコミックス)キン肉マン 41 (ジャンプコミックス)
読了日:12月5日 著者:ゆでたまご

2012年11月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:807ページ
ナイス数:3ナイス

お母さんを僕にください (2) (バーズコミックス スピカコレクション)お母さんを僕にください (2) (バーズコミックス スピカコレクション)
読了日:11月29日 著者:新井 理恵
おおきく振りかぶって(20) (アフタヌーンKC)おおきく振りかぶって(20) (アフタヌーンKC)
読了日:11月18日 著者:ひぐち アサ
ボール・ミーツ・ガール 2 (ヤングジャンプコミックス)ボール・ミーツ・ガール 2 (ヤングジャンプコミックス)
読了日:11月11日 著者:たまき ちひろ
アオバ自転車店へようこそ! 2 (ヤングキングコミックス)アオバ自転車店へようこそ! 2 (ヤングキングコミックス)
読了日:11月3日 著者:宮尾 岳

2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1590ページ
ナイス数:7ナイス

ベン・トー 9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー~ (集英社スーパーダッシュ文庫)ベン・トー 9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー~ (集英社スーパーダッシュ文庫)
読了日:10月28日 著者:アサウラ
ベン・トー another Ripper's night (愛蔵版コミックス)ベン・トー another Ripper's night (愛蔵版コミックス)
読了日:10月27日 著者:柴乃 櫂人
ロウきゅーぶ! (11) (電撃文庫)ロウきゅーぶ! (11) (電撃文庫)
読了日:10月13日 著者:蒼山サグ
球場ラヴァーズ ー私が野球に行く理由ー 06 (ヤングキングコミックス)球場ラヴァーズ ー私が野球に行く理由ー 06 (ヤングキングコミックス)
読了日:10月11日 著者:石田 敦子
ゴッドバード4 (CR COMICS)ゴッドバード4 (CR COMICS)
読了日:10月9日 著者:長谷川裕一,『勇者ライディーン』(東北新社),『超電磁ロボ コン・バトラーV』(東映),『超電磁マシーン ボルテスV』(東映),『闘将ダイモス』(東映),『未来ロボ ダルタニアス』(東映)
猫物語 (黒) (講談社BOX)猫物語 (黒) (講談社BOX)
読了日:10月8日 著者:西尾 維新
ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 (電撃文庫)ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 (電撃文庫)
読了日:10月8日 著者:竹宮ゆゆこ
ヨタ話 (フラワーコミックス)ヨタ話 (フラワーコミックス)感想
新井理恵、久々の小学館からの新刊は『× -ペケ-』を髣髴させる不条理ショートショート。表面的には似ているが『× -ペケ-』には遠く及ばない。もう新井理恵は『× -ペケ-』のような作品は描かない、いや描けない。だが我々はそのことを喜ぶべきだ。一人の漫画家が心を壊す様をまた見なくて済むのだから。
読了日:10月2日 著者:新井 理恵

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